A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

Alone(タイ映画)

「Alone」は2007年のタイのホラー映画です。ホラー、サスペンス、サイコスリラーなどがうまく練り込まれた、思わず背筋がゾッとするような作品。シャム双生児が主人公な点もタイならではです。場面が外国から始まるストーリーにもしっかり意味があったし、終盤の展開には非常に驚かされました。

同様の "真面目ホラー" では、"心霊写真"、"Coming Soon" もしっかり怖がらせてくれましたが、3本の中では一番上質な作品だと思いました。エグさで言ったら心霊写真が群を抜いて陰湿ですが、脚本の上手さではやはり本作を推したい。本当に怖いのは、オバケよりも実は・・・、みたいな。

ネタバレしない程度にあらすじを書くと、韓国で働くピム (ヒロイン) にタイの病院から電話が入ります。タイで一人暮らしの母親が危篤に陥ったため、同居人 (夫?) のウィーとタイに戻るピム (母親は一命は取りとめます)。久しぶりに実家に戻ったピムは、かつてシャム双生児として身体がつながっていたプロイの幻影に悩まされます。

15歳で行った分離手術のせいでプロイが死んでしまったと今でも思い悩むピム (現在31歳) に、精神科医を紹介するウィー。最初は憤るピムでしたが、夜な夜なプロイのおぞましい姿に悩まされ、診療を受けることにしました。

精神科医はピムの心の問題であることを説明し続けますが、ピム自身、そう思おうとしても事態はまるで改善しません。一方、ウィーの目にもすりガラス越しにプロイの姿が写ったりします。実は彼らの関係は、15歳の頃、同じ病院に入院していた患者同士だったのです。

つながった身体を入院患者たちから常に奇異な目で見られるピムとプロイ姉妹。そんな二人のうち、ウィーはピムに好意に持ちました (外見はまったく同じですが)。じきにウィーとピムは心を通わせるように。一足早く退院日を迎えたウィーを、どうしても見送りたかったピム。しかしプロイが頑としてベッドから降りず、最後にひと目、窓越しに彼を見ることすらかないませんでした。

結果的にピムは強い自立心が芽生え、二人は分離手術をすることに。その後の経緯は省かれていますが、何やかやあってプロイは亡くなり、ピムはウィーと結ばれ、そしてタイを離れ韓国に住んでいたというわけです。

母親の容態がようやく安定し、母親を連れて韓国に行くことが可能となり、精神科医の助言である「最善はタイを離れ韓国に戻ること」を実行に移そうとしていたウィーですが、煮え切らないピム。果たしてピムはプロイの呪縛を解けるのか。そしてなぜここまでプロイの呪縛が強いのか。そこには驚愕の真実が・・。

まず、自分は萩尾望都先生の名作「半神」を思い出しました。分離手術の結果、もう一人が衰弱死する可能性を知りながらも、手術を望んだシャム双生児の女性の物語です。プロイが亡くなったのはそういうことなんだろうなと思いながら観ていたので、プロイの姿がおぞましければおぞましいほど、怖さよりむしろ哀しさが伝わってきました。

きっと結末もそんな感じのまとめ方なのかなとうっすら想像しながら観ていましたが、いやいやどうして、一筋縄では行きませんでした。しっかり怖い。まじホラー。これは名作。

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