インドネシア各地の郷土料理 (自分が食べたもの) を紹介するこのシリーズ、スマトラ島・ニアス島 (⇒コチラ)、ジャワ島・バリ島 (⇒コチラ) に続いて、ジャワ島の北にあるカリマンタン島 (ボルネオ島)と、その東側にある「K」の形とも言われるスラウェシ島です (または星やカニなどに例えられる)。

バンジャルマシン@カリマンタン
カリマンタンは、東南アジア最大級の熱帯雨林を有する島であり、自然の宝庫として知られています。また、インドネシア、マレーシア、ブルネイの3カ国にまたがる「ボルネオ島」のインドネシア領部分を指す名称です。
先住民族 (ダヤク族など) が独自の文化を維持し、またマレー文化とイスラム文化が融合するなど、複数の民族が共存する多民族社会です。それゆえ郷土料理も多彩ですが、自分が訪れたのはバンジャルマシンだけ。
バンジャルマシンは南カリマンタン州の州都で、「水の都」「東洋のベニス」などと呼ばれる、川と運河に囲まれた都市です。その地理と文化背景から、川魚や香辛料を使った料理が多く、甘辛い味付けが特徴です。甘さ・辛さ・酸味がバランスよく重なり合い、他の地域のインドネシア料理とは一味違った優しさと深みがあります (と、ChatGPTが言っている)。
■ソト・バンジャル
バンジャルマシンのご当地スープといえば、ソト・バンジャル。ソト・アヤム (チキンスープ) と何が違うのかよくわかりませんが、ロントン (お米をギュッと固めたお団子) が入っているのが特徴なのかな。白濁した薄い黄色いチキンスープはコクがあって後を引く味わい。美味しいです。

■サテ・キジャン
キジャン (鹿) のサテ。ソースは鹿の血が使われているそう。インドネシアで食べたどのサテよりも、いや、人生で食べてきたあらゆる焼き鳥・串焼きの中で、トップクラスの美味しさでした。あまりの美味しさに鹿の乱獲が進み、今では希少な料理になってしまったそう。

■川魚
淡水魚のナマズやライギョがよく食べられています。自分はガイドさんのおすすめでライギョ (現地名ハルアン) をいただきました。骨が少ないので食べやすく、地元でも大人気だそう。市場でもたくさん売られていました。


■ジャックフルーツのスープ
料理名や地元料理なのかもわからないのですが、ハルアンと一緒にいただいた、ジャックフルーツとかぼちゃのスープが美味しかったです。ココナッツクリームの風味がよく合いました。

■クトゥパッ・カンダンガン
南カリマンタン州でも料理が美味しいことで知られるカンダンガン地方のひと皿。クトゥパッ (ヤシの葉やパンダンの葉で編んだ容器にお米を詰めて炊いたご飯) に載せる具は、自分はチキンをチョイス (他にハルアンと煮卵もありました)。ココナッツカレーの濃厚さと甘辛チキンが絶妙にマッチして、とびきり美味しかったけれど、カロリー高そう。

ちなみに、クトゥパッはギュッと押し固められた食感からでしょうか、インドネシアでは団結・純粋・祝福の象徴として、レバラン (断食明けのお祭り) などで家族や友人にふるまわれる、縁起物のご飯です。
■ナシ・クニン
直訳すればイエローライス。インドネシア各地にありますが、バンジャルマシンでも地元料理として紹介されていました。ターメリックの軽い苦味が新鮮、甘辛チキンとよく合いました。バンジャルマシンのチキンは味が濃くてご飯によく合いました。

■ビンカ
南カリマンタン (バンジャルマシン) の郷土菓子。バンジャル族の伝統文化の一部であり、祭りや結婚式、ラマダン明けのお祭りなど特別な場でよく作られるそう。自分は水上マーケットで買っていただきました。たい焼きの生地がものすごくウエットになったような食感、甘さ控えめで美味しかったです。

スラウェシ島
スラウェシ島は四つの細長い半島が中心部から伸びる、非常に複雑な海岸線を持ち、山が多く、内陸はアクセス困難な場所もあります。熱帯雨林とサンゴ礁が広がり、生物多様性が非常に豊か、さらに民族も多様です。
主な民族・文化圏:
・トラジャ族:独自の死者儀礼・住居で有名(南スラウェシ高地)
・ブギス族・マカッサル族:伝統航海術に長けた海洋民族
・ミナハサ人:キリスト教徒が多く、北部で独自の料理文化を持つ
・ゴロンタロ族:独特の言語と舞踊文化を持つ中小民族
自分が訪れたのはマナドとマカッサルだけなので、ふたつを紹介します。他にもトラジャとか行きたかったですが、アクセスの関係である程度日数を確保しなければならず、結局最後まで行くことはできませんでした。
マナド
マナド料理の印象は、第一に辛い!どの料理もチリ (特に赤唐辛子) をたくさん使い、とにかくかなり辛いです。レモングラスやタマリンド、トマトをよく使うので、そこに酸味もプラス。海の幸と山の幸が豊富で、キリスト教文化の影響があり、豚肉や犬肉などイスラム教で禁じられている食材も使われます。とくにコウモリは有名。
■チリソース
リチャ・ロアはイカン・ロア (トビウオの一種) の燻製が入ったピリ辛調味料 (茶色い方)、ダブダブは唐辛子・トマト・タマネギあたりを刻みレモンの絞り汁で和えた調味料。こちらは酸っぱくて激辛でした。マナド訪問初日、まずこれで、マナド料理の辛さの洗礼を受けました。

