蕎麦は好きです。ラーメンもうどんも焼きそばも、麺類はなんでも好きですが、たまに蕎麦を食べると「やっぱり美味しいなあ」としみじみ。
なので日本に戻ると地元であれこれ食べていますが (⇒過去記事:静岡の蕎麦、年越しそば)、実は、恥ずかしながら、未だに蕎麦の香りというものがよくわかりません。
8年前、蕎麦を食べる時間よりご主人の蘊蓄を聞いている時間の方が長い、でも本当にためになる蕎麦屋に出会い、その時は一瞬、蕎麦の香りが見えた気がしました。
その時の感覚を思い出すため、ブログ引っ越し時に削除していた過去記事を、あらためて再録してみます。
蕎麦の正解(2017年9月)
山梨県某所、知る人ぞ知るお蕎麦屋さん。お店はご主人が一人で切り盛りしているため、これ以上お客が増えると特に週末は対応が困難になってしまうので、SNSなどでの紹介はしてくれるなとのこと。
ということで店名は伏せますが、これまで美味しい蕎麦とは何なのか、また、自分が好きな蕎麦って何だろうと、そんな基本的なことすらよくわからないまま蕎麦を食べ続けていた自分が、このお店の蕎麦をいただくことによって、正解に近づくヒントをもらいました。
このお店は蕎麦粉100%の生粉打ち。訪れたこの日、蕎麦の種類はふたつ。福井県産丸岡在来種と、茨城県産ひたち秋蕎麦でした。
丸岡は粒が小さいので、粉に挽くと甘皮の割合が多くなることから、甘味や風味が強い蕎麦になります。フワッと立ちのぼる蕎麦の香りは、これまで漫然と食べてきたどの蕎麦よりも強いものでした。
一方のひたちは粒が大きく、デンプンの割合が多いため、プチプチと歯切れのよい蕎麦になります。収穫後真空パックにして貯蔵していたもので、甘皮の緑色が少し残っていたことから、茹であがった蕎麦もどことなく緑がかっていました。
石臼は特注、水分量 (?) は42.5%を基準に0.5%刻みで微調整するとのこと。麺の茹で時間は9秒。本当にあっという間ですね。
ご主人の気遣いポイントはこれだけではありません。ネギはまな板を使わず切って、白い部分だけより分け、水で洗って提供します。
蕎麦には付き物の刻みネギですが、ネギはにおいがきつすぎて、自分は今まで使わない派だったので、これは嬉しかったです。ネギの風味はフワッとしているくらいで十分。
ワサビではなく辛味大根というのもご主人のこだわり。キュウリの浅漬けは7時間半。これが蕎麦の後に口直しとして食べる場合、ベストとのこと。
この日、蕎麦は種類によって特徴があることをあらためて知りました。次から、こうした点をきちんとわかった上でお店を訪問すれば、いずれ自分がいちばん好きと思える蕎麦に出会えるだろうと、そんな希望が湧いたのでした。(写真は上から丸岡、ひたち)

(過去記事ここまで)
* * *
こうして一度は見えかけた「蕎麦の香り」でしたが、その後はいろいろなお店で蕎麦をいただいても、あの時の感覚は二度と戻りませんでした。もう自分、鼻がバカなんだろうな。。。
そんなこんなで月日が流れ、ウズベキスタンに赴任した2023年。職場のカフェテリアには白いご飯やマッシュポテトとともに、茹でたソバの実が並べられていました。

それは、日本の蕎麦 (麺として打たれたもの) とは段違いに香りが強く、この状態を初めて見ましたが、ひとくち食べて確信しました。これは間違いなくソバの実。
ソバは現地語でグレチカ (гречка)。香りも味も良く、これが本来のソバの美味しさなんだと、いたく感動しました。


なお、ソバの生産量はロシアが世界一で、ウズベキスタンも26位と下位ながらソバ生産国だということも知りました (日本は10位)。
なのでソバの実はレストランのメニューにもある、ウズベキスタンでは一般的な食材です。写真はビフシュテークス。白飯・ソバの実・マッシュポテトが必ずセット盛り。

こちらはブリンチク (блинчик)。ソバ粉 (または小麦粉) のパンケーキ。薄いのでどちらかと言えばクレープかな。ホテルの朝食ビュッフェなんかだとそのまま出ますが、写真のように具材を包むパターンも多いです (この中身はモツ)。

蕎麦の乾麺もわりとポピュラーで、蕎麦を使った、これが本当の「焼きそば」も、ローカルレストランにありました。たぶんロシア料理のひとつなのかなと。

スーパーマーケットでも、お米や緑豆なんかの隣でソバの実が売られていました。1キロ 9,950スム=125円。お米よりも安かったです。

ウズベキスタンでソバの実の味と香りを堪能し、舌と鼻にしっかり記憶させたので、帰国後はあらためて蕎麦屋で楽しめるかもと、ちょっと期待していた自分。
実際のところ、日本の蕎麦は香りが弱すぎて、結局いまもよくわかりません。たぶん一般の蕎麦屋は茹ですぎ・洗いすぎなのかもしれません (自分の鼻の悪さは棚に上げていますが)。
蕎麦湯ももっと鍋の底にこずんだドロドロの汁をくれと思いますが、なかなかそんなお店もありません。(※「こずむ」が漢字変換されず、ちょっと調べたらこれが静岡の方言だといま知りました・・・)
10月8日は「蕎麦の日」ということで、こんな記事を書いてみました。ああ蕎麦食べたい。
■おまけ:チーズそば@富士見そば/JR静岡駅
その意外な組み合わせから、当初は知る人ぞ知る駅そばとして界隈では有名だった、JR静岡駅・富士見そばのチーズそば (550円)。お店は上り下り両方のプラットホームにあります。
揚げ玉とモッツァレラチーズがたっぷりかかった温そばの、麺は立ち食いそばとしては標準的なやわらか仕様。お汁は味しっかり目、出汁感としょっぱさもありつつやや甘めで美味しかったです。
さて、和風出汁にチーズは合うのか、合わないのか、ゆっくり噛み締めて食べてみましたが、けっして合わないことはないものの、チーズとの相乗効果で一段美味しさがアップするかと言われたら、ちょっとそこまでの確信は持てませんでした。でも、ぜんぜん邪魔はしていませんでしたよ。
ここではチーズそばの他に、かき揚げそば (500円) とラーメン (600円) もいただきました。駅のプラットホームという独特の雰囲気の中で食べるラーメンは、その安っぽい (いや王道の) 味が、胃袋に染み渡りました。おすすめ。
