A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

世界のトイレの話

エチオピアのトイレの話

アムハラ州出張2日目、村落部の衛生改善プログラムの現場視察に連れて行ってもらいました。バハルダールから車で2時間、まずはアチャフェル・ワレダのイスマル・カバレに行きました。カバレはワレダ (郡) の下部行政単位です (州→ゾーン→ワレダ→カバレ→さらに小さい単位の村)。カバレオフィスに立ち寄り、地域でのNGOの取り組みについて説明を受けました。アムハラ州はどの村落も貧しく衛生状態は劣悪ですが、そもそも衛生観念に乏しいため、彼ら (NGO) は家庭内にトイレ、手洗い場、シャワーなどを設置する衛生改善策を励行しています。彼らが提案した衛生改善に関する項目をクリアーしていたら、その度合いに応じて白、緑、赤の四角い布を家の軒先に吊すように指導していました。住民の意識改革にとってこの小さな布切れがどこまで効果があるかはわかりませんが、布があれば「頑張っている人」、なければ「遅れている人」ということが周囲からもわかるので、貧しくともプライドの高いアムハラの人たちにとっては、意外に効果的な方法なのかもしれません。

イスマルのカバレオフィスを後にして、我々はグドゥリ村に向かいました。この村では従来からあった天然の湧き水をNGOがコンクリートで覆って給水パイプラインを布設し、共同水栓、洗濯槽、シャワー、家畜用水飲み場を設置しました。今は雨季なので湧き水の量が多く、水は泥でにごり、またかなりオーバーフローがあって、水栓の蛇口は常に空けっぱなしでした。見るからににごった水ですが、泉をコンクリートで覆う前に比べればにごり方も少なく、味はだいぶ良くなっていると聞きました。

給水施設は完成したばかりで、建設中には村人から1人最低10ブル (130円) の寄付金が集められたそうです。そのため、この時は水の使用料は無料でしたが、新たに組織された水委員会を中心に、来月から料金徴収を始めるべくルール作りを行っているとのことでした。

給水施設を案内してくれたのは、村の水委員会の女性でした。彼女の家は施設のすぐ近くで、施設の管理 (見張り) をすることによって月額70ブル (910円) の収入を得ています。NGOの指導によって自宅の庭にトイレや手洗い場などを作っているため、庭先には誇らしげに赤い布 (最上位) を垂らしていました。

彼女は9人の母。一番上の娘は27才、一番下は4才です。娘さんたちも子供がたくさんいて、とてもにぎやかな家ですが、それ故、トイレを作る前はみんなが庭の所々でしたい放題だったため、いつも悪臭がただよっていたそうです。トイレを作った後は、まず子供たちがトイレ以外のオープンな空き地で用便をしたがらなくなり、またトイレの後は必ず手を洗うようになったと言います。世界のどの地域でも、大人はいつまでたっても古い因習にとらわれ、逆に子供たちの方が順応性が高いようです。それにしても、いくらトイレがなくったって、せめてみんなまとまった所ですれば良いのに、と思わないでもありませんが、人間とは不思議なもので、他人がした所はどうしても避ける傾向があるようです。雨季にひと雨くればみな溶けてなくなってしまうし (それはそれで怖い・・・)、いずれにしろ庭中ウシのフンだらけですから、まぁ、どこにしたって同じなわけですかね。

毎度のことですが、村に行ってこういう話を聞くと、これまで自分がエチオピアで、一体どれだけフンを踏んだことだろうと気が遠くなります。家畜のフンならまだいいけれど、ヒトのフンは・・・。ホテルに戻ってタナ湖を眺めながら、ふと、悲しい気持ちになったのでした。

ヨルダンのトイレの話

ヨルダンのトイレには西洋式ももちろんありますが、ホテルなどを除けばオリエンタルスタイル (和式) の方が多いと思います。

こちらでは水洗いが主ですから、どのトイレもほとんど紙は置いてありません。紙のかわりに水瓶が置いてあるところは大きな違いですが、見たところ、基本的な作りは和式そのものです。

