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インドネシア各地の郷土料理(2)ジャワ島・バリ島

インドネシア各地の郷土料理 (自分が食べたもの) を紹介するこのシリーズ、スマトラ島・ニアス島 (⇒コチラ) に続いて、首都ジャカルタがあるジャワ島と、その東隣のバリ島です。

まずはジャワ島から。他の島と同じくジャワ島も広大で (東西約1000km)、郷土料理も地域による違いや歴史・文化的背景が深く反映されています。

ジャワ島の郷土料理の主な特徴は次のとおり。

(1) 地域ごとの味の違い
●中部ジャワ (ジョグジャカルタ、スラカルタなど)
 -味の特徴:甘めの味付けが主流
 -代表料理:ジャックフルーツを甘く煮込んだ料理 (グドゥッ)、ココナッツミルクで炊いたご飯とおかずのセット (ナシ・リウェッ)

●東ジャワ (スラバヤ、マランなど)
 -味の特徴:辛味と酸味が強め、スパイシー
 -代表料理:黒いスープ (ラウォン)、牛の鼻 (ルジャッ・チングル)

●西ジャワ (バンドンなど) ※スンダ料理圏
 -味の特徴:素材の味を活かし、さっぱりした料理
 -代表料理:円錐形に盛った黄色いご飯の周りにおかずを盛り付けたお祝い料理 (ナシ・トゥンペン)

(2) スパイスと調味料の豊富な使用
赤小玉ねぎ、ウコン、ラオス (生姜)、レモングラス、コブミカンの葉などを多用。サンバル (唐辛子ペースト) は欠かせない存在で、地域や家庭によってレシピが異なる

(3) ご飯を中心とした食文化
主食はご飯(ナシ)、ナシ・ゴレン (炒飯) やナシ・クニン (ターメリックご飯) など、バリエーションも豊か、ご飯 (白飯) を食べないと食事をした気がしないとよく言われる (KFCにも白飯セットあり)

(4) 植物性たんぱく質の活用
テンペ (発酵大豆の固まり) はジャワ島発祥で重要な食材、豆腐 (タフ) やピーナッツも多く使われる

(5) 文化・宗教との関係
ヒンドゥー教・仏教・イスラム教の影響が料理や食習慣に見られる、豚肉料理は少なく鶏肉や牛肉が中心、食事は手で食べることも多く伝統的なスタイルが残る

ジャカルタ

ジャカルタの先住民であるブタウィ族 (Betawi) は、17世紀にオランダによる植民地統治が始まる頃、清王朝との朝貢貿易などで栄えていました。ジャカルタは当初「ブタウィの土地」という意味を持つ「バタヴィア」と呼ばれており、その後に「ジャヤカルタ」と改名されました。

ブタウィ族は、ジャカルタの歴史において重要な役割を果たし、現在もジャカルタに住む住民としてその文化を伝えています。そのため、料理名に◯◯・ブタウィと名がついていれば、それはジャカルタ風の料理ということです。

ココナッツミルク、ピーナッツ、甘い醤油 (ケチャップマニス) が頻繁に使われ、中国料理、アラブ料理、インド料理、オランダ料理など、多国文化の影響を受けています。他地域とくらべて味のバランスが良く、「甘い・辛い・酸っぱい・しょっぱい」が調和していると言われます。

ジャカルタではいろいろな料理を食べましたが、地方の料理もたくさん食べたので、ジャカルタ風 (ブタウィ) はどれだったかなと考えながらピックアップしました。

ソト・ブタウィ
インドネシアでは地名がつけられた郷土料理としてのスープが各地にあります。ジャカルタの場合はSoto Betawi。牛肉や内臓をココナッツミルクとスパイスで煮込んだ濃厚なスープで、柔らかい肉、コクのあるスープ、そして爽やかなライムとサンバルが絶妙に合います。ジャカルタ名物料理として全国的に有名。

だいたいどのお店もメニュー写真では牛肉が盛り上がるほど入っていますが、実際はパッと見スープがなみなみと注がれているだけ。意外と器の底には牛肉がたくさん沈んでいるものの、メニュー写真とのギャップでけっこうがっかりする料理のひとつかもしれません。味は良いです。

