3月2日は数字の語呂合わせから「サニタリーの日」だそうです。なのでトイレにまつわる過去記事を再録しようと探してみたところ、真面目なことも書いてある「世界のトイレの話」がいいかなとも思ったのですが (⇒コチラ)、たまたま昨日、知人とご飯を食べながらインドネシアの話題になったこともあって、やはり自分にとってトイレ話と言ったらインドネシアだなとそう思い、その時代の過去記事をピックアップすることに。
インドネシアに赴任して5ヶ月ほどで、たぶんストレスもあって10月にひどくお腹を壊しました。そんな状態で森林火災の現場に出かけ、煙にやられたり消防ヘリで撮影なんて無茶をしたため2日間乗り物酔い状態が続き (⇒コチラ)、ジャカルタに戻った時には完全に胃と腸の動きがバカになっていました。
病院にも行きましたが (点滴を打ってまた仕事に)、1週間たっても2週間たっても食欲は戻らず、食べたら食べたで吐くかお腹がピーピー状態。そこから2ヶ月間、さらにハードな出張ミッションが重なり、赴任当初から続いていた残業100時間ペースも相まって、シャツの下には蕁麻疹、いつの間にか体重もガクッと落ちました (最終的には-10kg)。インドネシア時代、本当に一生分漏らしたことは間違いないです。
名誉のために言っておくと、他人に気づかれるほど派手に漏らしたことは一度たりともありません (のつもりです)。漏らしたと言っても、パンツに染みがつく程度。けれども日に何度もトイレに駆け込み、いつもちょっとうなだれて席に戻ってくる自分を見て、インドネシア人スタッフはどう思っていたでしょう。
あ、ジョグジャカルタの空港からホテルに向かった早朝のレンタカー、あの運転手は気づいていたかも。飛行機のタラップを降りた時、最後の一段で高さの違いからガクッと膝にショックが加わり、その拍子にいつもより少しだけ多めに出てしまったんです。
ホテルに着いてからトイレにこもって後始末しましたけどね。あれは泣きたかったなあ。「何しているんだろう自分」て。辛い日帰り出張でした。
ということで、過去記事をどうぞ。
それは誰のせいでもなく(タラレバの話)
これはインドネシアの首都ジャカルタで暮らしていた頃の話。ある雨の土曜日、ふと思いたちタクシーでPIK (Pantai Indah Kapuk) へ。目指すは「Kamakura」。日本クオリティーの美味しいパンケーキが食べられると評判のお店です。
タクシーの運転手がひとつ手前で高速を降りてしまい、ちょっと時間はかかったものの、無事到着。しかし店内はちょうど満席に。タイミング悪いなと思いつつ、でもさすが人気店だよなと、内心ほくそ笑んでいました。
周辺を散歩してしばらく時間をつぶそうと思ったのですが、まだポツポツと雨が。少し考え、何軒か先にあった「博多一幸舎」で豚骨ラーメンを食べることにしました。
「これから甘いパンケーキを食べようという人が、豚骨ラーメン?」
確かにそうなのですが、家の近くにある一幸舎はハラール (イスラム的にOK) なチキンラーメンしかなく、本来のウリである豚骨ラーメンを食べられるPIKのお店は貴重。一度食べてみたかったので、ちょうどいい機会だなと。
入店して食べ終わるまで約30分、コッテリ濃厚な豚骨ラーメンを堪能した後、ふたたび Kamakura に行くと、入口横の窓際の席に座ることができました。まだほぼ満席です。いいタイミングで戻ってこれたなとニンマリ。
メニューには美味しそうなケーキがたくさんありましたが、やはりパンケーキとコーヒーのセットを頼みました。5分ほどでコーヒーが来たので、カップを手にしてコーヒーの香りをかぐと、鼻の奥に残っていた豚骨の臭いもどこかに消えていきました。
10分、15分と時間が過ぎていきます。コーヒーに口をつけようか迷いましたが、パンケーキと並べて写真を撮りたいなと思いじっと我慢。20分、25分・・・、あれ?遅くない?