■クア・アサム
白身魚とレモン、レモングラス、トマトその他で仕上げたあっさりスープ。よく効いた魚の出汁と塩味と酸味が絶妙で技ありの一品。魚は何種類もあるのでお好きなものを。この日はオチをチョイス。アジの一種かな。美味でした。

■ナシ・ゴレン
インドネシアのどの町に行ってもナシ・ゴレン (炒飯) はありますが、マナドはさすが港町、魚が使われていました (たぶんイカン・ロア)。写真を見ても分かるとおり、赤唐辛子がどっさり。とても辛かったけれど、箸が止まらない美味しさでした。

■ブンガ・パパイヤ
アチェ料理でも紹介しましたが、マナドでも食べました、パパイヤのつぼみのサラダ。ほろ苦いのが美味しい。しかしマナドはやはり辛かった。

■ティヌトゥアン
インドネシア各地にブブル (お粥) がありますが、ティヌトゥアン (別名ブブル・マナド=マナド粥) はマナドの朝食の定番。黄色くて緑の野菜が多めに入っているのが特徴かな。甘みがあって優しい味で、朝食にうってつけでした。

■ミー・チャカラン
チャカラン (カツオ) の出汁が効いたラーメン。塩気のあるカツオのほぐし身も乗っていました。スープは日本人の味覚にバッチリ合います。麺はモソモソでいまいちでしたが。インドネシアのインスタント麺ブランド「インドミー」は各地のローカルスープラーメンを発売していますが、マナドではミーチャカラン味が売られていました。


■ミー・ラオラオ
マナドはキリスト教徒が多数を占める町で、そのため地元のミナハサ料理では豚肉を多用します。これは塩胡椒で焼いた豚肉と揚げた豚皮が乗ったラーメン。普通に美味しかったです。

■ナシ・クニン
ターメリックの黄色が鮮やかなインドネシアの炊き込みご飯。写真ではわかりませんが、マナドではカツオ出汁で炊くので、日本人の口にとてもよく合います。上にかかっているのはカツオの甘辛煮 (牛肉も入っている)。さりげない逸品。

■カツオの魚卵とコウモリ
ジャカルタのマナド料理屋でいただいた、カツオ魚卵の煮物と、パニキ (コウモリ) のカレー。どちらも辛すぎて味はよくわかりませんでした。とにかくバカみたいに激辛で、久しぶりに辛さで脳天がジーンとしびれました。それぞれ半分も食べないうちに涙目になってきて、ほどなくギブアップ。写真の奥に写っている、マナド名物クラッパータルトの甘さで癒やされました。

■マナドのお菓子①
クエ・クッ・メラ (赤)
すりおろしたココナッツを椰子砂糖 (グラ・メラ) やバターで甘く煮たウンティ (Unti) を、食紅で着色したもち米粉の生地で包んだお菓子。味は和菓子 (おもち)。中には茶色いウンティがたっぷり!とは言いにくいな・・・。
クエ・クッ・ヒジャウ (緑)
あんこが緑豆 (ちょっときなこっぽかったのでもしかしたら大豆)。赤いのよりもこちらの方が優しい甘さ。あんこのお餅が食べたいときはこれでOK。
ドドル・マナド (白い葉っぱ)
豆系ではなくデンプンを使っているので、葉っぱで包まれたのを取り出す時ちょっとベトベトします。甘さ控えめ、シナモン風味、ヒマワリの種 (たぶん) 入り。さっぱりしていて何本でもいける。
チュチュール (茶色いUFO)
もち米粉に椰子砂糖とシナモンを加え、椰子油で揚げたお菓子。周りの独特な形は整形したものではなく、揚げると自然にできる形だそうです。中はモッチリ、周りはカリカリ。美味しいけれどかなりヘビーなお菓子。
ラランパ (緑の葉っぱ)
もち米をバナナの葉で包んで焼いたおやつ。けっこう脂っぽいです。具はピリ辛のカツオフレーク。インドネシアで会議に出ると必ずスナックボックスが出てきますが、これがよく入っています。
パナダ (揚げパン)
ピロシキのような形をした揚げパンで、生地はほのかに甘く具はピリ辛のカツオフレーク。マナドでポピュラーな調理パンです。これもスナックボックスの常連。


