A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

中国料理と中華料理:麻婆豆腐の場合

本日、初めて「餃子の王将」に行ってきました。嫌いで避けていたわけではありません。意識してもいなかったので、日本滞在中はずっと選択肢に入らなかった感じ。

餃子にしても麻婆豆腐にしても、これまで一応、現地で本場のシェフが作る料理を食べてきました。食べたのは中国本土以外ですけれど (タイとかインドネシアとか)。

なので「どんなもんだろう?」と半分疑う気持ちで餃子と麻婆豆腐を食べ始めましたが、結論から言うと、餃子の王将はとても美味しかったです。

餃子は最近コチラに書いたように、どちらかと言えば中国風の水餃子の方が好きです。日本の餃子は独自の進化を遂げたというか、まったく別の味わいがあります。

うちの方の田舎だとなかなかお店で水餃子は食べられないので、結局自分で作っています。皮を作るのがちょっと面倒ですが、適当に作っても美味しいですよ。

肉多め・野菜 (白菜) 少なめ・ニンニクなし・高密度・大粒・厚皮・水餃子・餃子単体で食べる、です。味付けは自分の好みで。

王将は典型的な日本の餃子で、肉少なめ・野菜多め・ニンニク入り・低密度・小粒・薄皮・焼き餃子・ご飯のおかず、でした。これはこれで美味しかったです。

これっていわゆる「中国料理と中華料理」の違いですね。ラーメンはその最たるものですが、中国料理が日本で日本人の好みに合わせ、中華料理に変化していったわけです。

麻婆豆腐については、バンコクでもジャカルタでも餃子ほどにはレシピが一定しておらず、豆腐の種類や味付け・調理法はお店によってまちまちでした。

タイ中華は中国の「潮州料理」と言っていいと思いますが、四川麻婆豆腐のように辛いものではなく、けれども本格的な麻婆豆腐をいただきました (⇒過去記事)。

王将の麻婆豆腐は、典型的な日本の麻婆豆腐だなと。辛くはなく旨味がたっぷり。味付け良し、香り (花椒) 良し、いかにも日本的真面目さを感じました。

麻婆豆腐は日本の町中華で時々いただきましたが、今までで王将が一番美味しかったかも。今日が初王将でしたが、たぶん近々また行きそうな予感がします。

* * *

その昔、お酒もない豚肉もない、中国人シェフもいないサウジアラビアで、がんばって美味しい麻婆豆腐を探そうとした悪戦苦闘の記録を、過去記事から一部抜粋。

麻婆豆腐狂想曲@ゴールデンドラゴン

エチオピアで中国人コックが同胞のために作る庶民的かつ本格的な "中国料理" を味わったことと、去年から香港に行く機会が多かったので、酒も豚もないリヤドで中華料理などとても食べられないとは思っていましたが、このところ無性に麻婆豆腐が食べたくなり、「ゴールデンドラゴン」に出かけました。

ここの麻婆豆腐は美味しいと人づてに聞いていたので、かなり期待していました。餃子も肉汁たっぷりで本格的。ワンタンスープもさりげなく美味。しかし肝心の主役は、どう見ても麻婆豆腐ではなさそうな料理でした。

「これ、麻婆豆腐?」思わず店員 (たぶんインドかバングラ) にそう聞いてみたのですが、「イエス、ボス!」 と自信満々に言われてしまい、それ以上反論もできず。味は、別物としてもちょっと・・・。というより自分は揚げ豆腐があまり好きではないのかな。

この "麻婆豆腐事件" がどうにも納得できなくて、先日ここで麻婆豆腐を食べたという人にメールで写真を送って確認すると、やはりその人が食べたものとは違う料理とのこと。逆にある意味ホッとして、ならば再び麻婆豆腐を食べに行かねばなるまいと、鼻息も荒いまま再びお店に駆けつけたわけです。

