乙な味 (おつなあじ) や臭旨い (くさうまい) とは、一口目で誰もが美味しいと感じる味ではないものの、経験を積むほど魅力が分かる味のことを言います。
人間は苦味や発酵臭を本能的に警戒しますが、「安全である」という経験を重ねると、それが逆に複雑な旨味として感じられるようになるわけです。
日本だと納豆 (粘り・アンモニア様の香り)、くさや (強烈な発酵臭)、塩辛 (生臭さ)、鮒寿司 (乳酸発酵臭) など、日本人でも好き嫌いが分かれるものがたくさん。
自分は納豆・くさや・塩辛・鮒寿司はどれも好きです。どれだけクセがすごいのだろうと、むしろ激臭を期待して食べた鮒寿司も、わりと普通に美味しくいただきました。

鮒寿司に関しては、タイで「なれずし」のルーツとも言われる「プラーソム」を初めに食べていたため、琵琶湖で買った鮒寿司は至極上品な味わいに感じました。

外国にも臭旨グルメはたくさんあります。スウェーデンの「世界一臭い」と言われる発酵ニシン缶詰「シュールストレミング」もいつか食べてみたいもののひとつです。
ウォッシュタイプのチーズは、昔フランスに旅行したグルメの友人が「ポン・レヴェック (Pont-l'Eveque)」をお土産に買ってきてくれました。
当時は自分も臭旨ビギナーだったので、ただただ臭いだけ (おじさんの足の裏の臭い・・) としか思えず、ずっと冷蔵庫に眠らせてしまった記憶があります。
その後経験を積み、今ではウォッシュ・白カビ・青カビと、チーズなら何でも美味しくいただいています。とくにモン・ドールは最高 (元々ウォッシュにしてはクセ弱め)。

エジプトのギブナ・アディーマ (オールドチーズ/チーズの壺漬け) は今なら食べられるかな。カイロの職場で朝スタッフがパンにつけてよく食べていて、ツンとくる臭いが強烈でした。
エチオピア料理は何か臭かったかな。いや、とくに思い出せない。インジェラを臭いという人もたまにいますが、ほとんどは酸味のあるいい感じのにおいですよ。見た目はボロ雑巾ですが、においや味までそうというわけではありません。自分は好き。

大洋州もとくに臭いの強い食べ物はありませんでした。中央アジアのウズベキスタンもそう。クルト (乾燥ヨーグルト玉) はほぼチーズ臭、自分は好きなにおいでした。

やはり東南アジアですね。自分にとってはインドネシア、タイ、ベトナム。でも、臭いとされる臭豆腐もサトー豆もピータンも、言われるほどには臭くなかったのが正直なところ (写真はどれもタイ)。
■臭豆腐 (揚げ物)
■サトー豆
■ピータン
思わず「臭ッ!」と声が出そうなのは、やはり魚醤でしょうか。ケチャップイカン (インドネシア)、ナンプラー (タイ)、ヌクマム (ベトナム) と各国にあります。日本はしょっつる。
魚醤のにおいは慣れの問題で、食べつけるともう食欲をそそられる香りにしか感じません。日本の醤油も美味しいですが、魚醤はまた別の旨味があります。
ナンプラーは透明な上澄み液より底の方に沈殿している濃いやつの方が断然旨味が強く、その分クセはありますが、慣れたら間違いなくハマってしまう美味しさです。
タイ東北部 (イサーン) ではナンプラーより濃厚なプラーラー (パラー) が使われます。塩蔵サワガニ (プー) 入りのソムタムプーパラーは、バンコクで一般的な甘酸っぱいソムタムタイ (ナンプラー使用) とは打って変わってひとクセある味わいでした。

イサーンの素麺サラダ「タムスア (ソムタムスア)」はプラーラーを使うのが基本。自分は最初知らずに食べて、その独特の発酵臭に違和感しかありませんでしたが、何度か食べるうちに舌と鼻も馴染み、次第に美味しいと感じるようになりました。

インドネシアもタイも、市場ではよく大鍋で魚介系発酵調味料が売られていました。遠くから嗅ぐといいにおいですが、この量に近づくとさすがに濃厚すぎて鼻がツーンとしたものです。

カオクルックガピは塩漬け発酵エビ調味料 (ガピ) を使ったタイの炒飯。これもよく臭いと言われますが、別にそんなこともなく、普通に美味しかったです。

「臭いベトナム料理」で検索すると必ず出てくる「マムトム」も、においは強いですが臭い (くさい) とは思いません。自分は「魚介発酵臭=旨味」と脳が変換するようです。
マムトムはベトナムの伝統的なエビ発酵調味料です。マムトムを味わいたいならブンダウマムトムがいいでしょう。専門店もたくさんあります。
かなりしょっぱいので、少量の油と砂糖、ライムの絞り汁を入れ、泡立つまで撹拌したら、ブンや具材につけていただきます。


「フルーツの王様」と称賛される一方、「腐ったタマネギ」「ガス漏れ」などと揶揄されるドリアンは、自分にとってはもう甘くていい匂いにしか感じられないので、詳細割愛。

もっともっと臭旨いものが食べたいと思う今日この頃。乳酸発酵臭・魚介発酵臭ならたぶんどれだけ臭くても大丈夫。アンモニア臭は厳しいけれどなんとかなりそう。
実は自分がもっともに苦手なにおいで、今後も口にする気は一切ないのが沢庵。これだけは昔から本当にダメで、改善の見込みはまったくありません。