A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

Krabi, 2562(タイ映画)

Krabi, 2562」は2019年のタイのドラマ映画です。前作「暗くなるまでには」がアートシネマとして各所で高い評価を受けたアノーチャ・スウィチャーゴーンポン監督が、イギリスのベン・リバース氏 (こちらも実験的映像作家) と共同で制作した作品。

本作もはっきりしたストーリーラインがあるわけではありません。主な登場人物は、都会から来た女性 (後に失踪)、CM撮影をする男性、そして穴居人。さらに幽霊が見えるという女性や昔ボクサーだった老人の姿などが挟まれます。

女性を案内した観光ガイドが何度か出てくるのですが、それも含め各シークエンスにほとんど関係性はなく、合間合間にクラビの風景が差し込まれます。どちらかというと風景こそ主役という趣もあります。

クラビに行ったことがある自分は、ああクラビってこんな感じだったなと、画面に映る岩山や洞窟、ビーチ、町の様子や幹線道路の風景を懐かしく思い出し、終始画面に見入りました。でもクラビはむき出しの自然という感じで、インスタ映えするような景色とはまた違うんですよね。

やはりメインは失踪した女性のパートなんだと思いますが、最初から最後まで不安というか不穏なニュアンスを感じ続けました。最後はおそらく遺体の一部が発見された模様。何も明確には語られませんが。

作品全体を貫くトーンも、違和感というか何か悪いことが起きそうな、そんなかすかな予感を感じさせる雰囲気。このあたりが監督の狙いだったのかなと思ったり。単に自分がネガティブ思考なだけかもしれませんが。

「暗くなるまでには」が、わからないながらも大いにイマジネーションを刺激されたのに対し (→感想コチラ)、本作は提示されるイメージも限られていて、かなり突き放された印象。ちょっと楽しむまでには至らなかったというのが正直な感想です。

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