A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

不寛容の話

Aの外国人パートナーB (関係期間1年) は、いつも時間をかけ深鍋で煮込み料理を作っている。

ある日、Bが冗談めかしてこんなことを言った。
「ヘラが短いので混ぜるとき汁がついて指先が熱い」

それを聞いて、Aは答えた。
「だったらヘラの長さに合う浅い鍋で作れば?」

しばらくして、いつもどおりの煮込み料理が食卓に。Bの指先は赤くなっていて、軽い火傷のようにも見えた。Aがたずね、Bは答えた。

A「火傷した?鍋を変えずにやったのか」
B「このくらい大丈夫」

Aは釈然としなかった。そういうことではない。我慢しろとは言っていないし、まずは鍋を変えればよかったはず。何より火傷が心配だ。つい、口論になった。

A「熱くないよう工夫できたのでは?なぜしなかったのか」
B「我慢できるから問題ない、何を怒っているのか」

A「怒っているのではなく、心配をしている」
B「心配はありがたいが自分は大丈夫、何も問題ない」

A「長いヘラが必要なら、なぜ早く言わなかった?」
B「我慢できるならそれは必要なものではない」

A「我慢を強いた覚えはない、言ってほしかった」
B「聞いてくれれば言ったかもしれない」

A「言われなければわからない」
B「我慢できるから言う必要もなかった」

A「我慢とは不満だ、それは言うべきだ」
B「何も不満はない、何が問題かわからない」

A「もっと頭を使って料理するべきだ」
B「美味しい料理を作っている、それが全て」

A「火傷してまで作ってくれとは言っていない」
B「喜んでもらえるなら些細なこと」

A「今から長いヘラを買ってくる」
B「ありがとう、でも大丈夫」

A「ヘラがいるのか、いらないのか」
B「もったいないから、いらない」

A「では今後も我慢するのか」
B「我慢というほどでもない」

A「我慢は我慢だ、理解できない」
B「何をそんなに怒っているのか理解できない」

そんなこんなで会話は堂々巡りとなり、Aは関係解消を申し出た。我慢とは不満である。不満を抱える相手とは、今後うまくいくはずがないと考えざるを得なかった。

BはAの気持ちが理解できない。自分は問題ないとはっきり言っているのに、なぜ怒っているのか。無駄な出費をさせる方がよほど申し訳ない。

Aの言い分
不満や疑問を持つのは良いこと。それらは生活改善の種であり、些細なことでもパートナーに共有すべきである。今が幸せでも現状の改善は探求すべき。Bにはそうした前向きなビジョンと創意工夫がなかった。

Bの言い分
我慢は美徳であり、不満は自分から言うべきではない (それは周囲が察するもの)。今回も自分のふとした一言から険悪な雰囲気になってしまった。今が幸せなら現状を維持すべき (波風を立てない)。Aにはそれが伝わらなかった。

* * *

文化の違い、個人的な信条、相手への気遣い、お金に対する価値観、現状認識、理想の将来像、、、人はこんなにも相容れないものなのかなと。

以上、これまで知人複数名から聞いてきたことをもとに話を構成してみました。けっこうリアル。。