ウズベキスタンではこの秋ほとんど雨が降らず、今後もしばらく雨が期待できないため、ウズベキスタン・ムスリム委員会は今週11月28日の金曜礼拝後、全国のモスクで「イスティスカー」(増水祈願/雨乞い) を行うよう国民に呼びかけました。
現在、サウジアラビアへのウムラ巡礼に同行しているイマーム (イスラム指導者) にも、聖地マッカとマディーナの二大モスクで巡礼者と一緒に祈りを行うよう求めています。
干ばつのときにイスティスカーの祈りが行われた例が歴史的にも多く、預言者ムハンマドも水不足の際に人々と共に祈りを捧げていたのだそうです。
今回は各人が悔い改めと謙虚な祈りを通じて、恵みの雨を願います。また、地域の中心モスクや巡礼地では家畜が屠られ、その肉は困っている家庭などに配られ予定です。
さらに、イスラム学校の教師と学生たちは、金曜礼拝までにイマーム・ブハーリーの「サヒーフ・アル=ブハーリー」を全て読み終える予定とのこと。
これは、干ばつのときにこの書物を読むと雨が降ったという言い伝えがあるためだそうです。以上、ウズベキスタン現地紙 KUN.UZ より抜粋。

* * *
■増水祈願 (istisqa/صلاة الاستسقاء)
イスラム期エジプトでは、ナイル川の水位が下がると農作物の収穫に大きな影響が出て物価が上がり、民衆の不安や暴動につながったため、スルタンたちは「増水祈願 (イスティスカー)」という儀式を行いました。
この儀式はカイロ近郊のローダ島にあるナイロメーターで、スルタンや高官が参加してコーラン朗読や祈祷を行い、雨と増水をアッラーに祈り求めるもので、合わせて民衆への施しも行われました。
こうした儀式には、王権の正当性を示して民衆をまとめる政治的意味もあり、非イスラム教徒も一定の条件付きで参加できたため、古代エジプト以来の伝統がイスラム時代にも受け継がれていったと考えられています。

* * *
■奇跡 (ムウジザ/معجزة)
イスラム神学では、「奇跡」は神が預言者の真実性を示すために授けた特別な現象、と明確に定義されています。
イスラムが興って以降は、神が民衆の願いを聞き入れ、預言者の介在なくして奇跡を起こしたといった逸話は、自分は知りません。
なので罰当たりを承知で言えば、人々が天に雨乞いをしていったいどれだけの効果が期待できるのか、はなはだ疑問であったりもします。
そうは言っても雨乞いは、世界各地で古の昔から行われてきた儀式のひとつでもあり、人々が心を合わせて神/天に祈る行為は崇高なものです。
ウズベキスタンでなんとか雨が降るよう、自分も日本から祈ってみようと考えています。写真はウズベキスタン南部、カシュカダリヤ州の農地の風景 (7月)。

* * *
■人工降雨@インドネシア
インドネシアでは人工降雨が行われていました。写真の飛行機でヨウ化銀を散布するのだそう。ヨウ化銀の結晶が、雨粒を形成する核となるためです。
これは農業用水を期待してのことではなく、スマトラ島で毎年のように発生する泥炭・森林火災を、降雨の力も借りて早期鎮火させたいという試みのひとつ。
効果はその時々によると聞きましたが、ただ天の恵みを待つのではなく、科学的アプローチも行おうという姿勢には感銘を受けました。

* * *
■人工降雨@タイ
「王立人工降雨計画」(クローンカーン・フォン・ルアン/โครงการฝนหลวง) は、前プミポン国王 (ラーマ9世) によって1969年に始められたプロジェクトです。
農業や発電のための水供給を増やすことを目的としたもので、農業・協同組合省などが主導し、干ばつが深刻な地域や大気汚染がひどい地域で人工降雨を試みています。
2024年には、人工降雨用の航空機30機 (農業航空雨水局の航空機24機とタイ王国空軍のジェット機6機) が動員されました。
タイ政府は、洪水・干ばつ対策の一環として、AI (人工知能) を含む先進技術を活用した長期的な水資源管理も進めています。

* * *
■雨乞い@エチオピア
エチオピアには伝統的な雨乞い (rainmaking) の儀式が複数の民族に存在します。宗教も民族も多様な国なので、地域によってかなり形が違いますが、代表的なものは次のとおり。(※AIによるまとめ)
①アムハラ族
エチオピア正教会には干ばつの時に行う特別祈祷 (Sädlät/祈祷行列) があります。聖職者が聖像 (タボット) を持って巡行聖歌「メヘレト」を歌いながら雨を願い、人々は断食や施しを行います。古代から「教会と共同体による雨乞い」は一般的で、特に高地アムハラでは広く続いています。
②オロモ族
オロモには伝統宗教「ワッカファンナ (Waaqeffannaa)」があり、雨乞いの儀式が現在も残っています。雨乞いの呼称は「Rabbii Rooba」(雨をもたらす神への祈り)、「Ateetee」(女性が中心の祈りの儀礼) など。
儀式の特徴:
・聖樹 (オリーブや大樹) の下に集まる
・長老 (Qaalluu) が祈祷と祝福を行う
・動物の供犠 (ヤギなど)
・聖水をまく、歌と踊りで雨を呼ぶ
③南部諸民族
南部の民族 (コンソ、ハマル、ダサネチなど) には多様な雨乞い儀礼があります。
・コンソ族
乾季が長引くと「雨の長老 (rainmaker)」が登場、供犠を捧げ石碑の前で祈祷、村全体で踊りを行う。
・ハマル族
伝統宗教の司祭 (Kōgōl) が雨を呼ぶ儀式を執行、動物を捧げ特定の丘や聖地で祈願する。
④Rainmaker (雨を呼ぶ者) の存在
エチオピアには地域によって、雨を呼ぶ専門の司祭 (rainmaker) が伝統的に存在します。彼らは特定の家系・長老に限られ、雨乞いは政治的権威でもありました。
* * *
最後に、自分がいた当時のエチオピアの、水にまつわる風景を。ほとんどは、水に困っている人々の姿です。今は少しでも改善していることを願います。



























(最後の写真は屋根から落ちる雨水を受けるため置かれた水瓶です)