オールドレンズ購入
eBayで買ったCマウント・オールドレンズの数々。ちゃんと日本に届いていました。値段はそれぞれ30~250ドル。これだけ買っても全部で Lumix G Vario 7-14mm 1本くらいの金額です。
このうち6本は16mmムービーカメラごと購入。確かにお得感はありますが、レンズコンディションの説明がなかったので箱を開けてみるまでドキドキでした。
結果として今回はどれも満足いくものばかりでしたが、たぶん一番古いのは1930年代のレンズなので、今はとにかく画が写るだけで感動しています。
これから、Metabones のCマウントアダプタをつけた Lumix GF1 で、それぞれの写りをじっくり試していこうと思います。
オールドレンズリスト
Canon TV-16 50mm f/1.8
Kern-Paillard Switar 16mm RX f/1.8
Kern-Paillard Switar 25mm AR f/1.5
Kern-Paiillard Switar 25mm AR C f/1.5
Kern-Paillard Switar 50mm RX f/1.4
Kiev Vega-7E 20mm f/2.0
Meopta Openar 20mm f/1.8
Som Berthiot Lytar 25mm f/1.9
Taylor-Hobson Cooke Cinema 1" f/3.5
Taylor-Hobson Cooke Filmo Special 1" f/1.8
Taylor-Hobson Cooke Telekinic Anastigmat 3 3/4" f/3.3
Wollensak Cine Velostigmat 15mm f/2.7
Wollensak Cine Velostigmat 1" f/2.7
Wollensak Cine Velostigmat 1" f/1.5
Wollensak Cine Raptar 0.7" (17mm) f/2.5
Wollensak Raptar 17mm f/2.7
* * *
ここからは各レンズの実写です。
Canon TV-16 50mm f/1.8
外国のレンズを使った後、欧米のオールドレンズには「味」を、そして日本製レンズにはその対極にあるような正確な描写性を期待して、キヤノンの50mmレンズを1本買いました。マイクロフォーサーズ機で使うと100mmになり、明るいf値と相まって背景がよくぼけてくれるので、ポートレート撮影に重宝しそうです。
実際に使ってみると、色のりは良く線もシャープだしボケはきれいだしで、文句のつけどころがありません。やはり世界に誇るべきメイドインジャパンです。結局、日本製品が好きなんですかね、日本人は。
Kern-Paillard Switar 16mm RX f/1.8
何本か撮った後にこのレンズを手にとって、「キター!」って感じでした。Switar 16mm。このレンズ、すごい。液晶画面に写る被写体はすっきりクリアー。14cmという最短撮影距離がもたらす背景のぼけは、主題を浮かび上がらせてくれます。周辺部は放射状に流れ、シネレンズならではのダイナミックな画がたまりません。
16mmという広角なので四隅はけられますが、Wollensakの17mmよりイメージサークルは大きいし、なにしろマウントネジをゆるめたら最短5cmまで被写体に寄れます。小さすぎない筐体も、操作性に貢献しています。
今回はすべて絞り開放で撮っていますが、次はもっといろいろな撮り方をしてみよう。じっくりと使い込んでみたい、そんな魅力いっぱいのレンズです。
Kern-Paillard Switar 25mm AR C f/1.5
マウント交換遊びにおけるシネレンズの定番とも言える Switar 25mm。同じ25mmでもいろいろバリエーションがありますが、まずは25mm AR C f/1.5 の写真。
ご覧のとおりイメージサークルは十分広く、開放絞りで距離をとった場合の写真周辺部は、グルグルボケではなく四隅に放射状に画が流れていくというもの。しかしそれほど極端ではないのが好感触。
最短撮影距離は37cm。うーん、イマイチ。でもネジ込みマウントをぎりぎりまで緩めると、最短距離は一気に14cmに。例えば料理の写真を撮るならこの方法ですね。
「さすが定番レンズ!」と言えるほどの確信は実はまだ全然ないのですが、確かに使いやすいレンズだと思いました。中心部のシャープさと周辺部の荒々しさが絶妙なバランスを保ち、現代レンズではあり得ない不思議な味の写真を生み出してくれます。
オールドレンズ (シネレンズ) 遊びの醍醐味は、レンズそれぞれの特性に合わせた撮影シチュエーションをじっくり考えることでしょうか。
