「ME before WE」は、2019年7月、YouTubeのBNK48公式チャンネルで公開された短編映画です (24分)。BNK48のジェニス (スー役) とミュージック (ベル役) が主演したタイ映画「Where We Belong (私たちの居場所)」の前日譚。本作はベルを中心に描かれています。
今もYouTubeで視聴可能。英語字幕はありませんが、セリフ劇というわけでもなく、Where We Belong を観ていればストーリーの流れはわかります。また、要所でベルのモノローグがタイ語字幕で表示されるので、スマホのGoogle翻訳 (カメラ入力) で読み取りながら観ました。
Where We Belong の2年前。地方都市チャンタブリーに引っ越してきたベル一家。ベルの父親は引っ越しはこれで最後と言っているが、ベルは「本当?」と思う。ベルの母親はとても不満そう。
ベルは地元の学校に転入。「ミドルスクール (高校) でできた友人は一生の友人だと言われている」 しかしベルはなかなかクラスになじめない。お昼ご飯を一人で食べ、放課後は倉庫で見つけたギターを手に時間をつぶしてから帰宅する日々。後のバンドメンバーとの出会いもサラッと描かれる。
ベルの母はここの暮らしが気に食わない。洗濯は手洗いで、ときどき水道も止まる。次第に両親の口論が増えてきた。そんな時、ベルはおばあちゃんと自分の耳にひとつずつイヤホンをさして、ロックを爆音で聴くのだった。ある日帰宅すると、母は家から出ていきいなくなっていた。
学校の倉庫でギターの練習をしながら寝てしまい、目覚めると倉庫に鍵がかけられ、出られなくなったベル。大声で叫ぶが誰も来ない。しばらく途方に暮れていると、突然ドアをガンガン叩く音が。クラスメイトのスーが鍵を壊してくれたのだ。スーはいつも一人でいるような生徒だった。
野原でベルにギターを弾けと言うスー。「もっと!もっと!」スーの掛け声につられ思いきり弦をかき鳴らしたらベルは、指を怪我してしまった。自分のハンカチを指に巻いてくれるスー。野原で空を見上げながら会話をする二人。空の上ではどこまで息ができるのだろうと言うベルに、スーは「成層圏 (Stratosphere)」と答えた。これが後にバンド名となる。
野原から、自転車の二人乗りで帰る。スーが漕いで、ベルが後ろ。スーはベルの母親が出ていったことを知っていて、大人は逃げられるからいい、自分も母親が逃げた (死んだ) と語った。辛かったらハグしていいよと言うスー。後ろから手を回しギュッとするベルだった。
その後、バイクの免許をとったベルがバイクを運転し、スーはいつも後ろに座ることになります (本作の中で描写はありません)。ちなみに、この時スーが漕ぐ自転車がふらつきすぎて、ちょっと笑ってしまいました。たぶん二人乗りするほど親しい友人がいなかったという表現なのかなと。そしてモノローグ (タイ語字幕)。終劇。
・一番抱きしめたい時に抱きしめさせて
・その日以来キミはずっと後ろから抱きしめてくる
・私たちの居場所はバイクの後ろにあるのかも
・キミが後ろから抱きしめてくれるのが好きだった
・キミがいつか後ろからいなくなるなんて想像もしなかった
・キミはこれからどうするの
ベルを演じたミュージックの存在感が光る一作でした。先日BNK48の選抜総選挙で2位になったミュージック。実はこの時のスピーチで、年内いっぱいでBNK48を卒業することを発表していました。役者の道に進むのかな。そうだとしたら応援したいです。
この卒業発表が念頭にあったのかもしれませんが、選挙前にミュージックは自分の性的指向についてカミングアウトしています。すべての年齢層を好きになれるし、誰かを好きになるとき性別は気にしない。女性も男性も好きだけれど、今は以前より女性の方が好き。今まで公言しなかったのは、女性が好きだからグループに入ったとファンに誤解されたくなかったから、とのこと。
LGBT先進国のタイにいると、それほど奇異な印象は受けません。今後はより自分らしく生きていってほしいですね (参考:タイのLGBT事情)。ちなみに彼女の外見の変遷を見ると、Where We Belong のボサボサショートカットが一番似合っているような。