ナシ・ウドゥッ
ココナッツミルクで炊いたご飯 (ナシ・ウドゥッ) に、チキン、玉子、テンペなどを添えた料理。サンバルとともに提供され、香り高く庶民的な味。辛くはないので普段のランチにもちょうどよかったです。盛り付けるおかずのパターンはいろいろあるので、これが純ジャカルタ風なのかはイマイチ不明。

ガドガド・ブタウィ
ジャカルタのガドガドサラダは、ゆで野菜、豆腐 (揚げ豆腐)、ゆで卵を、ピーナッツソースを和えたものが多かったです。ココナッツミルクやライムの風味が加えられ、より濃厚な味わいに。ロントン (米粉をバナナの葉にくるんで茹でたもの) を加えるお店も。写真は Gado Gado Bon Bin

ソプ・ブントゥッ
ソプ・ブントゥッは牛オックステールスープで、インドネシア各地にあるようです。自分はジャカルタでのみいただきましたが、ボゴールカフェのものがビーフの旨味が深く、圧倒的に美味しかったです。かのプリンセス・ダイアナも食べたという、ホテルボロブドゥールの名物料理。

サテ・アヤム
サテ・アヤム (焼き鳥) はインドネシアを代表する料理ですが、たいてい一切れが小さい上に火を通し過ぎるので、あまり美味しいものに当たったことがありません。ジャカルタの職場の近くにあった tesate のサテは、珍しくジューシーで美味しかったです。

でもこれ (下の写真)、実はサテ・アヤム・マドゥラという、マドゥラ島のサテ。ピーナッツソースとケチャップマニスを使っているのでだいぶ甘かったですが、それがまた良かったです。ジャカルタ風として、サテ・ブタウィもきっとあるんでしょうね。

くらべてサテ・カンビン (ヤギのサテ) は、もともとお肉が脂多めでジューシーなので、どこで食べても美味しかったです。こちらもどこの郷土料理というものではないような。

ドリアン
ジャカルタでも季節になると夜な夜なドリアンを求めてマンガブサルのドリアン屋台に通いました。たまに大当たり (めちゃめちゃ甘い果肉) なことがあってうれしかった。ちなみにもし甘くなかったら、店員に言えば交換してくれます。当然その分のお金は不要。

バンドン

ジャワ島西部、バンドンを中心に暮らすスンダ人の伝統的料理 (スンダ料理) は、他地域の料理とくらべて、あっさり・自然志向・素材重視な味付けが特徴です。

(1) 素材の自然な味を活かす
ココナッツミルクや濃厚なソースの使用は比較的控えめ、野菜や魚の新鮮さを活かした調理が多い。

(2) 生野菜の多用
生のキュウリ、キャッサバの葉、バジルなどをそのまま、サンバル (チリソース) を添えて、ご飯や魚と一緒に。

(3) サンバルの重要性
スンダ地方のサンバルは特にフレッシュで辛く、バリエーションも豊富。

(4) 魚・豆腐・テンペなど素朴なおかず
揚げ物や焼き魚などが主、肉よりも魚や野菜をよく使う。

生野菜、サンバル添え
スンダ料理では生野菜をよく食べると聞いていましたが、最初にお昼を食べたレストランでも豪快なサラダが出てきました。ドレッシングなし、その代わりに添えられたチリソースが激辛で、美味しいんだけれどちょっと涙目になりました。

生野菜の盛り合わせ
バンドンとその近郊は気温が冷涼で農業が盛ん、フレッシュな高原野菜をたくさんいただくことができます。そんな中でも初めて見た野菜、というか果物? 最初は豆にも見えたそれをかじってみると、トマトのような、ピーマンのような、なんとも不思議な味でした。変に青臭いこともなく、慣れれば少し甘味も感じられて、植物のエネルギーがギュッと濃縮されたような、生命感あふれる野菜でした。後日、Leunca (ルウンチャ) という名前だと教えてもらいました。

