A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

その国その町、どんなにおい?

海外を旅すると、日本では嗅いだことのない独特なにおい (臭い・匂い・香り) が鼻をつくことがあります。

最初は違和感をおぼえることもありますが、滞在しているうちに慣れてしまい、その地を離れる頃には名残惜しくなったりするものです。

これまで住んだ国・町はどんなにおいをしてたっけなと、ChatGPTの助けも借りながら思い出してみました。(※小さな国はその国の、大きな国は自分が住んだ町のものを)

カタール

カタールのにおいは、砂混じりの湿った高温の空気に、高級な香油や香木、スパイスの芳香、そして現代都市の無機質なにおいが重なった、独特なアラビア湾岸諸国の香りです。UAE、サウジアラビア、オマーンなどと似た要素を持ちながらも、カタール独自の「静かで洗練された贅沢さ」が香りにも現れています。

砂と湿った風のにおい
首都ドーハを含む多くの地域は砂漠気候。ペルシャ湾に突き出た小さな半島のような国で常に湿度が高く、夏は気温40℃以上、湿度は80%以上の日が続きます。空気は湿っていますが雨は少ないため、風が吹くと砂や土ぼこりのにおいが感じられます。

香木と香油の香り
カタールの文化では、ウード (沈香) やバフール (香木を焚いた煙) がとても重要です。高級モール、ホテル、家庭、モスクなどの空間に、スモーキーで甘く、深い香りが漂っています。また女性だけでなく男性も伝統的な香油・香水を身につけており、すれ違いざまに強く香ることに当初は驚かされるでしょう。

料理とスパイスの香り
カタール料理では、クミン、カルダモン、シナモン、クローブなどが使われ、温かみのある甘辛いスパイスの香りが食堂や家庭から立ち上ります。グリルされた肉 (ケバブ) やバスマティライスの香りも混ざり、街角で香りに食欲をそそられることも。近代化以降、インド・パキスタンの労働者が多数存在するため、カレースパイスの香りも。自分の記憶はカタール=カレーのにおい。

都市の近代的で無機質なにおい
ドーハのような都市部では、ビル風とともに冷房機器や排気ガス、コンクリートや人工素材のにおいも漂っています。クリーンで整備された街路は、生活臭はあまり感じられません。

市場 (スーク) のにおい
スーク・ワキーフなどの伝統市場では、スパイス、ドライフルーツ、香水、革製品、時には動物のにおいや人の汗のにおいまでが混じる、濃密で生命力のある香りが感じられます。

リヤド

サウジアラビアの首都リヤドのにおいは、砂漠の乾いた風、伝統的な香木やお香の香り、そして都会のモダンさが混ざり合った、力強くも洗練された香りです (伝統と現代が織りなす強く洗練された香り)。

砂漠の乾燥した土と風のにおい
リヤドは内陸の砂漠都市で、極端に乾燥した空気 (夏は気温40℃以上、湿度10%以下) に乗って、砂漠の土や岩の香りが漂います。時折強く吹く風に、熱く乾いた砂や枯れ草の香りが混ざり、力強い自然の息吹を感じさせます。自分にとってリヤドはまさにこのにおい。

香木とお香の香り
リヤドの家庭やモスク、マーケットでは、ウード (沈香) やバフール (香木を焚いた煙) などの甘く深みのある香りが強く漂います。これは中東の伝統文化を象徴する香りで、町の雰囲気を荘厳にしています。

都会の排気ガスや建物のにおい
近年の急速な都市化により、車の排気ガスやアスファルトの熱気が町の空気に混ざります。モダンなビル群の中には、エアコンの冷気や清掃用洗剤の香りも感じられます。

市場や食べ物の香り
伝統的なスーク (市場) では、クミンやカルダモン、シナモンといったスパイスの香りが充満し、焼きたてのパンやグリルした肉の香ばしい香りも漂います。カルダモンが効いたガホワ (アラビックコーヒー) と一緒にいただくデーツ (ナツメヤシの実) の甘い香りもリヤドならでは。

カイロ

エジプトの首都カイロのにおいは、歴史の重みとエジプト独特の活気、砂漠の乾いた風とスパイス、市場の混沌が入り混じった複雑で力強い香りです。歴史と現代が交差する「生きた古代都市の息吹」を感じさせます。

