アチェにて想う
2015年11月、大きなイベントがあってアチェに二度行ってきました。2004年12月26日の津波で、1500人中1230人が犠牲になった村があります。
当時から村長を続けている男性に話を聞くと、彼自身はその日の朝、沖合に漁に出かけていたため助かったのだそうです。日曜日の朝8時、家にいたのは女性と子供がほとんどでした。
残したくも、残されたくもないなあ。アチェの青空が目に染みました。
アチェ女性の服装
アチェにはこんな立て看板が。女性は身体のラインが目立つような服装は避けましょう。
アチェコーヒー
アチェコーヒー独特の淹れ方。ワイルドですね。出来上がったコーヒーはやけに美味しかった。
アチェグルメ1
アチェで食べてきたもの。写真の順にご説明。
①ミー・アチェ・ゴレン (Hermes Palace Hotel)
ひと口食べるや鮮烈なスパイスの香りが脳天を突き抜けます。カレーとはまた違った重層的な香り。いったい何種類のスパイスを使っているんだろう。味よし香り良し。バンダアチェにはもう1軒有名なお店がありますが (Mie Razali)、自分はHermesが好きです。
②ミー・アチェ・ルブス (Hermes Palace Hotel)
ゴレンは炒める、ルブスはつゆだく。どちらかひとつ選べと言われたら本当に悩みます。それにしても、ミー・アチェはなぜこうも美味しいのか。一説によれば、使用するスパイス (ハーブ) のひとつが大麻のような習慣性のあるもので、それ故みんな虜になってしまうのだとか。
アチェでは昔から調理用に使われてきたハーブなのですが、1980年代頃から、このハーブをタバコにして吸うと効くという噂が外国人サーファーの間で広まり、そして実際に効いたようで、そのうち政府も取り締まりをするようになり、今ではそのハーブの栽培と使用は禁止されているのだそうです。
なので、美味しいミーアチェを出すお店は、お決まりのように人々から「例のハーブを使っているんだろう」と郷愁を込めて勘ぐられたりするわけです。あ、ルブスには白飯も一緒に頼んでください。残ったおつゆにご飯を入れて食べると最高です。
③サメ
アチェ料理と銘打たれたお店に行くと、パダン料理と同じで小皿に盛ったおかずが次々とテーブルに運ばれてきます。好きなものだけ手を付け、精算は食べたお皿の分だけ。そんなお皿の中に、サメの煮込み (カレー味) がありました。おそるおそる食べましたが、白身でさっぱりしていてとっても美味しかったです。
④貝
上記と同じくアチェスタイルのお店で。ムール貝っぽかったです。粒は大きいのと小さいのと混じっちゃっていますが、さすがに新鮮で臭みもなく、安心して食べられる味でした。これもカレー味。
⑤なんかパサパサして妙な食べ物
アチェ料理のお店で、写真のように小皿がたくさんテーブルに並べられました。葉っぱで細く巻かれた4本のやつ。グリーンカレーのような味がついていましたが、すごくパサパサしていて、コナッツの搾りかすのようでした (ちゃんと食べたことはないですが)。あるいは掃除機の底に残ったホコリみたいな (いや食べたことないです)。それくらいパッサパサでした。味は悪くないんですが、正体不明なので最後まで疑問符がつきまくりでした。
⑥パパイヤの花サラダ (ブンガ・パパイヤ)
パパイヤの花 (つぼみ) のほろ苦さが後を引く。インドネシア各地にありますが、これは苦さほどほどで美味しかったです。
⑦カリー・カンビン
アチェ料理で何を食べるべきかと地元人に聞いたところ、カリー・カンビン (直訳=ヤギカレー) はぜひと言われ、Hasan 3 (Tiga) というお店で食べました。スパイスが特別で、地元っ子に大人気なのだそうです。こちらにもご禁制のハーブが使われているともっぱらの噂。まあでも正直ミーアチェの完璧な美味しさにくらべたら、こちらはいまいちピンと来ませんでした。お肉もいろんな部位が入っていて、それがまた美味しさの秘訣なんでしょうけれど、けっこうグロい見た目のものも。
⑧アヤム・ゴレン
インドネシア風フライドチキン。いたるところで食べられますが、アチェのHasan 3のスペシャルアヤムゴレンは、ちょっと今まで食べたことのない美味しさでした。ていうか普通のアヤムゴレンはだいたいどこも火を通し過ぎでパサパサもいいところなのですが、これのように外はパリッ、中はジューシー、お肉にも十分下味がついていて、というのは初めてでした。これはまた食べたい。
⑨アチェコーヒー
こんな雑な淹れ方でも美味しい。いや、この淹れ方だからこそ美味しいのかも。一日外回りをして疲れきった後の一杯だったので、殊更美味しかった。
⑩ドドル
固めの羊羹といったインドネシアのお菓子。ドリアン味、カカオ味を購入。一緒にいた人がジャックフルーツ味を買っていたのでそちらとも交換。まあモッサリしたお菓子ですが、甘くて懐かしい味です。他にもショウガ味とかありました。
アチェグルメ2
ほぼ1年ぶり、久しぶりにアチェに行って、今回もいろいろ美味しいものを食べてきました。 (仕事の合間にです!)
