UNESCOの世界遺産リストを見たら、ヨルダンに新しく「サルト (As-Salt: The Place of Tolerance and Urban Hospitality) が登録されていました。ヨルダンには歴史と情緒を感じさせる魅力的な町がたくさんありますが、サルトもまた強く印象に残った町のひとつです。記念に、サルトの過去記事を再掲載したいと思います (追記あり)。
サルト
アンマンから車で北西に40分ほど走ると、サルトの町に着きます。サルトはヨルダンで最も古い町のひとつに数えられます。オスマントルコ時代後期には商業と文化の中心として栄えました。
町の中に残る黄色い石造りの建物は、多くがその時代 (1880年〜1920年) に建てられたものだそうです。これらはナブルス (ウエストバンク) の職人の手によるもので、アーチ型の装飾を施したバルコニーが目を引きます。
バルコニーをイスラム建築由来のものだとする書物もあります。オスマントルコ時代、女性が外から姿を見られないよう、格子のついた出窓を作ったのがその始まりなのだそうです。アラビア語では 「バルコーン」 と言います。
中東では、モスクや公共施設など人が多く集まる場所で、道ばたに置かれた素焼きのつぼを目にすることがあります。木の幹に縛ってあったり、金物の台座に乗せてあったりしますが、どのつぼも底の方からポタリポタリと水滴が落ちています。
つぼのふたを開けると、中には飲み水が入っています。素焼きのつぼなのでゆっくりと水がしみ出し、そして空気が乾燥しているため気化熱でつぼが冷やされます。おかげで通行人は、炎天下でもひんやりとした水が飲めるというわけです。
異国情緒たっぷりで、またアラブの善意の象徴とも感じられる水がめですが、最近では電気冷水器に取って代わられているようです。衛生面を考えればそれも仕方のないことかもしれませんが、なんだか寂しい気持ちになることも事実です。
歴史のある町サルトでは、まだまだ水がめが現役で嬉しくなりました。
【追記】サルトは階段が多い町。車が来ないので子どもたちも安心して遊んでいます。写真は5月半ばのヨルダン。あらためて、ヨルダンは涼しかったんだなと、子どもたちの服装を見て思いました。この時期は日中25~26度、明け方は15度以下になります。
* * *
ヨルダンの世界遺産6ヶ所については、「ペトラ、アムラ城、サルト」は過去記事「ヨルダンの名所旧跡」に、「洗礼の地、ウムエルラサス」は「ヨルダンの聖書ゆかりの地・教会」に、「ワディラム」は「ヨルダンの自然」に記載がありますので、よかったらご覧ください。