Kern-Paillard Switar 25mm f/1.5 AR
よく晴れた土曜日、パナソニックGX1にオールドレンズ (Switar 25mm) をつけて家の周りを散策しました。写真からわかる通り、家の周りが即、山歩きのようになってしまうのは、不便なような、自慢のような。
"Switar 25mm f/1.5 AR C" の写真は上にアップしましたが、今回は"AR"。"AR C"よりはイメージサークルが小さく、少し画面がケラれます。また、マウントネジのところが少しのびているので、GF1、GX1はともに大丈夫ですが、中には奥までねじ込めないフォーサーズ機もあるとのこと。
他にもSwitar 25mmには"RX"があって、そちらは画面周辺部の荒れ方が通好みで人気も高いそうですが、個人的にはARの穏やかな描写が好きです。それでも現代レンズに比べたらとんでもない荒れ方をしますが、それも味のうち。もちろん画面中央部はクッキリです。
GX1の普段の定番レンズはパナソニック20mm f/1.7。もうほぼこれをつけっぱなし。こんなに良いレンズはありません。この描写力に惚れ込んでいます。けれど、オールドレンズの一癖も二癖もある写真が、ときどき無性に魅力的に感じます。
中でも、Switar 25mmは特別です。光をうまくとらえると、煌めくような美しい世界を写しだしてくれます。フォーカスが合うのは中心部の狭い範囲であったり、イメージサークルが欠けてしまったりと、使い勝手が良いわけではありませんが、良く晴れた日にのんびりと散歩しながら、マイペースで写真を撮るには最高のレンズです。
Kern-Paillard Switar 50mm RX f/1.4
マイクロフォーサーズで使用するとコンパクトながら100mmの中望遠として使える便利なレンズ。Switar 25mmは定番ですが、この50mmもかなりいいですね。絞り開放だとフワッと柔らかく、少し絞ればキリッと画が引き締まります。と、いうほど良い写真はまだ撮れてないんですけど。
写真は日本ではなく全部フィジーのものです。空気感がちょっと違うのかな。この日は晴天だったので絞り開放にはなかなかできなくて、最初の花の写真でもf2.0。まあf1.4だとピントがシビアすぎるので、これくらいが丁度いいかもしれません (自分には)。
バックも十分ボケます。シネレンズの特徴ともいえる周辺部のぐるぐるボケはほとんどなく、暗部の描写も良いし、こうなると現代レンズとくらべてもそう劣るものではありません。ただし逆光には弱いです。
100mmという焦点距離はポートレイトに最適で、今回のようなお散歩レンズとしてはどうかなと思う一方で、自分の撮りたいものをきちんと見定める、空間から主題を切り抜いて撮るという、これまであまり深く考えてこなかった作業に没頭することができて、なんだかとても楽しかったです。
Kiev Vega-7E 20mm f/2.0
Vega-7E は旧ソ連の16mmムービーカメラ Kiev 16 Alpha 付属のレンズです。もうひとつの共産圏Cマウントレンズ、チェコのMeopta Openar の焦点距離も20mm。25mmではなく20mmなんですね、あちらは。
マイクロフォーサーズ機の Lumix GF1 につけると倍の40mm相当 (35mmフィルム換算) になるので、個人的にはとてもしっくりくる画角です。ただ、やはり四隅がけられてしまいます。これは仕方ないですね。むしろ写真の味として楽しみたいところです。
カメラ本体は1970年から73年にかけて製造されたとのこと。つまり約40年前のレンズですが、外観はモダンだしピントはシャープ、写真のこってりした色乗りもなかなかのものです。写真はすべて開放絞り、植物はいずれも最短距離撮影です。
f/4.0まで2段絞れば画面はもっとシャッキリします。自宅の周りだとこんな写真しか撮れないので、次は町に下って建物を撮ろうかなと。たぶんそういうものを少し絞って撮ったほうが、このレンズには合うんじゃないかなと思いました。
Meopta Openar 20mm f/1.8
チェコ製16mmムービーカメラ Admira のレンズ。20mmの他にも12.5mmと40mmがあります。アルミ製の銅鏡はメカニカルな感じでかっこいいのですが、ちょっと大きさが気になります。
最短撮影距離は Vega-7E よりも長く44cm。イメージサークルも小さめで、これまたちょっともの足りません。
参考写真は絞り開放ですが、被写体のバックを考えないとなかなかうまく背景がぼけてくれません。(マウントネジをゆるめて接写する裏技もありますが)
ヨーロッパの石造りの町を、このレンズをf/8.0まで絞って撮った写真を見たことがあります。四隅、というよりも丸くけられていましたが、それはそれはシャープな写真でした。きっとそういう撮り方がこのレンズの持ち味なんだと思います。
