A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

閉所恐怖症@サウジアラビア

昔からそうではないかと薄々感じてはいたのですが、どうやら自分は閉所恐怖症なのかもしれません。ここ数年はますますそれが顕著に感じられるようになりました。ここ数日は "不明潜水艇" のニュースの見出しを見ただけでどこか息苦しくなる始末・・・。ということで、昔書いた過去記事を、ふと思い出して再掲載 (ブログ引っ越しの際に削除していたもの)。

閉所恐怖症@サウジアラビア

あれは小5の冬、理科室を掃除中に、みんなで大きな実験机の下の開き戸の中に順番に入って遊んでいた時のことです (←なぜこれが面白かったのか謎ですが、すごく盛り上がっていました)。そこは小さな空間で、体育座りをするとちょうど子供の体が入るくらいのスペースでした。

何回目かの自分の番になって、キャッキャと笑いながらまた中に入っていきました。扉が閉められると、中は真っ暗闇。「うー、狭いー、声が響くー」などと笑っていたのですが (←くどいようですが何が面白かったのか・・・)、30秒ほどして出ようとしたところ、扉がびくともしません。そう、友達が外で扉をぐっと抑えていたのです。

急に怖くなって、半ばパニックに陥りました。そうしてただひたすら、「開けてー!」と大声をあげました。体育座りでぎりぎり中に収まっているため、自由に体を動かすこともできません。それでも身体を扉に押しつけ、なんとか外に出ようと必死だったことを覚えています。

たぶん、扉は10秒もたたずに開けられたのですが、外に転がるように出て来たと思ったら、ぜいぜいと荒い息をして半泣きになっている自分の姿は、友達にはずいぶんと奇異に映ったかもしれません。

もともと狭いところがダメだったのか、それともこの出来事がきっかけでそうなったのかはわかりませんが、それ以来、「もしかしたら自分は閉所恐怖症ではないか」と意識するようになりました。

例えば、体育の時間、マットをまるめて倉庫にしまう時、クラスのお調子者が「巻いて~」などと言ってマットの端に横になり、それをみんながぐるぐると簀巻きにしていくのを見ると、体の底から身震いが起きました。

手足が完全に動かなくなってしまう感覚が伝わってきて (プラス、そんな状態で足をくすぐられたらという被害妄想)、とても正視に耐えられるものではありませんでした。

大人になってからは、エジプトの大地震である親子が崩壊した家の狭い空間に閉じこめられたまま1週間生き延びたというニュース、中国で家と塀のわずかな隙間に落ちてしまった子供のニュースなどの映像を見るにつけ、自分に置き換えて考え、心拍数を激しく上昇させていました。

幸い、そういったクリティカルな場面に出くわしたことはほぼなかったのですが、サウジアラビア滞在中に、一度だけそんな状況に陥る出来事がありました。

サウジアラビアの首都リヤドから、200km南下してJabal Baloom (バルーム山) を訪れた時のことです。午前中に周辺のトレッキングを楽しんだのですが、昼食後に「さて、もう1ヶ所面白いところがある」とリーダー格のドイツ人が言い出しました。

12人でぞろぞろと歩いていくと、そこは岩山にできた細い裂け目でした。裂け目はわずか30~40cm程度。左右は高さ10m近い岩の塊で、異様な威圧感を醸し出しています。

みんなでそこに入っていこうというのですが、人が横向きになってやっと通れるくらいの幅しかないので、2~3人ずつ、そろそろと入っていかなければなりません。

一瞬どうしようか迷ったのですが、もう二度と来られない場所かもしれませんし、みんな笑顔で中に入っていったので、ここでやめるとは言い出しにくい雰囲気です。意を決してリュックを下ろし、カメラだけ片手に持って、最後に入って行くことにしました。

裂け目の内部はくねくねと蛇行していて、2m先の状況もわかりません。自分の前に入っていった人たちも見えませんし、顔を左右にきょろきょろするのにも、少し慎重にやらないと顔か頭を岩の壁にぶつけてしまいそうでした。

横向きでカニのように進んでいくのですが、4~5m入って行ったところで、心臓のドキドキがピークを迎えてしまい、あえなく断念することになりました。「外に出まーす!」と声をあげ、1人だけ引き返すことに。

外に出て、はぁ~っと大きな深呼吸を1回。なんだかもう、とにかく全然ダメでした。動悸息切れ目眩がいっぺんに来たようで、自分を落ち着かせようと心の中ではあれこれ別のことを考えて気を紛らわせようとしたのですが、何もなす術なしでした。

結論、やっぱり狭いところはダメでした。閉所恐怖症とは認めたくありませんが、10分以上裂け目から出てこなかった人たちに比べたら、間違いなく強くはないなと。

写真は裂け目の入り口と、中に入ってから上に向かって撮ったものです。「奈落の底」などという絶望的な言葉が浮かんだことは言うまでもありません。