ウズベキスタンの人々にとってノン (パン) はとても大事なものであり、神聖視されていると言っても過言ではありません。
古くから人々の生活習慣に根づき、例えばある人が長く家を空ける場合、ノンをひと口かじって出かけ、その人が戻るまでそのノンは大切に保管されるそうです。
タシケント国際空港のチェックインカウンターでは、多くのウズベキスタン人が手さげ袋に5つ6つとノンを入れて持っているのを目にすることでしょう。
自分も一時帰国した際にその光景を目撃し、自分はノンを2つスーツケースにしまっていたので、一瞬「手で持った方がいいのかな」と悩んでしまいました。
ウズベキスタン人はスーツケースの中でノンがつぶれてしまうことに罪悪感を感じるため、わざわざ手で持つのではないかと想像したからです。
※タシケント国際空港の免税店でもノンが買えます
先日ウズベキスタン人とご飯を食べた時、確認のため、空港で悩んだ話をしてみました。結局自分はスーツケースに入れたままでしたが、あれ以来気になっていて。
彼曰く、ノンを大切に扱いたい気持ちもあるかもしれないけれど、それより単にスーツケースに入り切らなかったんじゃないかなとのことでした。
カバン・リュック以外に手で持つ袋は持ち込みOKみたいな風潮もありますからね。ボーディングの時に手持ち荷物が2つ3つになる人も多いです。
ただ、特にサマルカンドのノンは1つ1キロくらいあります。ボーディングの際に超過料金をチャージされるケースも多いのだとか。
※ずっしり重いサマルカンドのノン
笑いながらそう話した彼ですが、続けて真面目な話も。ウズベキスタン人は、食べきれなかったノンは他のゴミとは一緒にせず、袋を分けてゴミに出すそうです。
そもそもゴミ扱いしてはいけないということと、他の誰かが手にとっても良いように、ちゃんときれいな袋に分けるのだとか。ノンに対するリスペクトが感じられますね。
プロフを食べながらそんな話をあれこれ聞いていましたが、ふと気づくと、自分のティーカップの中で茶柱が立っていました。飲んでいたのはクックチョイ (緑茶) です。
※緑茶と言っても色味は黄色 (中国茶葉)
「日本人は茶柱が立つとラッキーなんだよ」と伝えると (本当は気づかれず飲んだ方が良かったのでしょうが)、「へえ」と軽く感心してくれました。
日本は先進国とか技術立国というイメージを持たれているので、こうした「迷信」を日本人が信じていることに、あまりピンと来ていないようでした。
もちろん自分も信じているわけではありませんが、ちょっとしたことで「何かラッキーなことがあるかも」と考えることができたら、それ自体がラッキーですよね。
ちなみに彼によると、昔のプロフは今ほど油っこくなかったそうです。どの地域のプロフも、こんなに油/脂ギトギトになったのは、ここ10年くらいじゃないかとのこと。(※彼自身はもう15年ほど海外暮らしが続いています)
所得レベルが上がり飽食の時代を迎えると、食事もコッテリしたものが好まれるようになるのは世界共通なのかもしれません。そしてしばらくたてばまたヘルシー志向に。
この日食べていたのはサマルカンド風ジギルオシュ (亜麻仁油のプロフ)。黒い油の色から、彼はいつも「モーターオイル (エンジンの廃油)」と言って笑っています。
幼少期をサマルカンドで過ごした彼は、昔のサマルカンドプロフは黒くなかったしもっとさっぱりしていたと言っていました。どういう変遷があったのでしょう。
それから別皿で牛骨髄も頼んでくれました。ウズベキスタン人が一緒だと普段食べないものを食べることができてありがたいです。
しっかり食べて二人ともお腹がふくれたので、彼がホテルに戻る3kmほどの道のりを、腹ごなしで一緒にのんびり歩いて帰ったのでした。