Som Berthiot Lytar 25mm f/1.9
フランス製シネレンズ。中心部のピントはシャープでありながらフワッとした優しさがあります。イメージサークルは四隅がほんの少しけられる程度。周辺部の荒れも激しすぎず、シネレンズらしい程よいスパイスになっています。
最短撮影距離は40cmとやや残念ですが、絞りのクリック感、3mくらいまでの距離合わせのしやすさ、画の写り具合など、トータルで使いやすいレンズです。
しかしなんといってもこのレンズの特徴は、絞りf/4.0にしたときバックの点光源が八芒星になること。液晶画面にこの星があらわれると思わずハッと息を飲みます。クリスマスのイルミネーションとか撮ってみたいなぁ。
Taylor-Hobson Cooke Cinema 1" f/3.5
年式が古いレンズで、距離合わせがなく固定焦点。f/8.0くらいに絞れば、スナップ写真の距離感ならなんとなく全体にピントが合う感じですが、どちらかというと遠景撮影用です。
一番の特徴はレンズの周りに絞り値を刻んだ羽が生えていることで、とってもキュート。レンズフードを取り外した姿がまた美しいので、そちらも載せておきます (下の方に)。
レンズフードをつけているとほんの少し四隅がけられるので、サンプル写真ではフードは取り外しています。でも昔のレンズなので逆光には弱いし (フードがないとなおさら)、少しくもりもあるので、全体的に白くフワッとどこか懐かしい感じの写真になりました。
写真はマウントネジをゆるめてピントを合わせています。ミニチュアハウスはf/8.0で撮りました。ここまで絞ってもあまりシャキッとは写りませんが、何十年も前のレンズと考えると (もしかして戦前?)、なかなか優秀なんじゃないでしょうか。
Taylor-Hobson Cooke Filmo Special 1inch f/1.8
現代レンズにはないデザインと質感で、いかにもオールドレンズといった外観の Cooke Filmo Special。見た目の古さに半して、その性能はあなどれないものがありました。
まず、最短撮影距離が22cm。これはかなり寄れます。そしてイメージサークルの広さ。Lumix GF1 に装着してもまったくけられません。
撮影中、液晶画面に広がる世界がとてもきれいで、とにかく気持よくシャッターを押すことができました。さらに、これぞシネレンズというべきグルグルボケの美しさ!
開放絞りの場合、接写すると背景がとろけるようにぼけるのに対し、これが距離をとると突然周囲が激しくグルグルとぼけてきます。もちろん画面中央部のピントはシャープ。
(レンズが少し曇っているせいかモワッとやわらかく写りますがピントは合っていると思います。それからグルグルボケの出現条件はまだつきつめて試してはいません)
ということで、今のところ一番のお気に入りレンズです。日常の風景がやけにドラマチックに変貌するところがすごい!
Taylor-Hobson Cooke Telekinic Anastigmat 3 3/4" f/3.3
ちょっとわかりにくい焦点距離ですが、93mmくらいでしょうか。Lumix GF1で使うと2倍の186mm相当。手持ちレンズの中では一番の望遠レンズです。
週末、エウア島にフェリーで行きました。3時間半の航海中、エウアに近づいたあたりからクジラが現れ始め、2頭でジャンプしたりしばらく船と並走してくれたりと大サービス。
こうなるとできるだけ望遠で撮りたくなります。もちろん取り出したのはこのレンズ。ピントが甘いのは腕が悪いせい。きちんとあわせればもう少しシャープに写るはずです。
でも、外洋の波に大きくゆっくり揺れ続ける船の上からでは、液晶画面をずっと見続ける根性はありませんでした。一気に船酔いに襲われつつも、これでもがんばって撮った方。
この季節、エウアは島からクジラが見えます。坂道にしばらくたたずんでいると、何頭かは必ず見られるはず。ちなみにこの写真もピントが悪い (真ん中やや左の黒い点のようなのがクジラ)。無限遠の印にあわせるとオーバーインフなんですね。後で気づいた。
3回目のエウア、またまた良かったです。クジラシーズンにはフェリーで行くのが超オススメ。ちなみにトンガタプ戻りは飛行機で。上空からもクジラ1頭見えました。
Wollensak Cine Velostigmat 15mm f/2.7
ご覧のとおりとにかく小さい豆レンズ。いやもうアポロチョコくらいしかないんじゃないかと。(本当はもう少し大きいけど)
フォーカスリングはなし。固定焦点。無限遠のちょい手前にピントが合っていますが、絞ればまあなんとなく手前の方も合う感じ。