都会の排気ガスと埃のにおい
カイロは世界でも人口密度が高い都市のひとつで、交通渋滞が日常的。そのため、車の排気ガス、アスファルトの熱気、埃っぽさが町中に漂い、乾燥した空気と混ざり合います。まさに「埃国 (埃及)」、たいてい喉をやられます。ゴミ問題も当時は深刻でした。

スーク (市場) のにおい
ハン・ハリーリ市場やその他の市場では、スパイス (クミン、コリアンダー、シナモンなど)、乾燥ハーブ、ナツメヤシ、皮革製品のにおいが強く感じられます。新鮮な果物や野菜、生肉・魚介の香り、さらに人の汗・垢のにおいも混ざり、生活感あふれる活気とエネルギーに満ちあふれています。

香木とお香の香り
モスクや伝統的な家屋では、沈香や香木のお甘くスモーキーな香りが漂い、これがカイロの神聖で歴史的な雰囲気を強調しています。

砂漠の乾いた風と土のにおい
カイロ郊外にあるギザのピラミッドも、周辺はすでに砂漠。風が吹くと、砂漠特有の乾いた砂や土の香りが漂い、時にカイロ全体を覆います。3月から4月にかけて50日間続くと言われる砂嵐「ハムシーン (50の意味)」の季節は、飛行機が止まることも。

食文化の香り
カイロの路地裏や食堂からは、焼きたてのパン「エーシュ (エイシ)」、香ばしいグリル肉 (ケバブ)、豆料理 (ファラーフェル、フール) の香りが漂います。クミンやコリアンダーなどスパイスの温かみのある香りも。

アジスアベバ

エチオピアの首都アジスアベバのにおいは、高地の涼しさと豊かな自然、伝統的なコーヒー文化や市場の活気が混ざり合った、独特で深みのある香りです。自然と文化が融合した「生命力あふれる高地の都市」の香りと言えるでしょう。

なお、「(ケニアの) ナイロビは一年中春、アジスアベバは一年中秋」と言われるように、憂いを含んだ湿度の高い空気の中に、人肌のにおい (正確には肌に塗り込んだケベのにおい) がまじる有り様が、個人的にはもっとも強く印象に残っています。(※ケべ=エチオピアのバター)

高地の新鮮な空気と草のにおい
アジスアベバは標高約2,400mの高地にあり、空気は涼しく澄んでいます。町の周辺や郊外では、乾燥した草や土、そして時折草原の緑の香りが感じられます。新年 (9月11日) 頃に咲くマスカルフラワーの香りやマスカル祭の松明のにおいも季節を感じさせます。

コーヒーの香り
エチオピアはコーヒー発祥の地として有名で、アジスアベバのカフェや市場では、焙煎したコーヒー豆の香ばしく深い香りが漂います。レストランやホテル、各種イベントでは伝統的なコーヒーセレモニーが行われ (コーヒー豆の焙煎から)、フレッシュでスモーキーな香りが空間を満たします。

市場のスパイスや香草の香り
バルカ市場などでは、カルダモン、シナモン、クローブ、黒胡椒などのスパイスや乾燥ハーブの豊かな香りが混ざり合い、エネルギッシュな雰囲気を作っています。また、生鮮食品や野菜の香りも感じられます。

都市の排気ガスやアスファルトのにおい
都市部では車の排気ガスやアスファルトの熱気が時折感じられ、生活のざわめきを感じさせます。ディーゼルエンジン車が多く、また高地で酸素が薄いため燃焼効率が悪いことから自動車の排気ガスは真っ黒、時にアジスの空も灰色に覆われます。

お香と人のにおい
家庭や教会では、伝統的なお香や香木の穏やかな香りが漂い、神聖で落ち着いた空間を作り出しています。一方で、人が集まる場所は密集度が高く、人のにおいが充満していました。

トンガ

大洋州に残る王国トンガのにおいは、海・自然・伝統的な暮らしがまじり合った、とても素朴で優しいにおいです。海の潮風、トロピカルフラワーの甘さ、新鮮な果物と伝統料理の香り、自然の土や木のにおいが織りなす、穏やかで温かみのある南の島の香りです。ゆったりした島の時間と自然の豊かさを感じさせる、心がほっとする香り。

