A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

ココヤシは生命の木

ヤシ科植物もいろいろありますが、もっとも有名かつもっとも利用価値が高いのは、ココヤシではないでしょうか。単にヤシ (ヤシの木) と言えば、これを指します。

ポリネシアから熱帯アジアが原産とされますが、現在では世界中の熱帯地方で栽培されています。写真はトンガのヤシ畑。一緒にタロイモやキャッサバが植えられています。

幹は木材 (ココナッツウッド) として、家具・床材・建築材に。軽くて耐水性もあり、伝統的な舟の資材にも使われました。また、ヤシ殻と合わせ薪や木炭などの燃料にも。

古代から近世まで、アラビア商人の海洋貿易 (海のシルクロード) で使われた船 (ダウ船) の建材としても利用されました。写真はカタールのダウ船ですが、現代 (1980年代) のものなのでココヤシではなさそう。

葉は編んで伝統的な家の屋根材や壁材になり、またカゴ・帽子・敷物などの伝統工芸品として利用されます。下の写真1~5枚目トンガ、6枚目フィジー。

ヤシの木の果実ココナッツの殻は軽くて硬いので、カップやボウル、装飾品に加工されます。また活性炭に生成し、高性能な吸着材として浄水器や脱臭剤にも利用されます。写真はフィジーのセブセブ (入村の儀式) で準備されたカヴァ (⇒Wikipedia)。ココナッツのカップでいただきました。

ココナッツの外皮 (ヤシ殻) をむく道具を使わせてもらったことがありますが、これがなかなか難しかったです。とにかく力仕事。力自慢のトンガ人には造作もないことなのかもしれません。

アラビア半島ではヤシ殻から繊維を取り出し、アラビックコーヒー「ガホワ」の漉し器 (余分な粉とスパイスのブロック) に使っています。写真はサウジアラビアの首都リヤドのカフェ。

タイの農業大学が新しい節水型ラン栽培のため、ヤシ殻を使って試験栽培を行っていました。活用方法は無限大ですね。

ココナッツには約1リットルのココナッツジュースが入っています。熱帯では多くの場合、野外の生水は衛生的に危険なことから、非常に重宝されます。実に穴を開けストローを差して飲むのが、なんとも南国っぽくて大好きでした。

バンコクのカフェ「サーニーズ」でいただいたココナッツコーヒー。コーヒーをココナッツジュースで割り、さらに果肉も入れたものです。さすがタイ、お洒落かつヘルシー。

白い胚乳はそのまま食べられるほか、ココナッツミルクやナタデココなどに加工して料理にもよく使われます。トンガで胚乳を掻き出す道具も使わせてもらいましたが、こちらはシャクシャクと軽やかに削れました。これを絞るとフレッシュなココナッツミルクが出来上がります。

胚乳を取り出したココナッツは庭に放っておけば、鶏が集まり食べてくれます。その後は裏庭に野ざらしにしておけば、適度に干され乾燥していい燃料に。

ココナッツオイルは食用油として調理に使われます。中鎖脂肪酸を多く含み、健康志向の人々に人気だそう。写真はフィジーのスーパーマーケット。

ココナッツには三段階の食べ方があると言われます。ヤシの木になっている実をもいでフレッシュなジュースを飲むこと、自然に木から落ちた実の内側にある白く半透明な果肉を食べること、そしてしばらく実を放置しておき芽が出かけた頃にできる「ウト」を食べること。(※ウトはトンガ語です)

ジュースの水分がとんでスポンジ状に固化するのだと思います。トンガ人はおやつ感覚でウトを食べますが、そんなに美味しいものではありません。甘みも酸味もあるようなないような、スポンジを噛んでいるような食感、そして独特の鼻に抜ける風味は、ひと口でゲンナリしてしまうのに十分なものでした。

自分はパームシュガー (⇒Wikipedia) なら食べたことがありますが (写真はタイで買ったもの、400~500gあって35バーツ/120円でした)、ココヤシから作ったココナッツシュガーは未食。トンガとフィジーではどこかで食べていたのかもしれませんが。

以上です。ココヤシは本当に無駄になる部分がなく、古の昔から人々の生活を支えてきた、まさにツリー・オブ・ライフ。最後に、トンガの二股のヤシの木の写真を。実は世界的にも貴重な現象なんだそうです。