A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

インドネシア各地の郷土料理(1)スマトラ島・ニアス島

インドネシア滞在は2年ちょっととそれほど長いものではありませんでしたが、仕事でもプライベートでも、たぶん一番国内を動きまわった国です。

出張でアチェ9回、ジョグジャカルタ8回、バンドン4回、メダン3回、1回ずつでウォノギリ、スラバヤ、ニアス島、マカッサル、マナド、パダン、バリ島、パレンバン。

旅行でジョグジャカルタ、ソロ、バリ、バニュワンギ、バンカ島、バンジャルマシン、バンドン、日帰りでインドラマユ、バドゥイ。

インドネシアの国土は日本の約5倍の広さの192万平方キロメートルで、17,000以上の大小の島々から構成されています。

主要な島は、スマトラ島、ジャワ島、カリマンタン島、スラウェシ島、ニューギニア島。これが東西約5,110km、南北約1,888kmに散在しています。

赤道直下の熱帯地域に位置し、通年27~28度の気温ですが、島によって気候風土は異なり、また各地にローカルの言語があるなど文化的相違もあります (下図は各言語の1-2-3の数え方)。

なので、料理に使われる伝統食材や調理方法も様々。似てはいますが、実はいろいろな「インドネシア料理」があるんです。

では、自分がインドネシア各地でいただいた郷土料理を紹介したいと思います。最初は一度で全島をと思いましたが、さすがに量が多かったので、まずはスマトラ島とニアス島を (上図の一番西、下に拡大図、画面に収めるため角度を傾けています)。

アチェ

インドネシアのもっとも西側にあるスマトラ島のさらに最西端、アチェ州 (州都バンダアチェ)。 ミーアチェ (Mi Aceh) という麺料理が有名です。アチェは海に面した地域なので、シーフードを使った料理がたくさん。また、アチェの料理はインドや中東の影響を受け、香辛料を多く使う傾向があります。味付けは少し辛め。

ミーアチェ
カレー風味の麺料理。汁なし (ゴレン)、汁だく (バサ)、汁あり (ルブス) があります。ジャカルタでも食べられますが、やはりアチェで食べたものの味には及びません。個人的にはもっとも美味しい麺料理のひとつ。おすすめ店は、Mie RazaliHermes Palace Hotel

アヤム・タンカップ
アチェ風のアヤム・ゴレン (フライドチキン) は、素揚げされたカレーリーフやパンダンリーフ (パンダナス) の緑が目にも鮮やかな一品。鶏肉にもよく下味がついていて、外はパリッ、中はジューシー。もちろん緑の葉っぱもいただきます。サクサク軽い食感でほのかなハーブの香りが口の中をリフレッシュしてくれました。

アチェは普通のアヤム・ゴレンも美味しかったです。インドネシアの各島のうち、個人的にはアチェ料理が一番口に合いました。

カリー・カンビン
アチェ料理で何を食べるべきかと地元人に聞いたところ、カリー・カンビン (直訳=ヤギカレー) はぜひと言われ、Hasan 3 (Tiga) というお店でいただきました。このお店はスパイスが特別で大人気なのだそう。

スィー・ルボー (Sie Reuboh=Daging Rebus)
アチェブサルの郷土料理。お肉の煮込みですが、お肉もスープもとにかく酸っぱい。なぜならお酢を入れるから。この料理、作ってからなんと1ヶ月、いやそれ以上ももつんだそうです。恐るべし、お酢。料理はまた味がいいんです。大好き。

サメの煮込み (カレー味)
アチェ料理と銘打たれたお店に行くと、パダン料理と同じで小皿に盛ったおかずが次々とテーブルに運ばれてきます。好きなものだけ手を付け、精算は食べたお皿の分だけ。そんなお皿の中に、サメの煮込み (カレー味) がありました。おそるおそる食べましたが、白身でさっぱりしていてとても美味しかったです。

漁業が盛んなのでシーフード料理がたくさん。貝のカレーもあるしフィッシュヘッドカレーはライギョでした。

バナナの花 (つぼみ) のカレー
インドネシア各地にもあるかもしれませんが、自分が食べたのはアチェでした。シャクシャクした食感がナイス。

パパイヤの花サラダ (ブンガ・パパイヤ)
パパイヤの花 (つぼみ) のほろ苦さが後を引く。インドネシア各地にありますが、アチェでいただいたものは苦さほどほどで美味しかったです。

コーヒー
コーヒー豆 (アチェガヨ) の産地であるアチェ州。現地でコーヒーを注文すると、こんな感じで淹れてくれます。できるだけ高い所から、何度もお湯 (コーヒー) を通します。一見、雑な淹れ方ですが、できあがるとこれが不思議と美味しいんです。

ドリアン
メダンのドリアンが最高と言う人も多いですが、個人的にはバンダアチェ郊外の路上で買ったドリアンが一番美味しかったです。果肉がオレンジ色で、口に入れるとねっとり濃厚なクリーミーさとほどよい甘さに加え、ブランデーのような芳しい香りと上品な苦味が口の中に広がりました。

パダン

パダン料理は西スマトラ州パダン地方の伝統料理です。ナシ・パダン (Nasi Padang) とも呼ばれ、多様な副菜を盛り合わせたスタイルが特徴です。香辛料とココナッツミルクを使い、長時間煮込む料理が代表的。特に牛肉を煮込んだ「ルンダン」は有名で、辛味とココナッツの風味が特徴。

