A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

ヨルダンのオリーブ(編集再録)

樹齢3000年のオリーブ!?

旧約聖書の創世記によれば、大洪水の後、ノアが放った鳩はくちばしにオリーブの枝をくわえて帰ってきたそうです。地中海東岸では、紀元前3000年代にはすでにオリーブを栽培し、油をしぼっていたと言われます。

初期ヘブライ語のアルファベットも、アレフ (牛)、ベート (家)、ギメル (ラクダ)、ザイン (オリーブ) の4つから始まっていました。つまり、家畜、住居、輸送、農耕という文明の4つの柱を示していたわけです。

かのダビデ王も、オリーブ油をもっとも大切な宝のひとつと考え、イスラエル部族の中から最もすぐれた者にオリーブの世話をさせたという記録が残っています。また、イエスはオリーブの園で祈り、さらに彼が刑に処された十字架もオリーブの木でできていました。

ヘブライ語のメシアとギリシャ語のクリストスは、いずれも「聖油 (オリーブ油) を注がれた者」を意味し、イエスの通称 (キリスト) となりました。

このように、オリーブは中東地域とはとても縁が深い木です。現代のアラブ料理にもオリーブは欠かせません。食卓には塩コショウとともにオリーブオイルが置かれ、オリーブの漬け物はヨルダン人の大好物となっています。

ある食事会の席で、ヨルダン北部イルビド近郊のティブネ村に残るローマ時代のオリーブの木のことを知りました。その後、職場でイルビド出身のスタッフに聞いてみると、「ティブネもいいけどうちの村のオリーブも古いよ」ということだったので、さっそく彼の実家があるサハム村 (イルビド近郊) に連れて行ってもらいました。

そこで見たオリーブの木は、背は高くないものの、さすがに堂々としたものでした。幹のうち根元あたりの一番細い部分を測ってみると、それでもなんと胴回りが5.6メートルもありました。ローマ時代のものかと聞くと、それより前のギリシャ時代のものだという言い伝えが残っているとのことでした。樹齢も3000年と言われているそうです。

当時、この地域にあった野生のオリーブにギリシャ人が目を付け、このあたりではサハム村を拠点に栽培を始めたのだそうです (村の言い伝え)。なんでもサハム村の土地を掘るとギリシャ時代の遺物が出土し、ときどき村人が掘り当ててはお小遣い稼ぎをしているのだと聞きました。なんともうらやましい。

職場のスタッフに連れられて、樹齢3000年とも伝えられるオリーブの古木を見た時は、予想をはるかに超える堂々とした風格に、いたく感動したものです。その時は、おそらく村で一番大きな木を見せてくれたのだろうと思っていましたが、その後1人でドライブがてら再びサハム村を訪れると、本当にまあ、あるわあるわ。

前回見た木のまわりを10分も歩いていると、同じ大きさかそれ以上のものが、すぐに10本ほど見つかり、幹の直径が2メートル以上の木も数本ありました。古木の根元に腰を下ろすと、しばし空を眺めながらしみじみと感慨に浸りました。3000年という悠久の時の流れを感じる、、、ことはできたのかな。

ちなみに、インターネットでイタリアにある樹齢1200年と伝えられるオリーブの木を見たところ、思いの外細く、くらべたらますますヨルダンの樹齢3000年説に信憑性を感じました。

春はオリーブ畑に花が咲き誇り、こちらも大変美しい光景でした。

道端のオリーブ屋

アンマンの自宅の前の道端にスイカの露店ができたのは6月くらいのことです。暑い盛りにはテントの中に山のようにスイカが積まれていました。何度かスイカを買って店のおじさんとは顔見知りになり、値段も多少まけてくれるようになりました。

しかし10月になりだんだんと秋の気配を感じるようになると、スイカは補給されなくなり、少しずつ山も小さくなっていきました。そろそろおじさんも田舎に帰るのかなと少し寂しさを感じていたとき、新しく品物が並べられているのに気がつきました。オリーブです。

挨拶しに行くと、オリーブはパレスチナから運ばれた今年の初物だと言われ、割高なのを承知で買うことにしました。実は、そのまま絞ればオリーブオイルがとれるものだと勘違いしていて、「10kgちょうだい」と気軽に注文してしまいました。

おじさんは満足げにうなずき、大きなハンドルの付いた漏斗のような機械にオリーブをザラザラと入れ、ハンドルをぐるぐる回し始めました。最初にオリーブに塩をまぶした時点で「おや?」と思ったのですが、とりあえず機械の下の方からオリーブオイルが出てくるものだと信じて、出口の一点をじっと見つめていました。

しかしそこから出てきたのは適度につぶされたオリーブで、オイルなど1滴も出てきません。「おじさん、これは何?」とたずねると、「何日かおけばちょうど良い塩加減の漬け物ができあがるよ」と笑顔で言われました。

ガーン。最初に言ってほしかった…。というか「オイルになるんだよね」と聞かなかった自分が悪いんですけど。もっとも、その後インターネットで調べてみると、オリーブオイル作りはとても難しいということがわかりました。そもそも道端でできるようなものではなかったわけです。

オリーブの塩漬けはとても美味しかったのですが、大半は食べきれず、大家さんにあげたり職場で配ったりしたのでした。

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以上です。5月26日の誕生花がオリーブということで、過去記事からこれらをピックアップしてみました。