海と潮のにおい
トンガは島国なので、どこにいても潮の香り、海風の湿ったにおいが感じられます。干潮時の磯のにおいも独特で (少し生臭さを含むことも)、海に近い暮らしの証です。

熱帯植物と花の香り
フランジパニ (プルメリア)、ティアレ、イランイラン、ジャスミンなどの甘くてトロピカルな花の香りが町や村でよく漂っています。ココナッツやマンゴー、パパイヤの木も多く、熟した果物の甘い香りが風に乗ることも。

伝統的な生活・民家のにおい
トンガの多くの家庭では屋外で調理をするため、薪やココナッツの殻を燃やす煙のにおいが漂います。特によく日曜日に行われる「ウム (地中で蒸す伝統料理)」の調理時は、焼けた葉、炭、蒸気、タロイモや魚の香りがミックスされ、独特で心地よい香りになります。ヌクアロファの自宅一帯も、日曜日は白く煙っていました。

土と雨のにおい
トンガは雨が多く、雨上がりには湿った赤土と緑の葉のにおいが強く感じられます。自然と一体となった暮らしならではのにおいで、日本のド田舎出身の自分には、とても落ち着く香りでした。

教会や人々のにおい
日曜日の礼拝では、香水をまとった人々が清潔な出で立ちで (樹皮や植物を編んだタオバラやキエキエなどを着けて) 集まります。軽い石けんや香水・ココナッツオイルの香り、乾いた植物の青い香りも印象的だと語る人がいます。

ジャカルタ

巨体な島嶼国家インドネシアの首都ジャカルタのにおいは、熱帯都市の活気と混沌、スパイスと排気ガス、湿気と市場のにぎわいが混ざったエネルギッシュで濃厚な香りです。ジャカルタのにおいは、「活気あふれる混沌とした都市の息吹」と言えるでしょう。

都市の排気ガスとアスファルトのにおい
ジャカルタは交通渋滞が有名で、車やバイクの排気ガスが町中に漂います。そのため、アスファルトや油のにおい、時には燃やされたゴミのにおいも混じることがあります。

屋台や市場のスパイスと料理の香り
屋台やパサール (市場) では、サテ (串焼き)、ナシゴレン (炒飯)、バクソ (肉団子スープ) などの料理の美味しそうな香りが立ち込めます。レモングラス、ターメリック、コリアンダー、唐辛子などのエキゾチックなスパイスの香りも強く感じられます。生鮮市場では、魚介類の生臭さや果物の甘い香りも混ざり合います。なお、ドリアンは売買できるエリアがかなり限定されていて、その場所に行かなければジャカルタでドリアンのにおいが鼻を突くことはあまりありません。

湿気と雨のにおい
ジャカルタは熱帯雨林気候なので、雨季には特有の湿った土や植物のにおい (ペトリコール) が漂います。湿気が多いため、カビや湿った木のにおいが感じられることも。

モスクのお香と宗教的な香り
モスクの周辺では、お香や香木の香りが漂い、祈りの時間には神聖な雰囲気が香りにも表れます。

洗剤や清掃のにおい
ショッピングモールやホテルでは、洗剤や消臭剤の香り、冷房の冷たさを感じさせる香りも混ざっています。

なお、インドネシアと言えばガラム (Gudang Garam) の甘くトロピカルなにおいですが、ジャカルタは都会 (の進歩的な人々) だけあって喫煙率も低く、ガラムのにおいを感じたことはほとんどありませんでした。地方に行くとスモーカーが多く、すぐにわかったのですが。

バンコク

タイ王国の首都にして、東南アジア随一の大都市バンコクのにおいは、エネルギッシュで多彩、スパイスや屋台の香りと都会のざわめきが混ざり合った、熱気あふれる東南アジアを代表するものです。熱帯都市のエネルギーと伝統文化が交錯する、「生きている香りの町」。

