「調味料」という概念はどの言語でもありますが、「調理場で使うもの」と「食卓で使うもの」を区別する度合いには、文化的な違いがかなりあります。
以下、日本語・英語・フランス語・中国語・タイ語の比較と文化的背景です。さらに各国の食育についても。AI (ChatGPT) による回答ですが、けっこう納得。
日本語 (日本)
■区別:なし
基本的には「調味料」という1語で調理用も卓上用も区別しない。例:しょうゆ・みそ・砂糖・塩・ソースなど。ただし文脈で区別する。例:料理用の調味料、卓上調味料、つけだれなど。
■文化的背景
家庭料理は「作り手が味を完成させてから出す」文化のため、食卓で味を変える習慣が比較的少ない。したがって「食卓専用の調味料」という発想が薄く、語彙も発達しなかった。
■食育の特徴:調和・尊重
学校や家庭で「栄養バランス・感謝・季節感」を重視。「残さず食べる」「味を変えずに食べる」ことが礼儀。子供は、料理人 (=母や給食の先生など) が味を整えた料理を尊重するよう教えられる。
■調味料文化との関係
食卓で調味料を加えすぎるのは「作り手への無礼」と感じる傾向。「完成された味を味わう」姿勢が身につく。集団・調和の文化が食卓にも表れている。
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たしかに、日本では出されたものをそのまま味わうことが多いですね。味が濃い料理・薄い料理はあまり関係なく。もちろん、お刺身に醤油、トンカツにソースは別です。
ラーメンですら、一口目を食べる前からコショウやお酢をたっぷり入れたりするのは、さすがにお店に失礼という意見が大半ですね。


英語 (アメリカ・イギリスなど)
■区別:あり
・シーズニング (Seasonings):調理に使う調味料
(塩・胡椒・スパイス・ハーブなど)
・コンディメント (Condiments):食卓で味を足す調味料
(ケチャップ・マスタード・ソイソースなど)
■文化的背景
欧米では「各人が好みで味を調整」するのが一般的。食卓には常にソース類が置かれる。味つけが個人化しているため、明確な言葉の分化がある。
■食育の特徴:自立・多様性
家庭でも学校でも「自己選択・自己表現」を重視。子供に「自分の好みを言葉にする」「食べ物を選ぶ権利」を教える。野菜嫌いでも「ケチャップをかければ食べられる」など、工夫を許容。
■調味料文化との関係
卓上調味料 (コンディメント) は「自分らしく食べる自由の象徴」。子供も自由に味を調整できる。個人主義・自由の尊重が食卓で表現されている。
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個人的にはあまりイギリス料理・アメリカ料理を意識して食べたことがないので、良い実例はありませんが、フィッシュ&チップスにはビネガーやマヨネーズをたっぷり好きなだけかけて食べた覚えが。

フランス語 (フランス)
■区別:あり
・アセゾヌモン (Assaisonnement):調理に使う調味料
(塩・胡椒・ビネガーなど)
・コンディマン (Condiment):食卓で味を足すもの
(マスタード・ケチャップ・ピクルスなど)
■文化的背景
フランス料理は「味の完成度」を重んじるため、基本は調理段階で完結。ただし、マスタードやビネガーなどは卓上でもよく使われ、伝統的な「コンディマン文化」がある。
■食育の特徴:教養・美意識
「味覚の教育 (éducation du goût)」という言葉が存在。幼い頃から「香り・味・食感」を感じ分ける訓練をする。給食 (cantine scolaire) も非常に文化的・多彩で、マナー教育も同時に行う。
■調味料文化との関係
調味料をむやみに足さず、素材の味を尊重する。ただし、マスタードやビネガーなど「正統なコンディマン」は教養の一部として扱う。味覚の教養・文化的洗練が食育の中心。
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ちゃんとしたお店のフレンチのコース料理なんてほとんど食べたことがないので、地元の小さなお店ですらちょっと緊張してしまいます。写真の料理は、出されたものをそのまま「ウマウマ」と思いながらいただきました。

中国語/普通話 (中国)
■区別:あり
・调料 (tiáoliào) / 调味料 (tiáowèiliào):調理用全般
(醤油・塩・味精・酢・辣椒など)
・佐料 (zuǒliào) / 蘸料 (zhànliào):食卓でつけるタレや薬味
(辣椒醤・蒜泥・芝麻醤など)
■文化的背景
中国は「食卓で味を変える文化」が強い。例:火鍋・餃子・串焼きなど、自分で蘸料 (ディップソース) を調合。家族で同じ料理 (大皿) を囲むが、各人が自分好みに仕上げるという思想。
■食育の特徴:共食文化
家族で食卓を囲む「共食 (gongshi) 文化」を重視。子供も小さい頃から大皿を共有し、「取り分けの礼儀」や「順番・節度」を学ぶ。同時に、「自分好みのタレを作る」ことも尊重される。
■調味料文化との関係
蘸料 (ディップソース) を自分で調合することを通して、味の自己表現を学ぶ。食卓は「共通」と「個性」の両立の場。集団の中の個人表現を学ぶ文化。
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東南アジア (インドネシア、タイ) や中央アジア (ウズベキスタン) で、中国大皿料理の共食は何度か経験がありますが、いかんせん中国本土で食べたことがないので、本場の共食文化や蘸料 (ディップソース) の豊富さについては未知の世界。写真はバンコクの陳再裕酒家 (タンジャイユー)。

タイ語 (タイ)
■区別:なし
「เครื่องปรุง (khrʉ̂ang-prung)」は調味料全般を指す言葉で、調理でも卓上でも使う。日本語と同じく、文脈で区別する。
・เครื่องปรุงในครัว:調理場の調味料
・เครื่องปรุงบนโต๊ะ:卓上調味料
■文化的背景
タイは「個人の好みを最優先」する食文化。屋台や食堂には常に4種の卓上調味料セット (砂糖・ナンプラー・唐辛子・酢) が置かれる。味は食べる人が仕上げる、という前提があるため、卓上調味料文化が非常に発達している。
■食育の特徴:自由・楽しさ
家庭や学校で「楽しみながら食べる」を重視。子供にも「辛さ・甘さ・酸っぱさ」を自由に調整する権利がある。同時に「他人の皿には手を出さない」など、礼儀も教えられる。
■調味料文化との関係
卓上の4種調味料セットは、自己調整の練習場。子供たちは「味は自分で完成させるもの」と学ぶ。自由と共感の調和を重んじる文化。
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写真はタイの食堂でおなじみの卓上調味料セット。どのお店もほぼ100%、これがあります。カオパット (炒飯) だってバミー (ラーメン) だって、食べる前の味の調整は普通のこと。タイ人が砂糖を入れているのもよく目にしました。



以上です。あらためて、国によって違うものだなあと。もっと他の国のことも調べてみようかな。