昨日 (土曜日)、清水エスパルスドリームプラザに行ったところ、普段と違ってにぎやかな雰囲気かつ外国の方が多く、なんだろうなと外に出て港側に目を向けると、そこには大型クルーズ船が停泊していました。
3代目クイーン・エリザベス号 (就航2010年10月)。総トン数90,900トン、全長294m、全幅32.25m、巡航速力21.7ノット、乗客定員2,081人。間近で見ると見上げる大きさ。
いいですね、船旅。若かりし頃、ちょっと奮発してエーゲ海クルーズに行ったことを思い出しました。ということで、その時の過去記事を再録。
嗚呼、憧れのエーゲ海クルーズ
カイロで暮している時、エーゲ海クルーズをしました。大型客船に乗って、アテネ近郊のピレウス発→ミコノス島→パトモス島→クシャダシ(トルコ)→ロードス島→クレタ島→サントリーニ島→ピレウス着、というルートを4泊5日でまわるものです。「船旅」、しかも「エーゲ海クルーズ」という言葉にはものすごく憧れを持っていて、カイロに住んでいた当時、たまたま近所の旅行代理店で「こんなのがあるよ」とクルーズのパンフレットをもらったものですから、これはもう行くしかないと思ったわけです。アテネまでの飛行機代はとても安かったし。
輝く陽光を浴びた、エーゲ海の美しい島々の写真がふんだんに使われたパンフレットは、見ているだけでワクワクしてきました。船のデッキでひたすらのんびりと過ごす自分を想像すると、思わず口元がほころびます。自分にとって船旅とは、セカセカと慌ただしく観光地をまわる旅行と違って、いかにも大人のチョイスという感覚でした。もうそろそろこういう旅をしても良いだろうと、そういうデンと構えた感じの気持ちですね (←天狗)。
そうして、料金プランの検討に入ったのですが、これがなんとも難しい。基本的に値段が高いのもさることながら、下のクラスから上のクラスまで、小刻みにちょっとずつ値段が上がっていきます。こういうのが一番選びにくい。料金プランを見ただけでは、どのクラスに予約したら良いのか誰もが迷うと思います。窓のない内側は避けたい、窓がある海側でも一番下の階はイヤ、一番上のクラスは高すぎ、などと考えると、おのずと2階の海側か、3階の海側になります。
ただ、3階の2種類の海側の部屋を見比べると、安い方は船体後ろ側でエンジンに近いため、おそらくそれなりの騒音がある、ということで60ドルの差がついていると考えられます。このふたつを比べたら、値段はわずかな差ですから、絶対に前側の部屋の方が良いのですが、2階の部屋と比べると、260ドルの差になり、1室の値段で考えると1.5倍ないしは2倍になるわけですから、けっこう大きな差です。こんなに違うなら下の部屋でも良いかな、などと考え始めると、もう全然アイデアがまとまりませんでした。
そのうち知人が、「船の旅は階によって扱いに大きな差があるよ。極端に言えば緊急時に脱出する順番も、上の階が先だからね」などとアドバイスをくれたので、ますますわからなくなってしまいました。「2階の海側より3階の内側の方が値段が安いのに、助かる確立は高いのか」などと考えを巡らせるようになり、やや被害妄想的になったところで、エイヤと割り切って、結局2階の海側の部屋を取ることにしました。タイタニックのようなことには、まぁ、ならないだろうと自分に言い聞かせつつ。
それにしても、いざクルーズが始まって痛感したのは、船というのは、お金をたくさん出した人に露骨にサービスが良いということ。レストランは2回の入れ替え制ですが、自分のクラスは後回しの方でした。最上階のゴージャスなラウンジはファースト&セカンドクラス専用だったし、あるフロアには目に見えない境界線があって、部屋のタグを見せて「そちらに入れる住人」かどうか確認されました。
それまでの旅行では、ジャパンマネーを存分に謳歌して (というほど贅沢旅行はしたことありませんけど)、旅先で卑屈になることなどなかったわけですが、この時ばかりは貧富の差、身分の差というものをヒシヒシと感じ、ファーストクラスラウンジに出入りする、タキシードやドレスに身を包んだ紳士淑女の皆さんを恨めしげに見つめるしかありませんでした。
もっとも、昼間デッキに出てしまえば、そんなことはあっという間に忘れてしまいました。洋上に群れるカモメ、ひたすら紺碧の海、水平線の彼方には何があるのか。気分はもう海のトリトンです (←古すぎる・・・)。島巡りも良かったです。ロバにまたがって山頂に登ったり、紫に色づくサントリーニ島の夕焼けにため息をついたり。時間がゆったりと流れるのを肌で感じました。船旅を選んで、やっぱり良かったです。