A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

フェルガナ渓谷の古代宇宙飛行士

ウズベキスタン赴任が決まったことをある大先輩に連絡したところ、「UFO壁画の現地レポートよろしく」と、不思議世界大好きな先輩の趣味全開のオーダーが返ってきたのでした。

最近、ふと思い出し簡単に調べてみたところ、どうやらそれはフェルガナ渓谷 (フェルガナ盆地) のロックアート (洞窟壁画) のひとつらしいことがわかりました。

どんな画かもすぐに出てきて、こうなるとこちらもどんどん興味が湧いてきます。さらに調べていくと、結論から言えば "フェイク" なのかなということなのですが、その辺りをちょっとまとめてみます。

下の画が件の「古代宇宙飛行士 (Ancient Astronaut in Fergana)」。2020年2月にフランスのUFO研究雑誌「Lumières dans la Nuit」が "発見" した事実として、画の出所は、1967年に刊行されたロシアの雑誌「スプートニク」でした。

フランスの雑誌の検証としては、これはウズベキスタンのフェルガナ渓谷にある古代ロックアートに触発され、創作されたものです。ロックアート群は紀元前2000年から7000年、ものによっては1万年前のものもあるそうですが、この宇宙飛行士にも見える画は、1万2000年前のものであると説明されたそうです。

後年、スプートニク誌の画が切り抜かれ、エーリッヒ・フォン・デニケン (※注1) の著書「神々の戦車」に掲載されたことで、もはや架空のイラストではなく、フェルガナの本当のロックアートとして広まってしまったのでした。

スプートニク誌は1960 年代に複数の言語で発行され、西側の一般市民や空想に傾倒しがちな作家たちが読むことができる、数少ないロシアの出版物でした。よく見れば画の右下に、画を描いたアーティストの名前もあるんですけどね。

ということで、あわてて現地に行って探さなくてよかったなと。でも、心のどこかで「本物であれ」と願う気持ちもあったりなかったり。1万2000年前といえばドロパストーン (※注2) もありますしね。

などと考えていたら、どうやらスプートニク誌の元ネタが、ドロパストーンではないかという記述をネットで見かけました。そうだ、不思議世界って意外と狭いコミュニティの中で使い回しとかしているんだっけ。。。

* * *

※注1: Erich von Däniken
スイス、アールガウ州、ツォフィンゲン出身のSF作家。 代表作に「未来の記憶」がある。"古代のコンタクト (paleo-contact)" と古代宇宙飛行士説を広めた主要人物のひとり。 しかし彼の複数の本で提出されたこれらの考えは、科学者および大学人の多数派によって拒絶された。彼らは彼の作品を偽史、偽考古学および偽科学のカテゴリーに入れた。その一方で、彼が提唱する「古代宇宙人来訪説」に現在も支持者が世界中に存在することも事実である。

※注2: Dropa Stones
1937年、チベットの辺境の地で考古学者 Chu Pu Tei により発見された、謎の円盤型ストーンアート。古代文明の痕跡とともに見つかった700枚余りの石の円盤は、いずれも直径30cmほど、表面は穴を中心にした渦巻状の紋様が彫られており、古代エジプトのヒエログリフのような文字や絵、さらには頭部の大きい人型の存在も描かれている。