A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

エチオピアは20年で変わったのか

2月6日は国連総会で制定された「世界女性器切除根絶の日」です。International Day of Zero Tolerance to Female Genital Mutilation (FGM)。

エチオピアにいた時は地方州にもときどき出かけていましたが、女性の低い初婚年齢やFGMについて、アムハラ州で関係者から聞いた話は今も強く印象に残っています。

もう今から20年も前、当時のことを次のように投稿しました。過去記事の再録と、続けて現在の状況をまとめてみます。

アムハラ州が抱える問題(2006年当時)

エチオピアの公用語 (共通語) がアムハラ語であるように、2世紀ほど前、エチオピアの国土を平定したのはアムハラ族です。

なので、政権をお隣のティグレ州出身の政治家グループに譲った今でも (※注:2006年当時)、アムハラ州は独特の存在感を保ち続けています。

自分はてっきりアムハラ州はエチオピアの中でも一番発展しているのかと思っていたのですが、実際はそうでもなく、むしろ国内に共通する諸問題の多くを抱えていました。

バハルダールの会議に参加した際、現地関係者からいろいろ話を聞き、その後各所のレポートなどを調べ、以下のとおりまとめてみました。

衛生・給水
アムハラ州で自宅にトイレがある家屋はわずか2.3%。トイレ掃除は女性の仕事。女性の用便は日没後暗くなってから外 (庭) でするという考え方が一般的で、日中我慢するため我慢のし過ぎで健康被害を及ぼしている。写真は庭に改良トイレと手洗い用の水瓶を設置した模範ファミリーのもの。

安全で清潔な水へのアクセス率は都市部96%、村落部23%、全体で30% (全体で19%という統計も)。女性は毎日15~18時間働いており、そのうち12時間は水汲みとされる。

1日に摂取するカロリーのうち12~27%を水汲みで消費し、授乳中の女性はさらに35%のカロリーを消費している。

多くの人が寄生虫を宿しており、年間2万人が亡くなる。ほとんどは子供。(※バングラデシュの報告では、トイレがない家は乳児死亡率が3倍になるのだそう)

女子割礼など
女性器切除:77% (バハルダール南部のゴッジャムゾーンは女性器切除をしない地域として有名なので、77%という数字は、これでもエチオピアの中では比較的低い割合なのかもしれません)

早婚:38% (平均初婚年齢12才という報告がある)

入れ墨 (女性):顔と首の入れ墨:33%、歯ぐきの入れ墨:13%

略奪婚:13% (学校の帰り道などでいきなり女性がさらわれ、後日、男性が女性の両親に結婚を宣言しに行く伝統/悪習、これが嫌で数キロの通学路を走って通う女の子も多い)

HIV/AIDS
エチオピアのHIV感染者310万人 (全人口の4.4%) のうち10%は子供。エチオピアの人口は世界人口の1%にすぎないが、HIV感染者は全体の10%を占める。

アムハラ州は全国の中でもっともHIV感染者の割合が高く8.1% (全国平均は4.4%)。中でも北ゴンダールゾーンがもっとも高い比率。バハルダール (アムハラ州の州都) では5人に1人がHIV感染者。

夫を亡くした妻が義兄弟と結婚すると、HIV感染を起こすと考えられている。アムハラ州では死亡率の上位はAIDS。マラリアにかかった女性は40%が新生児にHIVが感染しており、マラリアにかかっていない女性から新生児へのHIV感染率15%にくらべて明らかに高い。

以上、地域の伝統的価値観を頭ごなしに否定する気持ちはありませんが、児童婚と言える低年齢の結婚・出産を求められることや割礼を施されることなど、女性が虐げられていると感じるのは自分だけではないと思います。

女の子は10歳まで小学校に通えば十分 (その後は家庭に入り労働力になる) と容認する社会は、女性から教育の機会を奪っています。教育により新しい世界を学ばない限り、女性自身の考え方も旧態然としたままでしょう。

ここで思い出すのが、旧約聖書に記されたアダムとイブのリンゴの話。敬虔なキリスト教徒が多いエチオピアでは、「女性が知恵を持つべきではない」と解釈している人も多いのかもしれません。

そもそも絶対的な幸せってあるのでしょうか。「あの人より自分はまし」と考えるのは相対的な幸せで、これは幸福感ではなく優越感なのかな。

タナ湖のほとりでひとりブンナ (コーヒー) をちびちびすすりながら、「人の幸せってなんだろなあ」と考えさせられたアムハラ州出張でした。

アムハラ州の現状(2026年2月調べ)

以下、AIの回答ですが、数字をザッと並べてみます。エチオピアのアムハラ州について、国際機関や研究論文をベースにした代表的な指標。この20年でどのくらい改善されたのでしょうか。

飲料水アクセス (改良水源)
65%前後が改良水源を利用。ただし、水源 (共同水栓) までの往復30分以内などの「基本給水サービス」に限定すると30~40%まで低下するという研究もある。総じて農村では低い。

改良型トイレ
2011年の統計では、改良型トイレがない世帯は95%程度あり、改善トイレの普及率は数%レベル。現在の改良型トイレ保有率は10~20%と推定される (エチオピア全体でも基本的衛生施設アクセスは25%前後)。アムハラ州において、何らかのトイレ (質が低いものを含む) を保有する世帯は72.7%との研究もあるが、「トイレがある」と「衛生的トイレ」は別物と考えるべき。

FGM
2000年から徐々に減少し、アムハラ州女性 (15~49歳) のFGM経験は61.7%となった (2016年推定)。しかし、アムハラ州はソマリ州などより割合は低いものの、人口が多いため実数は非常に多い地域のまま。

女性の初婚年齢
ユニセフの調査によれば、アムハラ州女性 (25~49歳) の初婚中央値は17歳前後。社会的認識としては、理想的な結婚年齢は依然15~18歳とされる。

アムハラ州の特徴
国内でも人口が多い農業地域
貧困率が比較的高い
児童婚・FGM対策の重点地域
WASH (給水・衛生) は「水源は改善されつつあるが衛生は遅れている」という典型例

以上です。確実に改善はしているものの、進捗は遅いですね。なお、女性ばかりが辛いのではなく、アムハラ男性もがんばって生計を営んでいます。あれから20年の月日が流れましたが、たぶん今も牛が現役で農耕に利用されているのだろうな。