①ミーアチェ
ご存知 Hermes Hotel のミーアチェ(エビ)。非の打ち所がありません。いつ食べても美味しい。言ってみればカレーラーメン(焼きそば)ですが、スパイスが香り高く、海老の出汁も効いていて、モチモチ麺と素晴らしいマッチング。インドカレーと日本のカレーのいいとこ取りって感じ。
地元の一番人気店 Mie Razali。前回はゴレン(焼きそば)を食べましたが、今回はお店もおすすめのルブス(汁そば)を。十分スパイシーですがゴレンよりマイルドに感じられて、思わず最後の一滴まで汁を飲んでしまいました。さすが、ジョコウィ大統領も舌鼓をうったお店です。
ホテルの横にあった小さな屋台のミーアチェ。こんなところでも美味しいのかなと、ダメ元で挑戦。結果は、やっぱりちょっと・・・。とにかく激辛、スパイスが単調、麺もやわやわな中華麺(エッグヌードル)と、いいとこなしでした。
②アヤム・タンカップ (Ayam Tangkap)
アチェ風のアヤム・ゴレン(フライドチキン)は、素揚げされたカレーリーフやパンダンリーフ(パンダナス)の緑が目にも鮮やかな一品です。お肉にもよく下味がついていて、外はパリッ、中はジューシー。もちろん緑の葉っぱもいただきます。サクサクッと軽い食感でほのかなハーブの香りが口の中をリフレッシュしてくれます。
③スィールボー (Sie Reuboh=Daging Rebus)
アチェブサールの郷土料理。お肉のシチューですが、とにかく酸っぱい。お肉もスープも。なぜならお酢を入れるから。この料理、作ってからなんと1ヶ月、いやそれ以上ももつんだそうです。恐るべし、お酢。また味がいいんです。大好きになりました。
④雷魚の頭のカレー
さらににこんなものも食べました。雷魚はクセのない白身でカレーとも相性抜群。
⑤バナナの花のカレー
バナナの花(つぼみ)のカレーはシャキシャキした食感でなかなかいけました。
ミーアチェ、第三のお店
バンダアチェに行くと必ずミーアチェを食べます。好きなのはHermes Palace Hotelのものと、Mie Razali。
この2店で十分満足なのですが、今回ふと、タクシー運転手に美味しいミーアチェの店はないかとたずねたところ、Mie Aceh Simpang Limaというお店に連れて行ってくれました。
創業1961年、半世紀以上も地元で愛されてきたミーアチェは、たしかに納得の美味しさでした。何より、新鮮プリプリのカニが丸ごと乗ったMie Aceh Kepitingが300円と格安。ジャカルタの半額です。
ゴレン (汁なし)、ルブス (汁あり)、両方とも好きですが、Hermes Palace=ゴレン、Mie Razali=ルブス、Simpang Lima=ルブス、が美味しいような気がします。
アチェでイベント準備
1年ぶりのイベント準備に追われる最中、アチェ津波博物館のスタッフが買ってきてくれたお弁当で憩いのひと時。久しぶりに手で食べるご飯は、「美味しい」に加え「楽しい」気持ちにも。夜はSimpang Limaのミーアチェ (今日はイカ)。
世界津波の日 in アチェ
2016年11月、アチェで「世界津波の日」のイベントが行われました。防災教育講話、津波紙芝居、高校生防災アクションプラン、津波サインボード設置、避難訓練、防災ポスターコンクール、被災者の語り、総括セミナー等々、それはそれは熱い3日間でした。
郷土料理はその土地で
①ミーアチェ (今回もたくさん食べました!)
Simpang Lima (カニ)
Hermes Hotel (エビ)
Mie Razali (エビ) *テイクアウト
Pade Hotel (牛)
②アヤム・タンカップ (最近のお気に入り!)
