日本は気候風土的に古くから農耕 (米) 中心の社会で、牧畜が発達した諸外国のような乳製品文化が根づきませんでした。
日本で発酵食品と言えば味噌・醤油・酒・漬物など植物性が中心。ヨーグルトのようなミルクの発酵食品は日本の伝統食にはありません。
そうは言っても美味しいうえ健康にも良いヨーグルト、今ではすっかり日本人の胃袋に定着しました。自分も毎日のように食べています。
日本でヨーグルトと言えば、それはほとんどカップで売られている製品です。各社から星の数ほど販売されているので、それはもうよりどりみどり。

自分はアロエヨーグルト、牧場の朝、ダノンビオなんかも好きですが、一番買うのは大きいパッケージのプレーンヨーグルト。水切りして濃いめにしてから食べるのが定番。

さて、ふとこんなことを思ったのは、ウズベキスタンでは伝統的にヨーグルトがよく食べられ、また料理にもヨーグルトが付きものだったからです。
そんなものの数々をあらためてご紹介します。マンティ (蒸し餃子のようなもの) やスープにもヨーグルトが付いてくるし、ヨーグルトを使った伝統料理もありました。
ウズベキスタンのヨーグルト
ウズベキスタンでは、古来ヨーグルトがよく食べられてきました。乳原料として利用されるのは専用の乳牛だけでなく、水牛、山羊、羊、馬、ラクダなど、乳分泌量が比較的多く、搾乳が行いやすい温和な草食動物などです。スーパーマーケットや市場には、本当にいろいろな種類が売られていました。以下、代表的なものを。
■クザ・カティック
クザ (Ko'za) は壺、カティック (Qatiq) がヨーグルト、つまり壺入りヨーグルトです。近所のスーパーで容量700グラム入りが21,990スム/264円でした (2024年当時)。水分がほどよく抜けたヨーグルトは純白でなめらか、酸味もほどほどで、とても食べやすいヨーグルトです。自分はもっと酸っぱくてもいいくらいですが、万人に食べやすい、安心の味。



■スズマ、スメタナ、カイマック
「スズマ」は水切りされた濃厚なヨーグルト。塩入りという情報もありますが、自分が食べたのはすべてプレーンでした。「スメタナ」はサワークリーム。酸味も少しありますがヨーグルトよりはおだやか、水気があるので口当たりはトロトロ。「カイマック」は軽めのバターといった食感。実際、バター代わりに使う人も。酸味はなく、脂肪分を濃厚に感じるリッチな味わいです。



※なお、今でも自分の中で最高峰のヨーグルトは、サウジアラビアの「素焼きの鉢に入ったヨーグルト」です (下の写真)。とくに高級品でもなく普通にスーパーで売っている品でしたが、水分が少なく濃厚な口当たりと、目の覚めるような鮮やかな酸味が、本当に美味しかったです。

ヨーグルトドリンク多種多彩
スーパーマーケットの乳製品コーナーには色とりどりのヨーグルトおよびヨーグルトドリンクが売られていて、どれを買おうかいつも迷ってしまいます。ウズベキスタン滞在後半は、最終的に下の3種類に絞られました。


■リャジェンカ
ウクライナ発祥のヨーグルトの一種。ロシア及び東欧諸国で広く飲用されています。オーブンなどで長時間加熱した (焼いた) 牛乳に乳酸菌・酵母を加えて発酵させることで、色は薄褐色に、またほのかなキャラメル様の甘味がでるそう。とろとろ滑らか。

■ケフィア
コーカサス地方を起源とする、ケフィアグレイン (酵母や真正細菌の結合体) から作られる発酵乳飲料。日本では「ヨーグルトきのこ」とも呼ばれます。抗腫瘍活性に利点があるという研究報告により、1990年代から各国で商品化が進みました。とろみ強め。

■アイラン
バルカン半島から中東、中央アジアまで広い地域で愛飲されている、ヨーグルトに水と塩を混ぜた飲料。6世紀のトルコですでにこのように飲用されていたそうですが、ヨーグルトに塩を加えて長期保存しようとしたことが起源とされます。お店で頼むと、よく撹拌されコップの中で泡立っていることが多いです (3つの中ではアイランはよくレストランでも出されます)。上のふたつよりシャバシャバ。

※なお、ヨーグルト不毛地帯である東南アジアのうち、インドネシアとタイに住みましたが、どちらもヤクルトの現地工場があったため、小さなスーパーでもヤクルトが売られていました。自分も冷蔵庫に常備していましたよ。飲むヨーグルトとは違いますが、乳酸菌飲料ということで。


