A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

イスラム世界の美女観

世界三大美女のひとりとしてもその名を馳せる平安時代前期 (9世紀頃) の女流歌人・小野小町 (おののこまち)。

彼女の忌日は3月18日 (生没年不明) との言い伝えがあることにちなんで、3月18日は小町忌とされています。

小野小町は絶世の美女として「七小町」など数々の逸話があり、後世に能や浄瑠璃などの題材としても使われました。

ただし、当時の小野小町像とされる絵や彫像は現存せず、後世に描かれた絵でも後姿が大半を占め、素顔が描かれていないことが多いそう。

いわゆる「世界三大美女」(クレオパトラ・楊貴妃・小野小町) も、実は容姿だけではなく、才色兼備 (知性や政治力・芸術家) であったことからあげられたのだとか。

例えば20世紀、または21世紀における世界三大美女をあげろと言われたら、それこそ地域性や年代によって千差万別・喧々諤々でしょうね。

イスラム世界の美女観

イスラム世界の美女観は、いわゆる "顔立ちランキング” のようなものではなく、宗教・詩・宮廷文化が混ざった独特の美意識として発展してきました。

基本思想
イスラム文化では美は大きく2つに分かれます。それは外面的美 (jamāl)=顔立ち・身体・声など、そして内面的美 (ḥusn/akhlāq)=徳・信仰・品格です。

さらに、内面の美が外見より上位という価値観。これは預言者ムハンマドの教えにも基づき、神は外見ではなく心と行いを見るという考え方が強く影響しています。

理想の女性像
ハディージャ (預言者の最初の妻)
 知性・誠実さ・経済力を兼ね備えた女性
 ⇒「人格の美」の象徴

ファーティマ (預言者の末娘)
 慎ましさ・信仰・家族愛の象徴
 ⇒理想的な女性像として非常に尊敬される

文学・詩における美女
一方で、現実の文化では「官能的な美」も豊かに表現されています。特に古典のペルシア詩やアラブ詩には顕著で、典型的な美女の描写は次のとおり。

・大きく黒い瞳
・長く黒い髪
・白い肌
・細い体としなやかさ
・張りのある腰回り
・芳しい香り

黒い髪・黒い目・白い肌のコントラストがキーポイントで、ゆえにこれらを兼ね備えた日本人など東アジア人は、中東ではかなりモテモテ。

と、言いたいところですが、実際には日本人は華奢すぎて (@中東基準)、貧相に見られることの方が多いかも。

現代イスラム世界の美女観
価値観が多様化し、世界のトレンドが一瞬で伝わる現代世界においては、イスラム圏の美女観も地域・年代によって様々です。

トルコ・レバノンなどは西洋的美 (モデル体型) が人気、アラビア湾岸諸国は伝統+ラグジュアリー (目元重視)、イランは美容意識が非常に高く整形も多いそう。

共通点としては、目の美しさの重要性が今でも非常に高いこと。サウジアラビアなど湾岸諸国では今も女性は外出時に髪と顔をベールで隠していて、外から見えるのはたいてい目だけ。

そんな女性とすれ違う男性たちは、一瞬の間に彼女の目の美しさを網膜に焼き付けるわけです。なかなかの達人技ですね。(いや、全男性がそうしているわけではないですが)

ひとつ、千夜一夜物語の「優しき友とアリ・ヌゥルの物語」より、詩人が称えた優しき友 (アニス・アル・ジャリス) の美しさを。

その肌は絹のように柔らかく、
話すや水の如くなよやかに、
声は澄み安らぎに満てり。
その眼こそ、アッラーの神が
「かくあれかし」と言えるが如かりき。
まことに神の創りし業なりき。
その伏せし眼差しの人の心をかき乱すこと、
酒も酵母も及ばず。
おお、彼女を愛するということは。
夜深く彼女を想えば、
我が心乱れ、我が身は燃ゆ。
我はかのぬばたまのみどりなす髪を想い、
暁のように輝く額、
朝をひらくものを想うなり。