A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

タヌキは死んだふりをする

先週、村の用事で川向こうのお宅に集金にうかがった時のこと。その家は防犯のため庭に大型犬が放し飼いされていて、犬が庭から出て行かないよう、柵が設けられていました。

柵の前から家の中を見ると、家主さんの後ろ姿が見えました。距離にしておよそ5メートル、キッチンに立って夕飯の支度をしているようです。

年配の方ゆえ、できるだけ大きな声で呼びかけました。しばしの間トライしましたが、全然ふり向いてくれません。あれ?おかしいなと、こんどは電話をかけてみました。

二度三度電話をかけても、一向に出てくれません。うーん、困った。さらに2~3分、呼びかけを続けましたが、埒が明かないので、柵を越えて中に入ることに。

ただし問題が。さっきからずっとワンコがこちらを見ています。番犬とは言いながらめちゃめちゃフレンドリーで、吠える様子もなくこちらを見上げてハアハアとした息遣い。もう外にたくてしょうがないといった様子でした。

ワンコを柵の根元の方におびき寄せてから、すかさず柵を開けて中に入りたかったのですが、これがもう全然うまくいきません。こちらが場所を左右に移動すると、嬉しそうに追ってきます。

仕方なく、柵を開けワンコの脱出を足で阻止しつつ、自分はスルリと中に入る、、、予定だったのですが、一瞬の隙をつかれて、ワンコは勢いよく外に駆け出してしまいました。。。

集金はあきらめて、まずはワンコを追いかけ村をウロウロと20分ほど一緒に歩きました。ワンコは先を歩きながら、時々こちらをふり返ります。「よし、ついて来てるな」と確認が取れると、またどんどん歩いていってしまいました。ワンコは得てしてこうですよね。。。

何度か抱っこできる距離に追い詰めましたが、大人の秋田犬といったサイズ感のワンコでしたから、やはり手ぶらで捕まえる (抱き上げる) のは無理でした。なので一度家に戻り、首輪とリードを手にしてふたたびワンコを捜索。

飼い主さんとは話ができて、「遊び飽きたら勝手に帰ってくるからもういいよ」と言ってもらいましたが、日が暮れて暗くなってきたのもあり、心配になって近辺をもう少し歩いてみました。

すると、「ワン!ワン!」と激しい鳴き声が、すぐそこの畑から聞こえてきました。さらに「ギャッ!ギャッ!」という悲痛な鳴き声も。

急いで見に行くと、そこには朽ちかけた小さなグリーンハウスがあり、中でワンコとタヌキが激しい攻防を繰り広げていました。吠えてコーナーに追い詰めるワンコ、噛まれるものかと強烈な威嚇を続けるタヌキ。

2匹とも興奮状態で、自分が間に入って事を収めるなんて絶対に無理だと、すぐにわかるほどの迫力でした。その攻防は10分以上続き、こちらは何もできずただオロオロするばかり。

しばらくすると、ワンコが完全にガップリ行ったようで、タヌキも断末魔の悲鳴をあげていました。ほどなくタヌキは声をあげなくなり、その場にゴリゴリと骨を噛み砕くような不気味な音が響きました。

自分がワンコを逃がしてしまったせいで、タヌキの命が奪われたと考えると、なんとも言えない悲痛な気持ちになりました。本当に申し訳ない。。。

現金なもので、反応がなくなったタヌキにはもう用はないとばかりに、ワンコは涼しい顔でふたたび歩き出しました。今度こそ捕まえねばと、ワンコの正面にまわり首輪をかけようとしましたが、あえなく失敗。

ここでもう自分には無理だと諦め、飼い主さんに一言あやまってから (大丈夫と言ってくれました)、その場を後にしようとしました。

いや、その前に、タヌキの死骸を確認あるいは処分しなければと、もう一度グリーンハウスのところに足を運びました。

すると、そこに横たわっていたはずのタヌキが、忽然と姿を消していました。つまりこれ、さっきタヌキは死んでいなかったのです。死んだふり、いわゆる「狸寝入り」をしていたのでしょう。

ああ良かった。。。かなり重症を負った可能性は高いですが、少なくとも逃げていくことはできたわけです。ほんの少しだけ、罪悪感が軽くなったような気がしました。

ちなみに翌日、そのお宅にもう一度行ってみると、何もなかったような顔でワンコが出迎えてくれました。まあ一件落着ということで。