A Dog's World 

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2gether THE MOVIE(タイ映画)

日本の劇場公開に遅れること約5ヶ月、「2gether THE MOVIE」がようやくタイでも公開されました。もともとテレビドラマの存在は知っていましたが、個人的にはなかなか手を出しにくいジャンル。これまで観る機会なく過ごしてきましたが、劇場版のレビュー (日本人の感想) を読むと、ドハマリしてドラマ版もコンプリートしましたという人がけっこういたので、そこまで人を夢中にさせる魅力があるのならばと、襟を正して鑑賞してきました。

本作は、2020年にタイで放送されたテレビシリーズ「2gether (トゥゲザー)」とその続編である「Still 2gether」を再編集し、新たなストーリーを加え劇場版として公開されたタイのロマンチックコメディ映画です。ジャンルは BL (ボーイズラブ)。

『可愛い女の子とのバラ色の学園生活を夢見ていたタインは、ある日、同級生の男子グリーンから告白される。グリーンの猛アプローチに困り果てたタインは、友人たちの勧めで "ニセの彼氏" を作るという作戦を立てる。狙いを定めた相手は、学園一のイケメンで人気者だが無愛想なサラワット。突然の、そしてしつこいタインのお願いにそっけない態度をとり続けるサラワットだったが、それには秘められた理由があった』(Wikipediaより)

タイといえば世界でも指折りのLGBT先進国。映画でもLGBT (おもにゲイ) をテーマにシリアスなものからコメディまで様々な作品が生み出され、傑作と言えるものもたくさんあります。過去記事「タイのLGBT事情」でおすすめLGBT映画を紹介していますが、自分が観てきたものはLGBTの葛藤を描いたドラマやあるいは文芸作品で、どれもシリアスなものばかり。本作のようにストレートなラブコメBL作品は初めてでした。

観た感想を率直に言えば、面白い作品でした。なんといっても主役の二人、タイン (Metawin Opas-iamkajorn:ウィン) とサラワット (Vachirawit Chivaaree:ブライト) がいいですね。二人の容姿と表情が、本当に役柄にフィットしています。映画の前半はテレビシリーズの総集編だそうで、サクサクっと軽快にストーリーが進んでいきます。笑える場面も多く、普通の学園コメディドラマとして楽しく観ることができました。

後半はちょっと一山あるものの、無駄にハラハラさせるわけではなく、すぐポジティブなシーンに切り替わるので、初見の自分でも幸せな気分になったし、ファンにとってはただただ幸せそうな二人の姿を目に焼き付けることができて、最高の作品だったのではないでしょうか。ラストは次々ゲイカップルが誕生する怒涛の展開に若干苦笑しつつも、概ね満足して観終わりました。

個人的見解ですが、タインもサラワットも、お互いを性別に関係なく人間として好きになったのではないかなと思いました。そうであってほしいという願望かもしれませんが。青春の1ページとして見れば、とても美しくピュアなラブストーリーでしたが、最後に「20年後、30年後はどうなるだろう」といったナレーションがあって、この点はちょっと複雑な気持ちに。タインのお父さんくらい戸惑ってしまいました。お父さん、何も言わずにサラワットを受入れていましたが。

ということで、青春ドラマとして考えればとても面白い作品でした。でも、LGBTを一種のファンタジーと捉えるのは、きっとわかっていないってことなんだろうな。。「きのう何食べた?」はまだ観られないなあ。。

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余談ですが、タイの映画館といえば本編が始まる前に国王を称える歌がスクリーンに映し出されます。その際、観客は敬意を表すという意味で起立しなくてはなりません。この時イスに座ったままだと、不敬罪とみなされます。

2018年、2019年はもちろん自分も周りと同じく毎回起立していました。ところが、去年、反政府デモが活発化した時期を堺に、起立しない観客が目立つようになりました。今年10月に映画館が再開されて以降は、自分は16本作品を見ましたが、ほぼすべてで誰も起立していませんでした。

もともと映画館は若者が集まる場所ですから、大学生を中心に実行されてきた反政府・反王室デモにはシンパシーを感じる人が多いのでしょうか。自分としては、海外における安全対策の基本は「目立たないこと」だと考えているので、周りが立てば自分も立つし、誰一人立っていない中で自分だけ立つことは、やはり避けるべきだろうなと。

そんな中、プラユット首相が、映画館で起立しない若者を憂いているというニュースがありました。Google自動翻訳なので多少読みにくいですが、「若者よ、映画館で起立する勇気を持て」といった内容。周りに流されず、自らの意思で行動しなさいということなのでしょう。実際、周りに合わせて座ったままの人は自分も含めて一定数いるように思います。

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