A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

亜麻仁油を使ったサマルカンド風プロフ「ジギルオシュ」

ウズベキスタンを代表する国民的料理「プロフ」。プロフの起源には諸説ありますが、正しい調理法の最初の記述は、中世の学者イブン・シーナーよるものと考えられ、その著書 (医学書) で数種類のピラフを含む様々な食事について、調理に使われる個々の材料の利点と欠点が記述されているのだそうです。

イスラム世界が生み出した最高の知識人とも評されるイブン・シーナーは (⇒過去記事)、10世紀末、ブハラ近郊で生まれました。なので、今で言えばウズベキスタン人です。そんな地元の偉人が1000年も前にプロフの記述を残していたわけですから、この地域に暮らす人々が昔からプロフに抱く親近感や自尊心は、相当なものだったでしょう。

こうした長い歴史があるため、ウズベキスタンのプロフは具材や調理方法によって40タイプあるとされ (ピラフのWikipediaウズベク語版より)、地方の都市ごとのバリエーションを考慮すると、その種類はなんと200にも及ぶと言われています。

自分もタシケントに到着した翌日、初めて口にしたウズベキスタン料理はプロフでした (⇒コチラ)。それから何度もプロフをいただきましたが、それらはあくまで「タシケント風プロフ」であり、これをもって「プロフは油っこくてちょっとね・・・」などと知った気になってはいけないわけです。

先日、ブハラ風プロフ「オシュソフィ」をいただきましたが (⇒コチラ)、油が少なめでヘルシーという前評判にしては、あまりタシケント風と変わらないなと思ったりもしました。その後、ブハラ風はご飯と具材をスープで炊いて、最後に油をかけて盛り付ける、というようなことを教えてもらいました (真偽不明)。

タシケントでもっといろんな地方のプロフを食べられないかなと、Googleマップで探したところ、サマルカンド風プロフ「ジギルオシュ」のお店がわりと多めに出てきました。しかし、料理の写真を見ても何が違うのかよくわかりません。少し調べてみて、ようやくその特徴がわかりました。

ジギル (Zig'ir) とは亜麻仁油のことで、なんとこのプロフ、油は油でも亜麻仁油を使って調理するのだそうです。なんだか聞いただけでヘルシーな気がしますね。写真をよく見ればご飯の色も少し濃いし、これは何か違うかもと期待しつつ、「パイシャンバ (Payshanba)」というお店に出かけました (ミンウリック駅の近くからタクシーで13,000スム/160円)。

通りの同じ並びにパッと見あと2軒、ジギルオシュのお店がありました。サマルカンド人が多く住むエリアなのでしょうか。こざっぱりした店内は壁にたくさんの飾り皿が。

主食はジギルオシュのみ。量やトッピングをお好みで。サラダメニューもありますが、まずはこの中から好きなものを取ります。今回はトマトサラダをチョイス。

ジギルオシュ到着。トッピングゼロだと寂しいので、ウズラの卵2個追加しました。こうして目の当たりにすると、タシケント風とは見た目がぜんぜん違います。これは俄然、食欲がそそられます。

オシュソフィと同じく、ニンジンはご飯に混ざっていません (タシケント風は混ざっている)。ニンジンは黄色いやつだけ、干しブドウやヒヨコ豆はなし。お肉 (ビーフ) はホロッとくずれるほど柔らかいですが、ほぐされてはいません。ちょっとした違いですが、これもまた新鮮。

色味的には、お米が薄茶色の液体にまみれています。きっとこれが亜麻仁油なんだろうなと思いつつ、それにしては色が濃いのと、油にしてはとてもさっぱりしていたので、実は最後まで「本当に亜麻仁油?」と疑問を持ちつつ食べていました。

亜麻仁油はその昔、健康のために一時期飲んでいたことがありますが、その味・香りの記憶とも異なり、本当にクセのない、そして軽やかな味わいでした。こんなにさっぱりしているなら、それこそ毎日いけるかも。いずれにしても、いつかサマルカンドに行って本場のものを食べなければなと、思いを新たにしたのでした。

ちなみに食後、支払い (59,000スム/725円) は請求書を手に一旦外に出て、「KASSA」の窓口で払いました。何この性善説に基づくシステム・・・。