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ミラベルと魔法だらけの家(映画鑑賞)

ディズニーアニメ最新作「ミラベルと魔法だらけの家」がタイでも公開されたので観てきました。とにかく画面がカラフルで、アニメーション、とくに主人公ミラベルの服の質感などは最高水準のクオリティだと思いました。ミュージカルファンタジーということでいい楽曲も随所に挟み込まれ、流れるような展開はさすがディズニーだなと。一方で、自分はセリフと歌のすべてを事細かに聞き取れてはいないこともあって、いつものディズニーらしい "わかりやすさ" はなかったのかなとも思いました。

そもそもなぜアルマおばあちゃんの旦那さん (ミラベルのおじいさん) は死ななくてはいけなかったのか、その時なぜ奇跡が起きたのか (誰が起こしたのか)、なぜ子供たちは魔法がもらえたのか、なぜミラベルだけ魔法がもらえなかったのか、なぜ魔法が消えたのか、立ち向かうべきもの (敵) は何なのか。

これまでのディズニーアニメなら、土壇場になってミラベルが誰よりも強力な魔法を使えるようになるという胸アツ展開だったのでしょうが、本作は最後までそうはならず。また、魔法を使えないミラベルだからこそ家族の危機を救うことができるというストーリーの骨子についても、いまひとつ理屈がわかりませんでした。各人の魔法の特性も問題解決にほとんど役立っていなかったし、家族が一致団結するのかと思っていたらそうではなかったし。

ついに壊れてしまった家 (カシータ) を村人が建て直してくれるというラストの展開に、ああそういうことか、やっぱり魔法よりも人の力だなと、納得しかけたその直後に、魔法の家が復活するという大オチにも「う~ん・・・」。一度この家族は魔法なしでやっていこうと腹をくくったようにも見えたので。だったらせめて最後の奇跡だけは、明確に誰か (みんなの祈りとか) の力だとわからせた方がよかったんじゃないのかなと思ったり。

あとは何より、魔法が使える家族も使えないミラベルも、誰一人として幸せそうではなかった (魔法があっても内面では葛藤していた、魔法といっても大して使えるものではなかった) というのもなんだかなあ。少なくとも魔法は自分自身を幸せにするものではないという、実はけっこう大人向けのテーマなのかも。

もともと自分は、ストーリーの起点としてとりあえず誰かを死なせておこうという物語が苦手です。○○殺人事件とか名探偵○○とか、まったく観る気・読む気がしません。大して意味もなく、制作者の都合で気軽に死を描くことには、昔から抵抗感があります。本作もおじいさんの死がせめて何かの伏線だったらと最後まで願っていましたが、明確な描写はなかったように思います。

ということで本作、主人公が唯一 "普通の人" という、ディズニーとしてはある意味野心的な作品。特別な人が特別なことをするでもなく、普通の人が努力で何かを成し遂げるでもなく、普通の人がただひたすらがんばる物語。それをエンタメに昇華するのはむしろ難しいでしょうから、何か "次のステージ" を目指した作品なのかもしれません。

才能 (魔法) がある人はそれを失うことを恐れる弱さを見せ、逆に才能 (魔法) がない人が活躍する (役に立ったとは言っていない)。最後は家も魔法も元通りになりましたが、きっとお互いの気持ちは少しずつ変化したんだろうなと、なんとなく察することができる、ややビターなハッピーエンドでした。いずれDVDで日本語吹き替え版を観よう。

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※ディズニー作品レビュー過去記事
 ・モアナと伝説の海
 ・ラーヤと龍の王国