A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

古代ビーズのネックレス(ヨルダン)

ショーバック

ヨルダンの中央を南北に貫く古道、キングスハイウェイ。ほぼ南端のショーバックには十字軍の城塞が残っていて、城の内部では教会、浴場跡、貯水池、井戸、脱出用の抜け穴などが見られます。城壁にはサラディンの碑文も残っており、小高い丘の上にたつ姿の美しさもあって、キングスハイウェイのひとつのハイライトになっています。

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実はここに、知る人ぞ知る有名な骨董品屋があります。城を見学に来た人なら、その入り口手前にある小屋にすぐ気付くでしょう。そこで1人のおじいさんが品物を並べ商売をしています。

おじいさんは雑然と並べられた古銭やガラス玉、はては化石からやじりまであれこれと指さしながら、「これは石器時代、これはユダヤ、こいつがビザンツでそいつは十字軍だ」などと一品一品ていねいに説明をしてくれます。

話を聞いているだけでロマンをかき立てられます。中でも目を引いたのは、様々な時代の石・ガラスが束ねられたネックレスでした。

おじいさんの説明によれば、そのネックレス (ナイロン糸に通してあるだけですが) にはナバティア、フェニキア、ローマ、イスラムの各時代の石やガラス玉がつけられていて、おじいさんが10年以上かけてこつこつ拾い集めたものなんだそうです。

ショーバックには歴史的に十字軍など外国人が多数訪れ、地域の交通の要衝となっていましたから、周辺の砂漠には当時の落とし物がそれなりに落ちているのだそう。

「残りの人生ではもうこれだけ良い物は集められないだろうな」 おじいさんはどこか寂しげな目でネックレスを見つめました。

「だから高く買ってね」という感じで交渉が始まりましたが、「100ディナール (18,000円)」と聞いた時はちょっと気持ちがぐらついてしまいました。

内心、職場のスタッフの月給より高いじゃないかと思い、一旦はネックレスをおじいさんに返したのですが、ここで買わなかったらもう一生出会うことはないだろうという思いもあって、迷った末に購入。

ネックレスに加えて指輪、印章、古銭をいくつか選び、なんとかまとめて100に値切ることができました。大満足。

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ビーズのネックレス

日本に帰ってから大判のビーズの本を手に入れて見たところ、ショーバックで買った、おじいさんがナバティア時代のものと言っていたビーズは、どうやらカーネリアン (紅玉髄) ビーズのようです。本物なら、紀元前3~2世紀のインダス文明のものだそう (本当?)。

他にもローマンガラスビーズ (らしきもの)、ガラスに眼が入ったイスラムのモザイクビーズ (これはそうかな) と、もし本物ならみんな1500~2000年前のものということになります。うーん、そうなるとさすがにどうでしょう。本物であってほしいとは思いますが。

しかしそういう目で見つつ、改めてこのビーズのネックレスを手に取ると、ふと2000年前にタイムスリップしたような感覚にとらわれました。もし前世があるのなら、自分はユーフラテス川のほとりで羊飼いでもしていたのかもしれないな。

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