ナシ・トゥンペン
ナシ・クニンはターメリックと炊かれ黄色く色付けされたご飯、お祝いごとがあると出される料理です。日本では赤飯ですが、インドネシアは黄色いご飯なんですね。ご飯を円錐形に盛りつけ、周りにおかずを配置するトゥンペンというスタイルは、神聖な山 (火山) を模しており、神への感謝を表したものと言われています。(写真はジャカルタのレストランでいただいたもの)

ナシ・ティンベル
スンダ料理のご飯はバナナの葉に包まれ蒸し上げられて出てきます。盛り合わせのおかずはいろいろ。写真のセットはチキンもありますが、テンペ、タフゴレン (揚げ豆腐)、サンバル、野菜スープと、ヘルシー志向。

フレッシュジュース
何気なく頼んだ緑のジュースが、成分はナゾでしたがなかなか美味しかったです。野菜と果物のスムージー?スンダ料理店は食べれば食べるほど健康になるような気がしました。

インドラマユ

インドラマユは西ジャワ州に位置する沿岸地域で、人々は「海岸沿いの民」と呼ばれます。スンダ文化とジャワ文化が混在するエリアで、料理もこの文化的背景を反映しており、海産物を中心とした甘辛い味付けが特徴です。

ピンダン・ゴンビヤン
インドラマユの名物料理 Pindang Gombyang は魚の頭の料理です (カレー味)。パダンのフィッシュヘッドカレーとはまた違いますね。どちらかというとスープ。

イカン・バカル
海沿いの町なので魚介料理が豊富。イカン・バカル (焼き魚) は数種類ありましたが、地元の魚っぽいエトン (Etong) をいただきました。こちらもとても美味しかったです。

チュミ・バカル
イカ焼きも美味しかった (イカ=チュミ/Cumi)。とにかく食材が新鮮ですから、シンプルに焼いたものが一番美味しい。

ソプ・サユール・アサム
バンドンのスンダ料理に似ていたのはこの野菜スープ。トウモロコシの入れ方とかおんなじ。見た目は微妙ですけど、しみじみ美味しかったです。

ジョグジャカルタ

ジョグジャカルタはジャワ島中部に位置する歴史と文化の街で、ジャワ文化の中心地でもあります。この地域の郷土料理は、甘めの味付けと伝統的な調理法が特徴。これはジョグジャカルタ王宮文化の影響とされ、宮廷料理でも甘い味が好まれたそうです。

ナシ・グドゥッ
ココナッツミルクとパームシュガーで甘く煮込んだジャックフルーツ (グドゥッ) をご飯に添えた、ジョグジャカルタの名物料理です。本当に甘くて、舌が甘ったるくなってしまいそうなところ、辛いおかず (牛の皮のピリ辛煮、これもジョグジャ名物) が添えられているので、最後まで飽きずに美味しくいただくことができます。 Bu Tjitro (ブー・チトロ) がおすすめ (下2枚目の写真)。

ソロ(スラカルタ)

ソロ地方 (別名スラカルタ) はジャワ島中部にある古都で、ジョグジャカルタと並ぶジャワ文化・王宮文化の中心地です。ソロ料理 (マカナン・ソロ) は、その伝統と格式を背景に持ち、味わい深く上品な料理が多くあります。

ナシ・リウェッ
ソロの名物料理で、ご飯はココナッツミルクで炊いたもの (ナシ・ウドゥッ)。このお店のセットはココナッツカレー味のチキン、ココナッツミルクを加熱してモロモロになったものなどを盛り合わせ、さらにココナッツミルクベースのカレーっぽいスープをたっぷりかけていただきました。ココナッツ三昧。テンペの甘辛煮と甘辛い煮卵もあって、全体的に甘かった。他店ではもっとシンプルなものも (下2枚目)。

バソ
バソ (バクソ) は肉団子です。とくにどの地方の郷土料理ということもなく、どの地域に行っても普通に食べることができます。ただ、ジャカルタのバソ屋は◯◯・ソロと名のつくお店も多いので、実はソロ (もしくは隣のウォノギリ) が発祥の地あるいは本場と言えるかもしれません。ソロのインドネシア人は「そんなことないよ」と全否定していましたが。でもジャカルタで食べるバソよりも確実に美味しかったです。

