「アンニョン!君の名は (Hello Stranger)」は2010年のタイのロマンチックコメディ映画です。モラハラ彼氏の束縛を逃れ一人韓国に来た女性と、彼女にふられなりゆきで韓国行きの飛行機に乗った男性が、旅先で偶然出会い、お互いの名前も知らないまま恋に落ちる物語。ほぼ全編韓国ロケで、旅行気分も味わえます。
性格に難のあるクズ男 (ダーン/仮名) とメンタルに難のあるイタ女 (メイ/仮名) のやりとりには、正直イライラがつのりました。あえてお互い本名を明かさず、だからこそずけずけ本音を言い合おうという設定は、後で伏線として効いてくるのですが。
出会いにも無理があるし、コメディパートも微妙に韓国を小馬鹿にした笑いで、舞台がタイならまだしも、外国でこれをやってしまうとあまり笑えないし、なかなか二人に感情移入もできませんでした。
ようやく映画に引き込まれたのは1時間半を超えたあたり、二人が本音をぶつけ合うシーンからでした。そうして一度は結ばれますが、タイ映画はここから一旦関係が破綻して、ラストにどんでん返しで明るい希望を感じさせるエンディング、というパターンが多いので、どうやって二人を別れさすんだろうと思っていたら、そこはすごく上手かった。
二人旅の途中、彼女にふられ電話にも出てもらえない状況に落ち込むダーンに、メイは自分が好きなラジオ番組の恋愛相談コーナーを再現して、悩みを話すよううながします。原因は、ダーンが8年付き合った彼女から結婚を求められ、拒否したことでした。
結婚しなくても愛情はあると言うダーンを、彼女は理解できず喧嘩別れしてしまいましたが、今ダーンはあらためて結婚を申し込みたいと考えていました。メイは電話がダメならハガキを送ればいいと言い、翌日ダーンは「結婚してください」とひと言書いたポストカードをタイに送るのでした。
しかし偶然会ったタイの知人から、彼女が結婚することになったと聞き、自暴自棄になるダーン。旅の途中でメイも彼氏と別れていたので、そんな二人がようやく心を通わせ結ばれたわけですが、タイに戻る当日、ホテルを出た二人の目の前に、突然ダーンの彼女が現れました。ホテルのポストカードを使ったため、彼女はそれを頼りに韓国に来たのでした。
「結婚するって聞いたけど・・?」 おそるおそるダーンがたずねると、「私が結婚する人は一人しかいない、私が本当に愛している人」 そう笑顔で答える彼女を、ダーンはおずおずと抱きしめました。一人で先にタクシーに乗り込み、車中で大粒の涙を流すメイ。
これは辛い。切なさマックスです。それにしてもダーン、ぜんぜん女心がわかっていなかった。映画のラストは1年後、メイがカーラジオでいつもの恋愛相談コーナーを聞いていると、そこに流れてきたのはダーンの電話相談でした。
去年、韓国でたった数日間一緒に旅をした女性のことが1年たっても忘れられないと話すダーンの声を聞き、メイは涙があふれそうになりました。なぜもう一度会わないのかDJがたずねると、名前も知らないことを伝えるダーン。今後手助けできるかもしれないから本名を教えてくれと言うDJに、ダーンが「ぼくの名前は・・・」と答えかけているところで終劇。
うまい!最後はすごく面白かったです。この先を想像すると、メイがラジオ局に名乗り出て二人は無事再会、そして真のハッピーエンド。
ただ、クズ男のダーンのことですから、彼女との結婚話を断りきれず、実は結婚しているけれど未だにメイのことが忘れられないとうだうだ言っている可能性がなきにしもあらず。メイと再会できたら離婚しよーとかね。