屋台や市場のスパイス、食べ物の香り
バンコクの街角や屋台では、ガパオライスやトムヤムクン、パッタイなどのタイ料理の香りが常に漂います。レモングラス、コブミカンの葉、唐辛子、にんにく、ナンプラーなどのエキゾチックなスパイスやハーブの香りが、常にバンコクを包んでいると言っても過言ではありません。フルーツ市場では熟したマンゴーやランブータンの甘い香りも混じります。もちろんドリアンの悪魔的でクセになる強烈なにおいも。

都会の排気ガスとアスファルトのにおい
電車 (BTSスカイトレイン) が順次整備されてはいますが、バンコクはまだまだ交通量が多く、排気ガスやアスファルトの熱気、時には焼け焦げたようなにおいも感じます。特に雨の後のアスファルトのにおいは、湿った土や植物の香においと混ざって独特の空気感を作り出します。

寺院やお香の香り
仏教寺院では、ジャスミンやサンダルウッドの香り、線香やお香の煙の香りが漂います。静けさと祈りの空間を作り出す神聖な香りで、町の喧騒とは対照的です。

川や運河の水のにおい
チャオプラヤー川や小さな運河沿いでは、水のにおいや湿った土のにおいが混ざり、時に魚のにおいも感じられます。水辺特有の生き生きとしたにおいが、都会の喧騒に癒しを与えます。ただし、小さい運河はドブ川のにおいと感じることも。

洗剤や清掃のにおい
モールやホテル、カフェでは、洗剤や清掃のにおい、アロマの香りが漂い、都会的で快適な空間を演出しています。洗濯洗剤は香りが強すぎるきらいも。

夜の町のにおい
バンコクは昼と夜ではその表情をガラリと変えます。ナナ、パッポン、ソイカウボーイなどは、夜になるとアルコールのにおいを吐き出す酔っ払いが千鳥足で歩き、けばけばしい化粧品のにおいや路地裏の吐瀉物のにおいなどが入り交じる、妖しくも濃密な空間に様変わりします。これもまたバンコクの経済を支える立派なひとつの顔。特有のにおいがありました。

タシケント

ウズベキスタンの首都タシケントのにおいは、歴史と現代が融合した中央アジア特有のスパイスや大地の香り、伝統的な市場の活気が感じられる、温かみと深みのある香りです。東洋と西洋の文化が交差する「生きた歴史の息吹」と言えるでしょう。

スパイスと伝統的な市場の香り
チョルスーバザールなどの市場では、クミンやコリアンダー、サフラン、クローブといったスパイスの豊かな香りが漂います。ドライフルーツやナッツ、パン (ノン) などの香ばしい香りも混ざり、活気ある市場の雰囲気を作っています。

乾燥した大地と土のにおい
タシケントは乾燥した気候で、風が吹くと砂ぼこりや乾いた土の香りが町に広がります。郊外に近づくと、カザフ草原の草や樹木の香りも感じられます。

都会の排気ガスやアスファルトのにおい
交通量の多い道路や商業地区では、車の排気ガスやアスファルトの熱気が感じられ、都市のエネルギーを表現しています。一方、地形の問題などもあり、実は世界でも指折りの空気が悪い都市でもあります。

伝統工芸と香油の香り
ウズベキスタンの伝統的な香油や香水の香りが一部の市場や商店で漂い、オリエンタルで神秘的な雰囲気を醸し出しています。

料理のにおい
中央アジアに位置するウズベキスタンの料理は、東西南北の交差点で生まれた食文化と言えます。東 (中国・東アジア) からは麺料理 (ラグマン) や餃子 (マンティ)、西 (中東・ペルシャ・地中海) からはピラフ系料理 (プロフ) やシチュー料理 (ハシュなど)、 南 (インド・中央アジア南部) からは香辛料や乳製品の利用、北 (ロシア・コーカサス) からはスープや保存食文化 (ボルシチ、ピクルス類) と、非常に多彩な香りを持ちます。

プロフのにおい
ウズベキスタンの国民食プロフ (ピラフ) を毎日朝から大釜で炊くレストランがそこかしこにあり、羊の脂の独特なにおいが辺りに漂います。自分にとってタシケントのにおいは、トイオシュ (ウエディングプロフ) の羊の脂とクミンなどスパイスが混ざったにおいです。