ワット・チャイヤティット (Wat Chaiyathit) の起源は文献などには残されていませんが、アユタヤ朝後期に建てられラタナコーシン朝 (バンコク朝) 初期にかけて修繕され現在の形になったと考えられています。お堂内部の壁画は当時の姿を残しており、近くにあるワット・スワンナーラーム (→コチラ) とともに大変貴重なものとなっています。
ラーマ4世の時代になると近代化政策の影響から寺院壁画にも変化が現れます。仏教一辺倒ではなく、近代的な産業 (鉄道や海を行く帆船など) を得た人々の新しい生活様式が、西洋絵画に似た遠近法によって描かれたりします。しかしワット・チャイヤティットの画は古典的な手法そのもの。
本尊の背景にはトライプーム (三界経:上座仏教的宇宙観) が描かれ、対面の壁には釈迦の修行中にこれをたぶらかそうとする悪魔の王マーラの軍勢と、釈迦を守るため髪の毛をふりしぼって洪水を起こそうとする地母神ダラニが描かれています。未だ色鮮やかでかつ迫力満点。見ごたえのある壁画でした。