スラバヤ

スラバヤはインドネシア第二の都市で、ジャワ島東部 (東ジャワ州) の中心都市です。商業都市としても有名ですが、食文化も豊かで、パワフルでスパイシーな味付けが特徴の伝統料理がたくさんあります。

ラウォン
黒いスープが特徴のビーフスープ。クルワッというスパイスで色と独特の香りを出します。スラバヤの代表料理、白ご飯と一緒に、塩卵も定番。

ルジャッ・チングル
会社のスタッフにスラバヤに行くと伝えたら、「ルジャッ・チングルをぜひ食べて!」と言われました。何なんだろうと調べてみると、・・・牛の鼻?うーん、あやしい、ゲテモノか・・・?

などと思ったものの、やはり食べてみたいとなって、スラバヤでタクシーを走らせなんとかルジャッ・チングルを食べることができました (人気店は夕方で閉まってしまい、夜8時に空いているお店を探すのに苦労しました)。

どんなものかというと、ガドガドサラダに果物が入って、さらに牛の鼻の刻んだやつが載っているという、そんなもの。濃い色のピーナッツソースがかかっていて何が何だかわかりませんが (写真1枚め)、鼻をひっくり返すとかなり鼻感が (2枚め)。ソースが甘くて鼻の味はよくわかりませんでした。ゼラチン質でグニュグニュしていて、これは珍味。

バニュワンギ

東ジャワ州のバニュワンギはジャワ島の最東端に位置し、対岸にはバリ島が見えます。バリ島に最も近い地域のため、ジャワ文化とバリ文化が交差する独自の食文化が育まれました。

ルジャッ・ソト
ルジャッ・ソトは、ガドガドサラダにモツ煮込みをかけたような料理です。スープはコクがあってかつスッキリ。茹で野菜と揚げ豆腐がハーモニーを生み出し、見た目よりずっと美味しいです。

調理は目の前で行われ、野菜は何を入れるか、唐辛子は何本か、甘さはどれくらいか、終始好みを聞かれます。途中で一度味見もあり、できあがりは限りなく自分好みになるはず。

屋台で隣り合った学生はフルーツでオーダーしていました。甘酸っぱいトロピカルフルーツにビーフスープを合わせるというのは、むしろバランスが難しそう。

アヤム・プダス
バニュワンギ名物なのか不明ですが、アヤム・プダス (=スパイシーチキン) がとても美味しかったです。よくあるアヤム・ゴレンとは違って、焼き加減が上手でした。ジューシーで地鶏の旨味が口の中にジュワー。お皿の上の他のおかずは、ジャックフルーツのミルクカレーと鶏腎臓の甘辛煮。珍しく白ご飯が熱々でうれしかった。2017年当時、お茶も頼んで合計200円しないという安さでした。

バリ島

バリ島の料理は、インドネシアの他地域と共通点を持ちながらも、ヒンドゥー文化の影響を色濃く受けた独自の食文化が発展しています。宗教行事や儀式に使われる料理も多く、香辛料とハーブの豊かな香り、複雑な味わいが特徴です。

インドネシアの大部分がイスラム教である中、バリ島はヒンドゥー教が根強く残る特殊な地域。そのため、他の地域ではあまり見られない豚肉料理が豊富です。また、サンバル (チリソース) やトゥラシ (エビの発酵調味料) も多用されます。

魚介類
上の説明で豚肉料理が豊富と書いておきながら、自分がバリで主に食べたのは魚介類です。これはインドネシア人スタッフ (イスラム教徒) と一緒に行ったからですが。ランチボックスには焼き魚、サテも魚のすり身、バーベキュー (@ジンバラン) は魚と貝のオンパレードでした。出張でこんなに魚介を堪能したのは後にも先にもこの時だけ。

バビ・グリン
バリ島名物、豚の丸焼き。香辛料を詰めて丸ごと焼き上げます。祝いの席や儀式に欠かせません。写真は滞在したホテルのディナービュッフェ。

サンバル
こちらもホテルのビュッフェ。サンバルが何種類もあったのが印象的でした。ぜひ食べくらべを。

以上です。バリ島はやはりケチャが良かった。一生の思い出になりました。食事はまだまだ食べたりなかったので、いつかもう一度行きたいです。