■マナドのお菓子②
パネクッ (緑色)
もっちり&しっとりのクレープ生地でココナッツのあんこ (ウンティ) をくるんでいます。ひと口食べれば口の中が幸せ。
コピコピ (茶色)
しっとり&かなりきめ細かなパンケーキ。そのままだと口の中の水分をかなり持っていかれますが、お茶と一緒に食べればサラッと溶けてなくなります。甘さ控えめ。
コヤブ (葉っぱ)
中身はココナッツフレーク。ウンティというよりはグラメラ (椰子砂糖) を煮詰めたような甘いのが入っています。甘くてくどくて虫歯に響く。1個食べたら大満足。
アパン (小丸)
小麦粉の揚げパンかな。あんこなし、素朴な甘さ、松の実が少し。揚げたてはきっと絶品だろうな。子供の頃こういうのを食べた記憶が。懐かしさ No.1。
ビアポン・ウンティ (大丸)
ウンティが入ったあんまん。ウンまん? ウンティはこってり強烈な甘さなのでカロリーが恐ろしいことになっていそうですが、でもだからこそ美味しいんですよね。どれも1個80円くらい。トラジャコーヒーと一緒に全部美味しくいただきました。


マカッサル
スラウェシ島南部の都市マカッサルの料理は、濃厚で滋味深く、肉を活かした料理が多いのが特徴。また、かつての海洋王国「ゴア王国」時代の影響や、ブギス族・マカッサル族の食文化が色濃く残っています。
■チョト・マカッサル
「チョト・マカッサル=モツ煮込み」と思い込んでいましたが、実際にはお肉 (ダギン) もあります。モツの現地語がわからなくてダギンを注文しましたが、後で見たキッチンの大鍋には美味しそうなモツが。惜しいことをした。
スープにはビーフの旨味がたっぷり。香辛料がきつくなく、日本人の味覚にも合います。ライムを絞るとさらにさっぱりいただけました。とても美味しかったです。


こちらはジャカルタのマカッサル料理屋でいただいたモツのチョト・マカッサル。味に深みがあってすこぶる美味しかったです。

■クトゥパッ
バンジャルマシンのクトゥパッ (ヤシの葉などに包んで炊いたご飯) は大きめでしたが、マカッサルのものは小さめで葉っぱに包まれたまま出てきました (普通はこのサイズみたいです)。食べたい分だけ開けて食べます (その分支払い)。

■ソプ・コンロ
牛スペアリブのスープ。スープは濃い目の茶色、ビーフの旨味がたっぷりで塩味控えめなのがグッド。お肉はよく煮込まれホロホロ、独特のスパイスのおかけで味に深みがありました。

■コンロ・バカル
牛スペアリブのグリル。バカルというわりにあまり焼いた感じはしません (ちょっとは炙っているかも)。お肉はとても柔らかで、たっぷりかけられたピーナッツソースがインドネシアっぽいなあと。大変お美味しくいただきました。

■ハコフグ
新鮮な魚介が自慢のマカッサルの名物料理、クドゥクドゥ (ハコフグ) の天ぷら。見た目のインパクトは人生最大級。そして、お味の方も極めて良好。繊細な白身は天ぷらが殊の外合っていました。


おまけ
ジャカルタでいただいた珍しいパスタ。こういう料理が成立するのも、インドネシアの多彩なサンバル (チリソース) のおかげですね。
■スパゲティ・サンバル・トゥラシ
Sambal Terasi はエビの発酵調味料を使ったインドネシアのチリソース。写真は一見普通のトマトソーススパゲティですが、甘いトマトをたっぷり使ったソースは、サンバルのおかげでピリッと辛く引き締まり、濃厚なエビの風味と発酵調味料独特のコクが相まって、イタリアンから一気にインドネシアンテイストに様変わりしていました。

■スパゲティ・サンバル・マタ
Sambal Matah はバリ島のサンバルで、チリ・赤タマネギ・レモングラス・ライム・油などからできています。火は通さず、生。これも独特の味でした。基本、塩と油の味で、いわばペペロンチーノ。すぐ味に飽きてしまいそうですが、ここにレモングラスの爽やかな風味、そしてチリがアクセントに加わることによって、最後まで美味しくいただくことができました。まあ美味しいというか、摩訶不思議な味。

以上です。まだまだ食べていない郷土料理が山ほどあります。広大な国土と多くの民族・文化・伝統を持つインドネシア、奥が深い国だなあ。