Delima Baru
Hasan 3 (Tiga)
アチェのドリアン
12月に入り、アチェはドリアンの季節でした。露店のおじさんが選んでくれたピディ産のドリアンは、たっぷりの甘さにほんの少し苦味が加わった、大人味のドリアンでした。30,000Rp (240円)。おじさん、グッジョブ。一粒一粒の果肉も大きく、小ぶりなのに1個でお腹いっぱいになりました。
自分史上最高ドリアン
アチェで食べたオレンジ色のドリアン。こんな色のものは初めてです。ひとつつまんで口に入れると、ねっとり濃厚なクリーミーさとほどよい甘さに加え、まるでブランデー入りのような芳しい香りと上品な苦味が口の中に広がりました。この瞬間、「自分史上最高ドリアン」に認定。
「世の中興奮することっていっぱいあるけど、一番興奮するのはうまいドリアンを食べる時だよね 」
「間違いないね」
きつい任務でしたが合間にこうして美味しいものを食べられて英気を養いました。
ミーアチェの頼み方
ミーアチェを注文する時、次の3種類を試してみましょう。自分の好みが見つかるばす。(写真はどれもHermes Hotel)
ゴレン (Goreng) = Fried (焼き)
バサ (basah) = Wet (焼き、汁ダク)
ルブス (Rebus) = Boiled (茹で)
自分が一番好きなのは、ゴレンだけれどソースが少し多めのやつ。Hermes Hotel がマイベスト。
アチェのヒツジカレー
中東のヒツジは美味しいと書きましたが、アチェもなかなか美味しいです。何世紀も前からアラブ商人との交易があって、向こうの料理文化が伝わっていたのでしょう。インドの影響もありそうです。
アチェの大学の先生たちと地震被害調査でピディジャヤを訪れたとき、何の変哲もない路上のお店で食べたヒツジカレーがとても美味しかったです。パンチのあるスパイスの香り、モチモチ食感と噛めば噛むほど味のでるお肉。ああ、これこれ、だからヒツジはやめられない。
店主に「美味しいですね!」と言うと、満面の笑みで大鍋の中からヒツジの頭を取り出して見せてくれました。いや、、けっこうグロい、、それはあんまり見たくなかったかも。。
自然災害大国
2015年は森林火災 (南スマトラ州)、2016年は地震 (アチェ州)。緊急援助が少しでも役に立ったことを願う。
■南スマトラ
■アチェ
悪魔の名前
映画「The Conjuring 2 (死霊館・エンフィールド事件)」を観ました。1も怖かったですが、2も相当なもの。スナヤンシティーの映画館も終始インドネシア人の悲鳴で騒がしかったです。ネタバレになってしまいますが、最後はとり憑いた悪魔の名前を明らかにすることによって、ついに悪魔との戦いに勝つことができました。
なぜ名前を呼ぶと悪魔が退散してしまうのか。それは、名前を知らないものはこの世に存在しないのと同じだからです。いないものは退治できません。本当の名前を呼ぶことによってその存在が特定され、人は始めて悪魔と対峙することができます。そうなれば悪魔など弱いもの。
映画館を出るとき、ふと、TSUNAMI (津波) が国際語になっていることを思い出しました。2004年のインド洋津波で未曾有の被害を出したアチェでは、人々が津波というものを知らなかったそうです。なぜ知らなかったのか。それは、津波を意味する単語がなかったからです。
アチェからほど近いシムル島も津波に襲われましたが、この島では犠牲者はほぼいませんでした。100年前の大津波(現地語でスモン)で島が壊滅状態になったことが、田植え歌などで現代まで伝承されていたため、シムル島の人々は大地震の次に来るであろう津波のことを知っていて、みんな高台に逃げることができました。シムル島では悪魔(津波)に名前があったのです。
その後、日本語であるツナミが世界に広まりました。これはとても良いことです。ただ、実はインドネシアにも、各地に津波を表す単語は昔からあったようだと、最近聞きました。単語としてはあっても、人々の脳裏から忘れられていたのかもしれません。Smong、Galoro、Ie Beuna、Hilangnya Negeri Elpaputih、Gergasi Dari Laut、Wor、Ae Mesinuka Tanalala。(←ちょっと自信ないですけど)
災害から身を守るためには、まず災害そのものを知らなければ始まりません。でもそれは、津波発生のメカニズムとかそんな難しい話ではなく、津波という単語を知っている、ただそれだけでも、少なからぬ効果があります。アチェでも津波という単語が生きた言葉として残っていたら・・・。今さらながら残念に思います。
【注】実際にはアチェにも古くから「Ie Beuna=イブナー」という津波を表す単語があったそうですが、人々に継承されていなかったようです。
アチェの空は青かった
2017年7月、急遽アチェに行ってきました。もうアチェに行くこともないだろうと思いながら、数日前にミーアチェをジャカルタで食べたばかりでしたが、まさかまた本場でミーアチェが食べられるとは。Mie Razaliの汁多めゴレンはやはり最高に美味しかったです。
去年12月は改装工事の真っ最中だったバイトゥッラフマーン・グラントモスクもようやく完成し、市民の憩いの場になっていました。目に染みるほど真っ青な空の下、純白に輝いていたモスクが目に焼き付いて離れません。