「ファーストラブ (A Little Thing Called Love)」は2010年のタイのロマンチック・コメディ映画です。中高一貫校を舞台に、中等部1年のナムが高等部1年の心優しきイケメン、ショーンに3年間片想いをする物語。
特筆すべきはナムの容姿の変化です。ナムは色黒、メガネ、学校指定のダサいおかっぱ頭と、学校ではイケてない女子4人組の1人として登場します。見た目は本当にダサい。甘いマスクと穏やかな性格で学校一の人気を誇るショーンとはどう考えても釣り合いが取れません。
これはきっとナムが恋心をエネルギーに自身を成長させていく物語だな、結ばれることはまずないなと勝手に思いながら観ていましたが、2年生になって英語演劇部の白雪姫に抜擢されたところから突然、印象が変わってきました。ちなみに抜擢の理由は容姿ではなく英語力。
メガネを外し、軽くお化粧をして、髪型や服装を変えるだけでこんなにきれいになるのかと驚くほど、ナムの変化は劇的でした。さらにひょんなことから学校のマーチングバンドの先頭を務めることになり、ひたむきにバトンの練習に明け暮れる姿は美少女そのもの。
途中で転校してきたショーンの幼馴染で親友のトップはナムに一目惚れしてすぐ告白しました。ナムははっきり返事をしないまま、彼らのイケてるグループに入って一緒に遊ぶようになりましたが、ナムの目の先にはいつもショーンがいました。
ショーンとトップは以前の経験からけっして同じ人を好きにならないと誓いあっていたことから、ナムがはっきりトップに断りを入れた後も、実はショーンもナムのことが気になっていたのに、気持ちを伝えることはありませんでした。
モテモテになったナムはイケてないグループの3人とはしばらくギクシャクしていましたが (3人から拒否されていた)、後に和解。中等部卒業式の日に、3人の後押しを受けついにショーンに告白することに。
しかしショーンの答えはノー。1週間前にピンの告白を受け入れてしまったとのことでした (ナムに白雪姫のお化粧をしてくれたピンは性格も良くイケてるグループの一員でナムとも仲が良かった)。ショックは大きく、なぜもっと早く告白しなかったのかと後悔し泣き崩れるナムでした。
以前、アメリカに単身赴任中の父親から言われた、クラスで成績トップをとったらアメリカに越してきても良いという約束を目標に勉強に励んできたナムは、ついに一番の成績となり、その後アメリカに渡っていきました (たぶん高校からずっとアメリカ)。
そして9年後、アメリカで若きデザイナーとして雑誌に取り上げられたナムは、タイに戻った際、テレビ番組に呼ばれました。24歳になった (という設定の) ナム、さらにきれいになっています。タイで自身のブランドを立ち上げたいと語るナムに、インタビュアーが1冊のアルバムを見せました。
それはショーンが学生時代に3年間撮りためたナムの写真をまとめたものでした。ショーンが卒業式の後に、ナムの家にそっと置いていったものです。そしてインタビュアーが声を上げました。「さあ、このアルバムを作った人の登場です!」 突然のことに驚くナム。
インタビュアーにうながされ、ナムはショーンにもう結婚しているのかとたずねました。すると、アメリカに行ってしまった女性をずっと待っていた (結婚はしていない)、と答えるショーン。こみ上げる涙を抑えきれないナム。そのまま映画は幕を閉じます。
いやあ、面白かった。いい映画でした。途中は切なさの涙が、最後は爽やかな涙が流れました。Pimchanok Luevisadpaibu (Baifern) 演じるナムの、まるで蝶の羽化のような変化がすごかったです。英語教師のイン先生も最高。
しかしマリオ・マウラー (ショーン役) ほど心優しきイケメンの役が似合う役者はいませんね。ミウの歌、ファーストラブ、愛しのゴーストの3本を観ましたが、どれもはまり役でした。3本とも傑作です。