注文を取りに来たのは前回と同じ店員でした。彼もこちらの顔を覚えていて、オーダーを麻婆豆腐と伝えると、次のような会話になりました。

「ああ、この前のと同じですね」
「いや、あれはカントリースタイルの方だろう、マーボースタイルをくれ」

「マーボーはあれですが」
「ノー、あれはカントリースタイル、自分が食べたいのはマーボースタイル」

「ええと、豆腐がこれくらいの形で、フライになっていて・・・」
「フライじゃないやつ、マーボーはフライになってない」

「でもあれが・・・」
「とにかくこの前のとは違う方にして」

「じゃあ、チャイニーズスタイルですね」
「ん?」

「トウフ・チャイニーズスタイルですね」
「いや、マーボーなんだけど・・・、まあいいや、それで」

メニューに豆腐料理はカントリースタイル (Tofu Country Style) とマーボースタイル (Tofu Mapo Style) のふたつしかありません。まさか「第三の麻婆豆腐」が出てくるのでは、と一抹の不安を覚えましたが、結果、ついに念願の麻婆豆腐を食べることができたのでした。

「ボス、これがマーボーです」
「パーフェクト、これだよ、食べたかったのは」

「ボス、今日は勉強になりました」
「OK、OK、ノープロブレム」

「前回はベリーバッド、でも今日はベリーグッドでしょう」
「そうだな、ありがとう」

パーフェクトと言ってあげたものの、2品しかないんだからそれくらい覚えといてよ、と思わないでもなかったのですが、まあ、この若い店員もほめられて伸びそうなタイプだったし、最後はちゃんと食べられたんだから細かいことは気にしない、ということで。

それよりいったい何人の人が違う麻婆豆腐を食べさせられたのかと、他人事ながらちょっと心配になってしまいました。さて、お味の方はというと、花椒も使っているし、これはなかなか美味しかったです。

タイ風麻婆豆腐?@ガルフロイヤル

リヤドの中華料理屋では老舗と言ってもいい「ガルフロイヤル」には、初回赴任時は家から近いということもあって月に1~2回行っていました。料理がどれも甘ったるくて、口の悪い人は「フィリピン中華」などと言っていましたが、かといって決してまずいわけでもなく、いいメニューを選べばほどほどに美味しく、それなりに満足できていました。今回リヤドに再赴任して、13年ぶりのお店訪問です。

今回の目的は麻婆豆腐。ピリッと辛味の効いた麻婆が食べたい自分としては、不安を抱えつつお店に入りました。案の定、最初にいただいた蒸し餃子がかなりイマイチで、当時よりさらにレベルが落ちていたため、麻婆豆腐もどんなものが出てくるのかヒヤヒヤしながら待っていたのですが、テーブルに運ばれてきたそれは、見た目にはちゃんと麻婆豆腐でした。

少し嬉しくなって、「どれどれ」とおもむろに豆腐をひとつパクリと口に放り込むと、豆腐自体は今までのお店とくらべても悪くない。が、しかし、甘い、そして酸っぱい、さらに相当辛い。ついでに言うと深みのない表面的な辛さ。花椒も使っていません。

「コレハナンダ?」と首をかしげつつ食べ進めていると、しばらくして、ふと、これはタイ料理の味だと思いあたりました。酸味と甘味が強烈で、さながらトムヤムクンのような味つけです。そう考えて食べると、これはこれでアリかなとも思いましたが、でも、決して自分が思い描く麻婆豆腐ではありませんでした。前はフィリピン中華でしたが、現在はタイ中華になったということでしょうか・・・。

料理というのは常に人々の嗜好に応えなければならない宿命があって、そうでなければ淘汰されてしまうわけですから、当然、味も変わって然るべきだと思います。特に中華料理は世界中に進出して各地で根付いていますから、味の振れ幅が大きくなるのは仕方ありません。たとえサウジの中華料理に不満を感じたとしても、それは料理がまずいのではなく、ただ自分の嗜好に合わないだけです。実際、ガルフロイヤルはもう20年以上続いているわけで。

なんて理屈をこねて自分を納得させようとしましたが、やっぱりこの麻婆豆腐の味つけはちょっと悲しすぎました。豆腐が良かっただけに、惜しい。

※補足:後年タイに赴任しましたが、トムヤムクンみたいな甘酸っぱ辛い味付けの麻婆豆腐には出会ったことはありませんでした。