おそらく日本人ならほとんどの人が、和式風に奥を向いて座るのではないでしょうか。かくいう自分もそのようにしてきました。

ところがある日、これは入り口の方を向いて座るものだということを知りました。今まで反対に座っていたと言ったら、ヨルダン人に大笑いされてしまいました。

作りはほとんど同じなのに、なぜ座る向きが反対なのでしょう。シルクロードのどこかに、東西を分ける「奥向き/入り口向き」の分岐点があるのかもしれません。

タイのトイレの話

漏れそう・・・
切羽詰まった様子がちょっとおもしろい、タイのトイレ標識。これがデフォルトだと言えるほどあちこちには見つかりませんが、ネットにはもっとたくさん投稿があったりします。自分が見つけたものをとりあえず4枚。①MRT (地下鉄)、②ワット・カチョンシリ、③セントラルプラザ・ラマ9、④サイアムセンター。

わかりにくい・・・
日本ではそれなりに統一されているトイレマークも、ここタイでは意外とバラバラ。一瞬迷って入り口で足が止まってしまうこともしばしばあります。自分の職場のトイレはマークがやけに小さく、そして赤いものでした。よく見ると男子の形ですが、色が赤いと途端に不安になります。勤務を初めて最初の数日はかなり慎重に、毎回「いいんだよな、男子マークだよな」と確認してから入っていました。

漏れちゃった・・・!?
スパンブリー県の道の駅のような場所のトイレ。このマークが目に飛び込んできたときは、トイレに入る直前に入口で漏らしちゃった人にも見えました。あと微妙に男の子かどうかわかりにくかったです。入る前に周りをキョロキョロしてしまいました。

どっち・・・?
チェンマイのとある役所のトイレ。遠目に見たとき「おや?」と思いました。男性なんだろうなとは思いましたが、どこか女性っぽい仕草にも見えます。これは一瞬ではなく5秒くらい迷いました。見れば見るほど中性的な人に見えてきて、けっこうためらってしまいました (LGBT専用トイレがあるのかなと)。最後は決心して入ったところ、男性用でホッとしましたが。

エジプトのトイレの話

それは8日間のエジプト旅行を無事に終え、サウジアラビアへの帰路のためカイロ国際空港に着いた時のこと。ちょっとお腹がゴロゴロしてきたので、ターミナルの外に併設されているトイレに行きました。

空港の中のトイレの方が確実にきれいだとは思ったのですが、チェックインと出国手続きをしてからだとまだ小1時間我慢しなければなりません。

エジプトの観光地では数々の汚いトイレに悩まされましたが、いくらなんでも国際空港、そうそう汚いわけはないと考えつつ、小走りにトイレに駆け込んだのですが、いきなり異臭が鼻をつきました。

嫌な予感に襲われましたが、ここまで来たからにはとりあえず確認だけはしようと思い、3つのうち空いていた1番奥の個室をのぞき込みました。

「うっ…」 一瞬にして体が固まり、内部の惨状に目が釘付けになりました。洋式便器の中には、数人分のものと思われるウ◯チがこんもりと山盛りになっていたのです。

ナイル川があるとはいえ、カイロは慢性的な水不足です。トイレの水が流れなくても、それはある意味仕方のないこと。しかしこのウ◯チの山は相当な心理的圧迫を与えます。

おそらくこの山に恐れをなした人が腰を浮かせてトライしたのでしょう。うまく真下に落下させることができず、便座のふちに立派なのが1本ひっかかっていました。

思わずクッと顎を引いて便座から視線をそらしましたが、果たしてその目線の先には、個体とは言い難いウ◯チが床に広がっていました。

この人もお腹を壊してやむを得ずここに駆け込んだのです。しかし便器は座れる状態ではありませんでした。誰もこの人を責めることはできません。

それにしても世の中にはそそっかしい人がいるようで、たぶん何も考えずに、目すらつぶってここに入ったのでしょう。床の液状ウ◯チを踏んでズルッとすべったクツ跡がありました。

その人は不用意な一歩を繰り出したことに大いに涙したことでしょう。肩を落とし、無念の表情を浮かべながらクツを洗う、寂しい男の姿が目に浮かびました。

惨状を目の当たりにし、心はすでに茫然自失、天を仰ぐしかありませんでした。しかし天を仰いだその瞬間、目に飛び込んできたのは、個室の内壁に残された何本もの茶色い筋でした。

エジプトのトイレに紙はありません。よもや水など。用を足した後ようやくそのことに気づき、男達は迷い、乱れ、絶望し、神を呪い、そして手でぬぐい取ることを決心したのです。

指についたものを壁になすりつける時、男達の胸中に去来したものは一体なんだったのでしょう。こんな思いをするために、エジプト旅行に来たわけではない。。

ああ無情。。(ちなみにこちらは引っ込んじゃいました)