ベトナム料理の特徴
ひと月ほど毎日のようにベトナム料理を食べてきて、なんとなくわかったこと。ベトナム料理の特徴を端的に言うと、香り・食感・温冷のバランスを、食べる人自身が完成させる料理文化だと思いました。
日本料理は「完成品をそのまま味わう」傾向がありますが、ベトナム料理はむしろ、ハーブを追加する・葉で包む・タレを調整する・混ぜる・卓上で組み立てることで、「自分の一皿」を作るのが本質なんだなと。
■香りの文化
タイ料理と違って、ベトナム料理では最初から辛いものにはまだ出会っていません。卓上に生チリ・チリパウダーはありますが、ベトナム料理は辛さよりも香りを重視することを実感しました (もしかしたらハノイの地域性もあるのかもしれません)。
ミント・タイバジル・紫蘇・ノコギリコリアンダーなどの香草類が、麺でも焼き物でもお粥でも、たいていバスケットに山盛りでついてきます。ハーブは調理中に加えるのではなく、生ハーブを後から (食べる人が) 加えるのが重要という考え方です。

■温+冷
例えば揚げ物・焼き肉・熱々スープに対して、生野菜・生ハーブ・青いバナナ・青パパイヤなどを合わせます。温度も食感も真逆のものを一緒に食べるのも、ベトナム料理の特徴、いやむしろ核かもしれません。写真はブンチャー。

■食感のコントラスト
ベトナム料理は味だけでなく「食感の層」が非常に多いです。パリパリ・もちもち・シャキシャキ・ぷるぷる・しっとりなど多彩な食感が一皿に共存しています。写真のバインクオン (米粉クレープのひき肉キクラゲ包み) はその好例。

■「包む」文化
タイもインドネシアも「手で食べる」文化があり、タイでは「包んで食べる」料理もいくつかありましたが、ベトナムほどではなかったです。ハノイでは短期間にそうした食べ方を何度も経験しました。(写真:タイのミヤンカム)

ベトナム料理には、葉で包んだりライスペーパーで巻き、手で持って食べる料理が多いです。その筆頭は日本でもよく知られたゴイクオン (生春巻き) かと思いますが、これは単なる食べ方ではなく、「香りと食感を口の中で組み立てる行為」とも言えます。

以上を踏まえ、そんなベトナム料理の真髄とも言える料理が「バインセオ」だなと気づいたので、以下、その実食体験を。
ベトナム風お好み焼きバインセオ
自分がベトナムに来る前から食べたことがあった、数少ないベトナム料理「バインセオ (Bánh xèo)」。
日本でベトナム風お好み焼き、西欧でベトナム風クレープなどと呼ばれるベトナム南部の粉物料理です。
溶いた米粉を焼き、具を後から挟みます。名前は熱した鉄板やフライパンに生地を注いだときの擬音 (セオ xèo=ジュージュー) からだそう。
日本を出る前に予習として食べてきましたが、ベトナムで食べたものとくらべると、本体の味は遜色ありませんでしたが、全体のコンセプトが少し異なりました。
ベトナムのバインセオは、もはや単体で食べるものではありません。そこにはベトナム料理の「らしさ」が凝縮されていました。
焼き立て熱々の香ばしくややオイリーなバインセオに、ひやんり冷たい生野菜・生ハーブを合わせ油っこさ・しつこさ・熱さを緩和、ライスペーパーで包み手で持って食べる準備が整い、最後にヌクマム系のタレをつけて味を調整、口に入れ咀嚼し完成。
さて、訪れたのは Bánh Xèo Tôn Đức Thắng (Map)。ここも入口が狭くて最初素通りしてしまいました。ハノイはこういうお店が多い。でも中は案外広かったです。


オーダーはバインセオスペシャル (全部のせ)、レタスとハーブが山盛りついて38,000ドン (228円)。値段が値段なので小さめを予想していたら、全然そんなことなかったです。

あとは海老入りのタピオカ蒸し餃子バインボッロク (7,000ドン✕3個=21,000ドン/126円)。テーブルの上が一気ににぎやかに。

店員さんが食べ方の例としてひとつ巻いてくれました。ライスペーパーをしっかり巻くのがコツかも。それにしても、手で食べるのって楽しいですね。
食べる手順は次のとおり。
①ライスペーパー (半切り) を広げる
②葉物野菜とハーブをのせる
③小さく切ったバインセオをのせる
④ライスペーパーでくるくる巻く
⑤甘酸っぱいタレをつけていただく

米粉の生地を多めの油でよく焼くので、食感はカリカリ。ライスペーパー、レタスとハーブ、バインセオと、3つの食感が重なって美味しさも倍増でした。
生地の心地よい食感と適度な油っこさから、野菜とハーブがどんどん進み、バスケットはほぼ空にしてしまいました。久しぶりにハーブを大量摂取。ああ美味しかった。
中は17~18人入れる部屋でしたが、食べているうちにほぼ満席になりました。帰り際もどんどんバインセオを焼いていましたよ。満足、満足。