でもねじ込み式のマウントなので、ねじをゆるめればフォーカスは自在に。レンズがはずれる寸前までゆるめると、最短12cmの接写ができます。
こんなおもちゃのようなレンズですが、その描写はなかなかのもの。中心部の解像感は十分で、発色も良く、15mmの割にはイメージサークルも広め。
どんな場面で使おうかと、そう考えるのが楽しくなるレンズです。
Wollensak Cine Velostigmat 1" f/2.7
Keystone A-7という古い16mmムービーカメラ本体ごと買ったこのレンズ、とにかく小さい。前に載せたCine Velostigmat 15mm f/2.7より2、3ミリ厚いものの、小ぶりのフジツボくらいしかありません。
A-7は1930年代後半から1940年代にかけて作られたものらしく、このレンズはいくつかある標準付属レンズのひとつですから、レンズもきっと70才くらいでしょう。
1インチ (25mm) という焦点距離は、フォーサーズ機で使うと35mmフィルム換算で50mm相当。いわゆる標準レンズにあたる画角なので、何かと使い勝手がいいです。固定焦点ですが、例によってマウントネジをゆるめてピントを合わせることができます。
レンズフードをはずせば四隅がけられることもなく、驚くべきことに画面の端の方も画が乱れていません。雨降りの日らしい質感もでているし、白っぽくもやがかかっている感じは、オールドレンズ独特の味わいと思えばむしろ好ましいです。ポートレイトにはうってつけのレンズかもしれません。
日本で写真を撮ってこなかったので、写真はトンガで撮ったもの。そもそもの空気感が違うので他のレンズの実写とは比べられませんが、製造年を考えたら満点のレンズだと思います。
Wollensak Cine Velostigmat 1" f/1.5
フォーカスリングが壊れているため格安で買ったこのレンズ、最短距離での撮影をしています。たまたまこの時は梅雨の晴れ間だったこともあってか、やけにキラキラした写真になりました。
背景のボケを見る限りそれほど優秀なレンズとは言えないかもしれませんが、逆にガチャガチャしているボケ方がまるで水彩画のようにも見えて、なかなか趣きのある画になっています。これ、けっこう好きですね。
Wollensak Cine Raptar 0.7" (17mm) f/2.5
ひとつ下の Raptar 17mm と焦点距離は同じでもその外観は大きく異なります。他の25mmレンズくらい大きくずっしり重いですが、その分操作はしやすいです。大きいと言っても Lumix 純正レンズとくらべればかなり小型だし。
やや画面の荒れはありますが、色乗りは良好。もちろん中心部はシャープ。ただし絞り開放だと周辺部の白色の滲みが目立ちます。最短撮影距離は20cm。使いやすさと色乗りの良さ、そして何より見た目の格好良さで、お気に入りの1本になりそう。
これくらい個性的な描写のほうがシネレンズらしいと思います。まぁ腕もアレなんで、早々に王道をあきらめて、邪道に突き進んでいる感じですけど。
Wollensak Raptar 17mm f/2.7
広角レンズです。フォーサーズ機で使うと画面が丸くけられてしまいますが、35mmフィルム換算で34mmという画角は、スナップ写真にぴったり。サンプルはすべて開放絞りで撮りましたが、f/8.0くらいまで絞ってパンフォーカスにしたら、最高のお散歩カメラになるでしょう。
クラシカルかつかなり小ぶりな外観ですが、実力はあなどれません。しっかりと力強い画、周辺部もあまり乱れず、逆光にも強い。こうなると丸くけられるのも面白い効果のひとつとして積極的に作画に利用したくなります。
最短撮影距離は23cm。マウントネジをゆるめればなんと9cmまで寄れます。優秀! アメリカ人てのはつくづく合理的な物を作りますね。オールドレンズの描写に叙情性ばかりを求めるのは、どうやら間違っているようです。このレンズは自然よりも街の風景とか人工物を撮る方が実力を発揮しそう。
オールドレンズ散歩(トンガ)
Wollensak Cine Velostigmat 15mm f/2.7+Lumix GF1でトンガの首都ヌクアロファの町を写真散歩。
このレンズ、1930年代後半から1940年代にかけて製造されたもので相当なロートルですが、ケラレ以外は思ったより普通に撮れていて、むしろ肩すかしな感じです。中心部の解像度はなかなかだし、色乗りも悪くない。
f/5.6に絞ればパンフォーカス、スクエアフォーマットにすればケラレも気にならないので、レンズのサイズも極小だし、スナップ写真には最適かも。
オールドレンズ散歩(日本)
日本でのんびり過ごしたお正月。Switar 25mm f/1.4 AR C+Lumix GX1で神社をパチリ。
オールドシネマレンズで切り撮る日本の田舎の風景は、なんだか心に響きます。