タイ映画「A Useful Ghost (直訳:役に立つ幽霊)」(原題:ผีใช้ได้ค่ะ) は、ラーチャプーム・ブンブンチャチョーク監督・脚本によるファンタジー・ブラックコメディ映画です。
2025年5月にカンヌ国際映画祭批評家週間部門でワールドプレミア上映され、タイ人監督として初めてグランプリを受賞しました。監督は「この賞をタイのすべての幽霊に捧げたい」と観客に語ったそうです。
本作は、妻が粉塵汚染で病死し、その霊が掃除機に憑依して蘇るというストーリーです。象徴性とブラックユーモアに満ちた風変わりな物語は、タイにおける権力と政治的抑圧を探求しているとのこと。
「この映画の主な意図の一つは、過去の不正にどう対処してきたかを語ることです」とラーチャプーム監督は語り、「苦しみ、罰を受け、姿を消した人々は数多くいます」と、軍事クーデター、抗議活動、そして死者を出した過去の弾圧に象徴されるタイの激動の政治史に触れながら付け加えました。
タイ政府は映画産業の育成に熱心で、制作支援のために640万ドルの映画基金を設立しました。検閲規則も緩和されていますが、王室に影響を与える可能性のあるコンテンツは引き続き禁止されています。不敬罪もまだありますからね (⇒映画館の起立の話)。
本作がタイで公開された際にどのような反応が得られるか、監督自身まだ分からず、「議論を呼ぶだろう」と語りました。
もともとタイ映画は面白かったですが、近年のタイ映画産業は振興著しく、2024年の映画「おばあちゃんと僕の約束」も世界で高く評価されました。自分もいたく感動しましたが (⇒コチラ)、本作も早く観てみたいです。日本公開はいつになるだろう。
ちなみに、今月は地元のミニシアターでタイ映画「親友かよ」が上映予定。こちらも必ず観に行くつもりです。
■参考過去記事
タイの民主主義に関する映画のレビュー⇒コチラ