A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

2012年トンガ国葬(再録)

「国葬」といえば、2012年3月に行われたトンガの国葬を思い出します。まさに国民総出の、記憶に残るセレモニーでした。その準備から当日までのレポートを、過去記事から抜粋して再録します。

トンガ国葬準備

2012年3月18日に香港で亡くなったジョージ・ツポウ五世の国葬が、来週火曜日 (3/27) に決まりました。トンガ政府は、「当日は休日になるがその前後は普通に動く」 と言っていますが、首都では今日、学生が動員され町中で清掃活動、幹線道路脇では黒と紫の布の設置に余念がなく、各村々では供物のタパクロスを作りはじめ、離島のタウンオフィサー (地区の代表者) は首都に集結、最北端のニウアス島から住民を運ぶためフェリーが特別運航、といったように国民総出の様相で準備が進められています。こういうことが最優先で行われるトンガですから、来週は葬儀が終わった後も、しばらくは余韻が冷めないんじゃないかなと思っています。

それはともかく、こちらもあわてて黒いシャツ (喪服) を買いました。黒いズボンはいいものがなくて (裾上げもできないし)、この際だからとトンガ人男性の正装であるツペヌ (巻きスカート) とタオバラ (いわばネクタイに相当する正装であるトンガ風エプロン) も購入。とりあえず来週は黒装束で行こうと思います。

ただし、パンダナスで編んだような本物のタオバラはあまり売っていないしあってもけっこうなお値段 (1万円~) ということで、とりあえず中国製 (500円) を買いました。でもやっぱり見た目がチープなんですよね。次の土曜日にマーケットを真剣に探してみよう。

タオバラ購入
国葬にそなえ、つい安物 (偽物) のタオバラを買ってしまいましたが、トンガ人に聞いてみると、位が高い人のお葬式の場合いろいろ制約があるそうです。まず、新品だったりきれいすぎるものはダメ。そしてこげ茶はもともと貴族がつける色なのでダメ。

ということで、あえて小汚い、本物の (植物を編んだ) タオバラを買いに再びマーケットへ。これは600パアンガ (29,000円)、あれは800パアンガ (39,000円) などと言われ心が折れそうになりましたが、最後に小ぶりで見た目イマイチ、お値段リーズナブル (70パアンガ=3,400円) なものを発見し、ようやく購入に至りました。

f:id:ishigaki10:20210515184710j:plain

トンガの場合、ヨレヨレで汚くてもそれはそれでOK、お葬式ではむしろベターなのがうれしいところ (正確には古くてくすんでいるものが良いそう)。タオバラを止める腰ひも、カファ (Kafa) も本物はヤシの実の繊維を編んだものですが、これは昨日買った中国製の編み紐のほうが使い勝手が良さそうかな。とりあえず二、三日つけてみて、身体になじませよう。

アベアベ

ようやくタオバラを買って、これでどこにだって行ける!と思ったのもつかの間、今回は王様のお葬式なので、さらにアベアベ (Aveave) もつけなければいけないとのこと。
まるで干したカンピョウのようなピラピラでヘロヘロのアベアベを、古くて薄汚れたタオバラの上につけてようやくパーフェクト。

確かにこのいでたちは、そこはかとなく物悲しさを感じます。火曜日は町中がこの格好なんでしょうね。というかもう首都ヌクアロファはこの格好の人だらけですが。

f:id:ishigaki10:20210515193645j:plain

トンガ国葬1

正確にはまだ国葬ではないのですが、今日は国王のご遺体がトンガにもどってきました。空港からの沿道、そしてパレスとその近辺にはトンガ国民が参集。女性も男性も黒装束にタオバラとアベアベを身につけて、悲しみを現しています。

パレスには学童が集められ、ご遺体を乗せた車列を迎え入れましたが、長い待ち時間の間、大人も子供も (先生も生徒も) なんだか和気あいあいでした。こういう、あまり悲しすぎないお葬式がいいですね。

f:id:ishigaki10:20210515185553j:plain

f:id:ishigaki10:20210515185619j:plain

f:id:ishigaki10:20210515185639j:plain

トンガ国葬2

トンガ国王のご遺体がパレスに安置されると、教会グループが夜通しパレスで賛美歌を歌います。午後6時、フリーウェズリアンチャーチから始まり、1時間ずつカトリックチャーチ、フリーチャーチオブトンガ、などと明け方まで賛美歌は続きます。

自分はカトリックのグループに入り、トンガ語の歌もなんとか歌ってきました (歌詞カードが配られます)。みんな大仕事を終えたら、パレスの横の広場に設置されたテントでご飯をいただきます。動員したら食事 (お弁当パック) の提供はマスト。とにかくすごい量。テーブルについた人たちはもう待ちきれないといった表情です。後がつかえているので、ほとんどの人はパックを受け取ったらすぐ立ち去っていました。

パレスの外周では一晩中絶やさずかがり火が焚かれます。これは学生の仕事。なかなか大変です。掃除、出迎え、かがり火と、今回は学生が大活躍。

f:id:ishigaki10:20210515185841j:plain

f:id:ishigaki10:20210515185857j:plain

f:id:ishigaki10:20210515190009j:plain

トンガ国葬3

2012年3月27日、トンガ前国王ジョージ・ツポウ五世の国葬が行われました。トンガの伝統が感じられる、とてもトンガらしいおおらかなお葬式でした。

f:id:ishigaki10:20210515190258j:plain

f:id:ishigaki10:20210515190313j:plain

f:id:ishigaki10:20210515190331j:plain

f:id:ishigaki10:20210515190349j:plain

f:id:ishigaki10:20210515190407j:plain

トンガ国葬4

国葬が終わり最初に迎えた週末 (土曜日)、パレスの広場で、トンガの各村々から王様への貢ぎ物を披露するセレモニーが行われました。あふれんばかりの食べ物とカバ (Kava)。

うわさには聞いていましたが、プアカ (豚) の丸焼きが100個くらい並んでいました。しかも子豚ではなく堂々とした体躯の成豚ばかり。いやはや、壮観。

f:id:ishigaki10:20210515190737j:plain

f:id:ishigaki10:20210515190753j:plain

f:id:ishigaki10:20210515190823j:plain

f:id:ishigaki10:20210515190841j:plain
* * *
以上、過去記事「トンガの伝統文化」から抜粋して再録しました。トンガの結婚式やイースターなどについても書いていますのでよかったらぜひご覧ください。