A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

お酒の規制:日本・イスラム・タイの場合

日本

日本にいるとついテレビばかり観ていますが、お酒のCMの多さに驚きます。しかも芸能界の人気者がこぞって出演していますから、日本ではお酒に対するネガティブなイメージがまったくないのでしょう。

買った人しか見ない雑誌の広告ならまだしも、子供たちも普通に目にするテレビCMで、これだけ頻繁にお酒のCMが流れる国は、かなり珍しいと思います。

自分は体質的にお酒が飲めないのですが、開高健の小説・エッセーにたびたび登場する、お酒にまつわるあれこれを読むと、飲める人が羨ましいなといつも思います。

一方で、どうせ自分は飲めないので、いま世の中からお酒がすべて消え去っても、まったく問題ありません。もともとお酒によるトラブルや疾病、経済的損失、時には人命の損失など、負の側面が大きすぎますからね。

これまでいた国はほとんどイスラム教だったり、そうでなくてもお酒に制限がある国、少なくともお酒にはネガティブなイメージがある国ばかりでした。

もし自分がお酒を飲める人だったとしたら、ずいぶん辛い人生になっただろうし、逆にこんな人生 (欧米先進国以外でずっと海外勤務) は送ることができなかったかもしれません。

そういう意味では、偶然も偶然ではないし、なるべくしてそうなったのだと考えれば、誰に対してかはわかりませんが、なんだか感謝でいっぱいです。ふり返れば、本当に楽しい人生でした (いやまだ終わりませんが)。

ということで、お酒の規制についてふたつ、イスラムの場合とタイの場合を。日本とはだいぶ異なりますね。飲めない人間からすると、日本はお酒を礼賛しすぎです。

イスラム

ご存じのとおり、イスラム教ではお酒が禁じられています。コーランの食卓章90節には 「信仰する者よ、誠に酒と賭矢、偶像と占い矢は、忌み嫌われる悪魔の業である。これを避けなさい」 と記されています。

一方で、ムハンマド章15節には 「主を畏れる者に約束されている楽園を描いてみよう。そこには腐ることのない水をたたえる川、味の変わることのない乳の川、飲む者に快い美酒の川、純良な蜜の川がある」 と記されています。

つまり、お酒を完全に否定しているのではなく、あくまで現世において飲酒を禁止するということのようです。こんな書き方をされたら余計に期待がふくらんで、試しに飲んでみようという輩が現れてもおかしくありませんね。

自分がいた当時のニュースですが (なのでだいぶ昔の話)、サウジアラビアでオーデコロンを飲んだ若者19人が亡くなるという事件がありました。なんとも哀れです。

コーランに飲酒禁止と書かれている以上、当時アラビア半島には相当数、左党がいたと見ていいのではないでしょうか。そしてお酒につきものの、風紀の乱れも。

アラビア半島にはジャーヒリーヤ時代 (イスラム以前の無明時代) からカイナという歌い女がおり、酒場に所属したり流浪の酒売り人に従って歩き、春を売っていたそうです。

コーランに書かれているお酒は「ハムル (خمر)」というもので、一般的にはワインとされています。ブドウの産地である北アラビアでつくられたワインが、酒売り人によってアラビア半島まで広がっていたのでしょうか。

また古来より、イラクやシリアを中心にナツメヤシのお酒がつくられていたことはよく知られています。それを「アラク」といい、水で割ると白く濁るお酒としてご存じの方も多いでしょう。

東南アジアやスペイン、ポルトガルにも同じもの (ただし原料は様々) があり、なんと江戸時代の日本にも、「阿刺吉 (阿刺基)」などという名前でオランダから渡来していたそうです。

タイ

タイには国産ビールもありますし、飲食店や夜の街の繁栄ぶりから、日本と同じくらいお酒に寛容であるようなイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。

しかし実際のところ、意外とそこは厳しく制限されています。お酒の広告は出すのも禁止、見るのも禁止 (インターネットアクセスが遮断される)、インフルエンサーがSNSでお酒を推奨するような発信をするのも禁止。

また、お酒を置いているお店でも提供時間を制限していたり、スーパーマーケットでも販売時間に制限を設けています (写真参照)。タイ仏教の禁酒日も年に何日かあるので、運が悪いとなかなかお酒にありつけません。

タイでお酒を飲みたい人は、この点少し意識しておいた方がいいでしょう。自分もお酒が好きな人をアテンドする時は、飲めるお店かどうか事前に調べていました。まあ概ね何も気にしなくても、まったく飲めなかったなんてことにはならないとは思いますが。