■クルト (乾燥ヨーグルト玉)
モンゴルから中央アジアにかけて見られる伝統的な保存食品。市場に行けば山積みで売られていますし、近年は真空パックされた製品も。塩気が強く、お酒のおつまみに良さそうです。写真はミラバッドバザールのクルトコーナー、チョルスーバザールのクルト売り、峠道 (サマルカンド〜カシュカダリヤ) の露店、スーパーで買った真空パックのクルト。




※なお、中東で乾燥ヨーグルト玉と言えばヨルダンのジャミードが有名です。直接食べるものではないと思いますが、国民食マンサフにかけるソースの素として、よく口にしていました。ヨーグルトとチーズの中間くらいの風味。ちょっと独特で好き嫌いが分かれるかもしれません。


冷製スープ「オクローシカ」
オクローシカ (окрошка) はロシアの伝統的な冷製スープで、生野菜 (キュウリ、春タマネギ、ハツカダイコンなど)、ゆでたジャガイモ、ゆで卵、ハムなどの肉類とクワスを混ぜて作られます。
クワスはロシアを含む東欧の微炭酸・微アルコール飲料で、家庭でもライ麦パンと酵母を原料として手軽に作られ、とくに夏季に好まれる清涼飲料。ウズベキスタンのオクローシカは、クワスの代わりに薄めたヨーグルト (ケフィア) を使用します。
ウズベキスタンでオクローシカは夏の定番スープになっていて、いろいろなお店でいただくことができます。具材は生キュウリ、ゆで牛肉、ゆでジャガイモ、ゆで卵、そして香草ディル。
味付けは塩コショウとかたぶん単純なもの。シンプルでさっぱりしていて、暑い夏にはピッタリの具だくさんスープです。キュウリが苦手な自分は、キュウリ多めのオクローシカだとちょっと涙目に。ぜんぶ食べましたけどね、大人だから。


ヨーグルトは万能ソース
ウズベキスタン料理をお店で食べると、時々ヨーグルトが添えられてきます。最初は出る・出ないの法則がよくわかりませんでしたが、料理の写真を見返してみると、なんとなく正解が見えてきました。
■スープ
スープには比較的ヨーグルトが付いてきます。このスープならどのお店でも必ず、というわけでもないし、同じお店でも「この前は付いてきたのになあ」なんてパターンもありましたが。
写真のスープはマスタバ (ライススープ)。トマト系スープなのでヨーグルトがよく合います。マスタバは比較的どのお店もヨーグルトがついてきたように思います。


ボルシチやチュチュワラ (ワンタンスープ) もお店によってはヨーグルトが。意外に油っこいのでヨーグルトで味変するとさっぱりいただけます。そういう意味では日本でもラーメンにヨーグルトってありなのかな。


こちらはスープ別体型のチュチュワラ、いや、ロシア風にペリメニという看板を掲げているお店で食べたものです。たしかメニューにスメタナ (サワークリーム) と書いてあったと思います。

■シビットオシュ
ラグマンはそうでもありませんが、緑色の麺料理シビットオシュには必ずヨーグルトが付いてきました。これがまた実に合うんです。トマト系のフライドラグマンは油っこいので、ヨーグルトがあればいいのになといつも思っていました。



■マンティ、ジュババ、トゥフムバラク
日本で餃子やシュウマイ、小籠包にヨーグルトを付けて食べるかと言ったら、そんなことは想像もできません。しかしウズベキスタンでは、マンティの定番ソースはヨーグルトに他なりません。とくに羊肉のマンティはクセ強めなので、酸味のあるヨーグルトは完璧な組み合わせです。こんどシュウマイあたりで試してみようかな。たぶん餃子よりはいけそう。



大きめのチュチュワラ (ワンタン) にラグマンのスープをかけていただく料理がジュババ。濃いめのヨーグルトが添えられていました。もちろん美味しい。でも、だったらラグマンにも付けてよとは思いましたが。

卵液を注入した卵餃子とでもいったトゥフムバラクにもヨーグルトソースがつきもの。日本人はつい醤油がほしくなりますが、郷に入っては郷に従えの精神で、こちらも美味しくいただきました。


以上、とりあえずいろんな料理にヨーグルトを合わせてみようと考えている今日この頃です。焼き魚とか唐揚げにも合いそう。ウズベキスタンではフライドチキンをヨーグルトソース (黒コショウ入り) でいただいたこともありましたが、これはなかなか美味しかったです。