ルンダン
CNNトラベルで「世界一美味しい料理」に選出されたこともあるこの料理、カレーと言うよりは牛肉煮込みですが、汁っぽくはなくトロッとしたルウ状のソースをまとっているので、カレーと言っても差し支えなさそう。色は赤茶色でルウ (ソース) は少なめ、甘みもありますがやはり辛味が強く、味わいは鮮烈。他の料理にくらべると値段は高めで、高級おもてなし料理です。

小皿料理
パダン料理店ではショーケースに数多くの小皿料理が並べられ、席につくと何も言わなくても店員が適当に見つくろってお皿をテーブルに運んできてくれます。もちろん、お好みの料理も注文可。お客は好きなお皿だけ取って手を付け、食べた分だけ支払うシステムです。(※注:近年では衛生的な観点から注文した料理のみが供されることが多くなっている、との情報あり)

下の写真はパダン料理のチェーン店「Sederhana (スドゥルハナ)」(2017年)。ジャカルタにも支店がいくつかありましたが、パダンのお店は料理も少し変わったものがありました。どれも美味しかったです。

こちらはジャカルタのスドゥルハナ。1人で入っても10皿以上運ばれてきました。

マトンカレー、美味しかったです。ココナッツの甘さとスパイスの刺激が、日本でもインドでもタイでもなく、やはりインドネシアのカレーだなと思いました。

ニアス島

パダンから北西約500kmの海に浮かぶニアス島の料理は、パダン料理と同じく小皿料理があり、またキリスト教徒がいることから豚肉がよく食べられています。肉、魚、野菜に唐辛子をたっぷり使用した料理が特徴と言われています。

小皿料理
たくさん運ばれてきた中から牛スープ、チキンカレー、青菜のグリーンカレー味をいただきました。もちろん食べた分だけチャージ。お皿を運ぶご主人の左腕をご覧ください、すごいテクニック。

豚肉料理
ニアス島の初日はレンタカーの運転手がイスラム教徒だったため、豚肉を出すお店にうまくたどり着けませんでした。2日目は、メダンから一緒に来てもらった案内人 (バタック人) と一緒に彼おすすめのバタック料理店へ。

3皿豚づくし。サクサン (豚肉と血のシチュー)、バビ・パンガン (ローストポーク)、豚足スープ。どれもコッテリで美味しかったです。お店のご主人はニアス人、奥様 (シェフ) がバタック人とのことでした。

魚介のグリル
イカン・バカル (焼き魚)、ウダン・バカル (焼きエビ) をいただきました。真っ黒焦げにも見えますが、甘辛のタレで香ばしく焼き上げられていて、見た目よりずっと美味しかったです。

ガトガドサラダ
インドネシア各地で食べましたが、ニアス島のガトガドは空芯菜メインで少し毛色が異なり、これがまたピーナッツバターとよく合いました。このサラダで白飯をいただきましたよ。ニアス島南部はレストランもメニューもだいぶ限られていたのは仕方ないところ。

メダン

メダン料理の魅力は、インドネシアの多民族社会を反映した多彩な味にあります。メダンは華人 (中華系)、バタック人、マレー人、ミナンカバウ人、インド系住民など多様な民族が共存する都市です。そのため、メダン料理とひと口に言っても、各民族の特徴が現れるバラエティー豊かなものです。

豚肉料理
バクミー (ラーメン) には豚チャーシューが入っているし、揚げ豚や豚肉スープなども普通にあります。見た目はジャカルタと変わらないインドネシア人なのに、豚肉を食べる人が多くて不思議な気持ちになりました。

小皿料理
メダンでも小皿料理 (好きなものを取って食べる) は一般的でしたが、自分は1回行っただけかな。つい豚肉ばかり食べに行っていました。レストランの系統 (対象民族) が異なるので、小皿料理 (パダン料理) のお店には豚肉はありませんでした。 

ドリアン
メダンはドリアンを始め様々なフルーツが年中各地から集まります。ここからジャカルタなどの大都市に出荷されるため、ジャカルタで食べるドリアンはだいたい「メダン産」と聞かされました。ドリアンは当たり外れがあるので難しいですが、自分にとってインドネシア最高のドリアンは、やはりアチェで食べたものかな。

パレンバン

パレンバンはスマトラ島南部にある都市で、ムスリム文化とマレー文化の融合、そして川と海の幸を活かした料理で知られています。特に、魚を使った料理が中心で、インドネシアの中でも他にないユニークな味わいを持っています。

ペンペ (Pempek)
パレンバンの名物料理で、魚のすり身とタピオカ粉を練って成形し、茹でた/蒸した/揚げたもの。日本の練り物製品と同じですね。パレンバンの仕事を終えジャカルタに戻る日、一緒に行ったインドネシア人がお土産にすると言って大量のペンペを買っていました (みんなキロ単位で購入)。

ミーチェロル
パレンバンでは別の名物、ミーチェロル (Mi Celor) もいただきました。コナッツミルクたっぷりで小エビの出汁がよく効いたトロトロスープが濃厚な味わい。ゆで卵は必ず載っているものなんだとか。

川魚料理
パレンバンはムシ川沿いに発展した水の都なので、川魚を使った料理も有名。とくにイカン・パダン (ナマズ) は白身で美味しいと言われています。下の風景写真 (ムシ川) が白くかすんでいるのは、この時パレンバンは森林火災の影響で町が煙に覆われていたからです。

ここでもスドゥルハナ (パダン料理)
パレンバンでは結局スドゥルハナにも行きました (連れて行かれました)。インドネシア人にとってはもっとも無難かつ確実に美味しいレストランということなのでしょう。多人数で食べる時にも楽ですし (この時も7~8人で訪問)。ルンダンもフィッシュヘッドカレーも、もちろん美味しいですよ、異論なし。

以上、スマトラ島とニアス島で食べたインドネシア料理でした。