タイで公開されたマーベル最新作「エターナルズ」を観てきました。先に映画館で何度も予告編を観ていましたが、なんだかあまりピンと来ないなあと思いつつも、これまでアイアンマン (2008年) 以降のマーベル映画はほぼ観ているので、本作もそれなりに楽しみにしていました。
感想としては、マーベルにしては異色の出来だったなあと。家にもどってあらためてレビューサイトやネタバレサイトを見てみたところ、やはりというか何というか、賛否両論な作品だということがわかりました。自分はどちらかといえば、うーん、やっぱりネガティブかなあ。面白くないわけではないのですが。
まず、エターナルズ10人衆が、みんなどこか影があって元気がありません。今回のミッションだけでも7000年生きているわけですから、どこか達観してしまうのも仕方ないという設定なのでしょうか。メインの二人、イカリスは表情が終始暗く、エイジャックからリーダーを引き継いだ (引き継がされた) セルシも終始自信なさげ。現世で人間の恋人がいるセルシですが、イカリスとは一時は結婚までしていた間柄。数百年ぶりの再会もどこかぎこちなく、なんでこんな設定にしたのだろうと微妙な心持ちに。
また、10人が人種・性別・年齢など見事に配慮されたラインナップで、さらにLGBT (ゲイ) のキャラ、聴覚障害のあるキャラ、トラウマ (記憶障害) から時々我を忘れて味方を攻撃してしまうキャラなどもいて、ポリコレとしては完璧な布陣。ただし、ゲイ (ファストス) のパートナーがアラブ人男性だったので、中東諸国からは反発を受けているそう。
さらに、セルシ (ジェンマ・チャン、中国系イギリス人) が急にビデオカメラを向けられ自己紹介をしろと言われた際、自分の能力をうまく説明できずしどろもどろになってしまったり、リーダーを引き継いだことに戸惑いを覚えるなど、非白人の女性が社会的抑圧により自己肯定感が低くなってしまうという、社会的弱者を取り巻く問題も入れ込んでいるのかなと。普通の映画ならアッパレですが、マーベルでは・・・。
エターナルズが戦う敵も、ディヴィアンツといういわばライオンの化け物のような形をしたCGキャラ。これが何体も出てきますが、形状も攻撃もほぼ同じで、エターナルズ最強と言われるイカリスのビームでもなかなか倒せません。敵キャラに個性がないので感情移入する余地がなく、またモブキャラっぽいのにしぶとい。
つまり、アクションシーンがとにかくダレるし、伝説の神々クラスであるエターナルズの強さも伝わってきません。戦いの女神 (戦士) であるセナ (アンジェリーナ・ジョリー) の動きもいまひとつキレが悪いし、あらゆる生命のヒーリング (傷を治癒する) 能力の持ち主であるエイジャック (サルマ・ハエック) が死んでしまうってどういうこと?
そしてこの映画、内容をひと言で言うと、壮大なる内輪もめ。ディヴィアンツはモブキャラらしくクライマックスではもう登場しません。実は真の敵は、というお話なのですが、正直なところあまり敵味方がはっきりしていません。イカリスが最後にとった行動も、「なぜあんなことを?」とよくわかりませんでした。
セルシとファストスは人間のパートナーがいるので地球人に肩入れする理由はわかりますが、他のキャラは人間に愛想を尽かしている者 (ドルイグ) もいます。今後どうなっていくんだろう。本作は156分という長尺ですが、まだまだ時間が足りなかった印象。映像はきれいなのでいつまででも観ていられる感じでしたが、観終わって拍手喝采とはなりませんでした。続編があるようなので、そちらに期待です。