「Coming Soon」は2008年のタイのホラー映画です。タイ映画にありがちなコメディ要素はなく、ひたすら真面目に怖い映画を目指した作品。おそらく監督はホラー映画が大好きなんでしょう。最初から最後まで怖い演出がたっぷり練り込まれています。
といっても、ホラー映画ではわりと王道の演出が続くので、ちょっと教科書的かなとも思ったり。ホラーを見慣れた人には少し物足りないかもしれません。逆に、普段あまり映画を観ない人だと、仕掛けが多く構造がやや複雑に感じるかも。
まずは劇中劇、いわゆるメタフィクションで始まるこの映画、主人公シェーンはシネコンの映写技師で、同僚のヨットと共謀して新作ホラー映画「Revengeful Spirit (復讐に燃える魂、といった題名)」を公開前にこっそり撮影して、半グレに売り渡そうとします。
深夜、シェーンがフィルムをセットし、ヨットは客席でビデオを回しスクリーンを撮影し始めました。しかしそのまま眠ってしまったシェーンが翌朝目を覚ますと、ヨットの姿はなく、床に転がっていたビデオを巻き戻して観てみると、、というところから物語が動いていきます。
シェーンのギャンブル癖に嫌気がさして別れたばかりだった同僚のソムとともに、シェーンは自分の命を守るため、真相を突き止める決意をします。実はこの映画 (Revengeful Spirit)、実際の事件に基づいて作られたものだったのですが、元凶は死んだ犯人の呪いなのか、それとも。。
どんでん返しがあったりループがあったり最後に伏線が回収されたり、そしてラストシーンにまたメタ構造が出てきたり、けっこう凝った作りです (逆にちょっと考えすぎかも)。これ以上はネタバレになるので書きませんが、とにかく実際に観て怖がってもらった方がいいですね。
タイのホラー映画としてはちゃんと怖がれるので秀作だと思いますが、クラシックになれるか、くり返しの鑑賞に耐えられるか、と言われたら、そこまでではないかも。一番の問題 (と個人的に感じる点) は、主人公が対峙する元凶のビジュアルが、正直そんなに怖くないんですよね。
丸顔だからかな、全体の雰囲気は怖いんですが、顔面アップの恐怖度がどうしても足りないというか、今ひとつ恨めしさが足りない感じ。あとヒロインであるソムのクライマックスの演技が若干不満。美人さんですが、もうひとつ感情を上乗せしてほしかった。