「Back to the 90s」は2015年のタイのSFドラマ映画です。今年20歳になるコーンが偶然20年前 (1995年) にタイムスリップしてしまい、若き日の両親 (父タム、母マム) と、父に想いを寄せていた女性ソムと出会う物語です。
タイムトラベルものなので伏線がたくさんあって、細かい部分までつじつまが合うよう良く練られた脚本です。タイの "バックトゥーザフューチャー" とはよく言ったもので、もちろん本家BTTFにくらべたら粗さはあるものの、十分に面白い作品でした。以下、ネタバレです。
タイムスリップ前 (2015年)、コーンの父タムは仕事優先で家庭を顧みるような人間ではなく、また母マムは、ソムという女性の影を20年も引きずるタムに愛想を尽かしていました。そんな両親の不仲に悩むコーン。
自宅で見つけた古いページャー (ポケベル) に導かれるように、コーンは1995年にタイムスリップしてしまいます。コーンは、タムが叔父とカセットテープショップを経営する家 (2015年現在と同じ場所) に住み込むことになりました。
若き日のタムとマムはこの時から付き合っていましたが、いつもソムの件で口論になっていました。ソムは、タムの亡くなった親友の妹で、タムにとっては妹のような存在でしたが、ソムはタムを心から愛していました。
タムの影響で自身も学生バンドを組んでいたソムは、コーンにギターを習うようになりました。マムの嫉妬を気にして、タムがコーンに頼んだのです。
最初は不満たらたらのソムでしたが、次第にコーンと仲良くなっていきました。コーンのタイムスリップの原因となった古いポケベルも、ソムがコーンに渡したものです。
ほどなく、マムはタムの子供を身籠りました。コーンは誕生日から逆算して、それが自分自身であることがわかりました。結婚と出産に反対するマムの父親に対して、タムは自身の夢であったバンドデビューをあきらめることで、結婚の承諾を得たのでした。
コーンは2015年に戻ると、タムに感謝の言葉を伝えました。ソムがその後どうなったかたずねると、ソムはタムとマムの結婚式当日にバンコクを離れ、夜行バスでチェンマイに旅立ったものの、途中でバスが事故を起こし亡くなったのだと言われました。
タムは、最後にソムが残していった彼女の歌 (タムへの想い)をカセットテープで聴くたび、亡くなったのは自分のせいだと悔やみ、20年間ずっと引きずっていました。その辛い思いを、仕事に打ち込むことで紛らわせていたのです。
コーンが急いでもう一度1995年に戻ると、それは結婚式当日でした。すでにソムはチェンマイ行きのバスターミナルに行っているはずだと聞き、スクーターに乗ってターミナルに急ぐコーン。
ソムのポケベルに「バスに乗るな、降りて僕を待て」とメッセージを入れた後、該当するバスを見つけましたが、ちょうど発車したところでした。スクーターで追いかけ、ようやく追いつくとバスを止め、車内に乗り込むと、ソムの姿はありませんでした。
ひとつ空いた座席に落ちていたソムのプリクラノートを見つけ (コーンとの写真も)、バスを降りてくれたんだとホッとするコーン。そこに、大型トラックが突っ込んできました。
気がつくとコーンは2015年に戻っていました。家に帰ると、今まで見たこともないほどラブラブな両親がいました。あっけにとられるコーンでしたが、何かが変わったことを感じ、思い切ってソムの電話番号にかけてみました。
最初は存在しない番号だと応答されましたが、市外局番を入れてかけ直してみると、今度はつながりました。そして、電話に出たのはソムその人でした。言葉に詰まってしまい、すぐに電話は切られてしまいましたが、心の底から安堵するコーンでした。終劇。
映画の中では20年の時差を示す小ネタがたくさん出てきます。パソコンはWindows95、ネット接続は64kbps、Googleはまだなく、プリクラ (1995年発売) やたまごっち (実際は1996年発売) も登場。コーンが使う2015年の若者言葉はたまに理解されません。
また、1995年ぽい音楽がふんだんに流れていて、音楽映画としても楽しいです。若きタムがオルタナティブロック好きという設定で、"Smells like teen spirit" のイントロみたいなBGMが出てきたり、レッチリのスラップベースっぽいBGMがあったり、演奏シーンもたくさん。
ソム役のBaifernはバンドのボーカルとして上手な歌を披露しているのですが、後年、"フレンドゾーン" では音痴として下手なカラオケを歌っているので、それもパロディとしてつながっているのかなと思ったり。