30分たったところで、一番奥のキッチンのあたりにいる店員を呼んで、「まだ?」と聞いてみました。店員はあわてる様子もなく「パンケーキね?」と返してきたので、忘れられていたわけではなさそう。これくらいはかかるものなのかな。
そこからの10分は長かったです。耐え切れずにコーヒーは飲んでしまいました。そうしてようやく運ばれてきたパンケーキの味は、さすがのひと言でした。生地の柔らかさ、きめの細かさ、焼きたての温かさ、中までしっかり焼けているのにこのしっとり感。幸せに匂いがあるとしたら、きっとこの香りに違いない。
でも、もしこの40分という待ち時間がデフォルトだとしたら、ちょっと次はないかなあ。コーヒーなしで食べきるのはちょっと辛かったし。(それは豚骨ラーメンでお腹いっぱいだったせいなのでは・・・)
ということで、なんとなくモヤモヤが残ってしまったので、そこから20分ほど歩いて「RATI RATI」へ。ここも日本人パティシエのお店です。人気のロールケーキとまるごとバナナをテイクアウト。時刻はそろそろ夕方5時。いまタクシーに乗れば、日没前には家に着くでしょう。
タクシーで家に直行しようと思ったのですが、ちょうどコーヒー豆を切らしていたことを思い出しました。よし、スタバでコーヒーを買っていこう。さっきコーヒーなしでパンケーキを食べたことを思い出し、そう決めました。家に帰ってロールケーキとまるごとバナナを、コーヒーと一緒にいただく。なんて素敵なアイデア。
家の手前のショッピングモールでタクシーを降りて、そこのスタバに入ってみると、レジ前に6人ほど並んでいました。なんとなくお腹の中では、豚骨とパンケーキが喧嘩を始めているような気もしていて、ちょっとだけ迷いました。
食べ合わせの悪さを反省しつつ、まあでもすぐかと思いそのまま並んでいると、こんな時に限って時間がかかります。インドネシア人よ、なぜ自分の順番が回ってきてから悩むのか。入店時にはオーダーが決まっている派の自分、だんだんイライラ。
気持ちが焦ってくると、いよいよお腹もグルグルしてきました。10分ほどで自分の番になり、即オーダー、そしてコーヒーをゲット。両手にケーキとコーヒーを持ち、そそくさとお店を後にしました。
ここでお腹にはっきりとした兆候が。どうしよう、ちょっとやばいかも。モールのトイレに寄っていくか、いや、でもそうするとコーヒーとロールケーキをトイレの床に置くことになるかも、それは嫌だ・・・。
モールから家まで歩いて2、3分。帰ろう、帰るしかない。そう決断すると、あらためてピッと背筋を伸ばし、お腹 (というかお尻) に力を込め、気持ち足早に歩を進めました。そうしてすぐにアパート着。まずゲートをカードキーで開けます。よし、第一関門クリア。
ここで、アパートの1階にあるジムのトイレに行くという選択肢もありました。しかし、家 (部屋) はもうすぐそこです。エレベーターでわずか数階上がるだけ。なんとか行けるだろう。
1階のホールを抜けてエレベータールームのドアへ。ここもカードキー。1回目、挿して抜くのが早すぎて失敗、空しく赤ランプが点灯。コンマ何秒か呼吸を整え再度カードキー。よし、第二関門クリア。中に入ってエレベーターボタンをプッシュ。間髪入れずエレベーターが開く。よし、行ける!
さっと乗り込みすっとボタンを押す。流れるような動作、のつもりが、あ!ひとつ下の階のボタンを押してしまった!あわてて正しい階を押すも、当然ひとつ余分なストップが。その階でドアが開いた瞬間、閉まれ!閉まれ!と心で叫びつつ「閉」ボタンを連打。たぶん高橋名人より速かった (←古い)。
自分の階でエレベーターのドアが開くやいなや、両肩をドアにぶつけるほどあわてて飛び降りると、もう半泣きで部屋の玄関ドアへ。しかしカードキーが挿さらない。ガツン、ガツン、と2度ほど目測を誤る半狂乱状態。
つい先日観たホラー映画で、ゾンビに追われる主人公が家に逃げ込みたいのに、なかなか鍵が挿さらないというシーンがありましたが、まさにそれ。「なんだよこのベタな演出www」と思いながら観ていましたが、うん、これってありますね、ホント。
このわずか数秒の間に、いったいどれほどの思いが巡ったことでしょう。人は、一瞬の中に永遠を感じることがあるといいます。一瞬が永遠ならば、永遠もまた一瞬なり。すべては儚い夢。下半身に淡いリリース感を覚えながら、これが白昼夢であってほしいと切に願う自分がいました。
・・・シャワーで身体を洗い流したあと、ベッドに横たわり天井を見つめながら、今日という一日をふり返ってみました。何が悪かったのか、どこがいけなかったのか、誰のせいなのか。いや、きっとそれは誰のせいでもなく・・・。
* * *
インドネシア時代、いろいろなことがありましたが、これもまた忘れがたい一日でした。悲劇の結末を迎えた原因は、いったい何だったのでしょう。
いろいろ考えると、まず最初にタクシーが道を間違えなかったら、きっとパンケーキ屋にもすぐに入れたのになと思いました。
お店に入れなかったとしても、もし雨が降っていなかったら、ラーメン屋に入ることはなかったかもしれません。そもそもなんでほぼ横並びにあったのか。
また、もしパンケーキがあと10分早く出ていたら、コーヒーと一緒に食べて満足した心持ちになり、ロールケーキをテイクアウトすることもなかったのではないでしょうか。
ロールケーキを買わなければ、スタバでコーヒーを買うこともなかったでしょう。スタバも、買うまでに10分以上かかったのは誤算でした。
モールのトイレかアパート1階のトイレ、このどちらかで手を打っておけば良かったです。しかしその時、最終目的地の我が家は目と鼻の先でした。逆にもっと早く大波が来ていれば、また違った展開に。
エレベーターのボタンを押し間違えたのと、部屋のドアをなかなか開けられなかったのが、致命傷でした。数秒を争う中で、いや、そんな切羽詰まった状況だからこそ、冷静さを失ってしまった自分でした。
結論、最初のタクシー運転手が悪い。(でいいのか?)