以前「自分は何を食べてきたのか」であげたお肉は「鶏・牛・豚・羊」だけでしたが、もちろんこれ以外の、ちょっと珍しいお肉もあれこれ食べてきました。
珍しいと言っても、日本ではあまりお目にかからない、あるいは日本でも地域によっては普通だけれど、多くの人にとっては縁遠いものという意味です。
あくまで一般的には珍しいであろうお肉をあげましたが、中には「そんなの普通だよ」と思われる方もいるかもしれません。まあそこは広い心で、何卒。
■馬 (日本、ウズベキスタン)
8月29日は「馬肉 (829) の日」ということで、これを書こうと思いつきました。日本でも熊本や山梨は馬肉が有名で、自分は静岡 (清水) から国道52号線で山梨に行くことが多く、昔からときどき馬肉を食べる機会がありました。(写真:馬肉丼@道の駅とみざわ)
ウズベキスタンは馬肉の腸詰め (カジー) がプロフのトッピングの定番で、他にもノリンやベシュバルマク、ヌハットシュラックなど、カジーを食べる機会は多いです。日本でこれまで食べてきた馬肉の総量を、ウズベキスタンの1年間で超えたことは間違いありません。
■亀 (シンガポール、エジプト、トンガ、インドネシア)
最初に食べた亀肉は、シンガポールのホーカーズ (屋台街)。亀の絵が掲げられたお店でスープをいただきました。すっかりスッポンスープのつもりでしたが、食べ終わった後に調理場の奥をのぞき込んだら、「草亀」と漢字の張り紙が。もしかしてスッポンではなかった・・・?
続いてエジプト。アレキサンドリアのフィッシュマーケットでウミガメの肉を購入。カイロに戻り自宅で鍋にしていただきました。お肉自体は美味しかったです。ちなみに、アレキサンドリアの地元民は行列を作ってウミガメの生き血を飲んでいました (循環器系の病気に効くそう)。
次にトンガ。フィッシュマーケットでよくウミガメの肉を売っており、一度買って焼いて食べました。トンガではまだ禁止されていませんでしたが、サモアではずっと前にウミガメの捕獲は禁止になったと聞きました (もしかしたら特定のエリアだけかも)。
トンガ水産局による警告表示板。一定の大きさ以下のものは捕獲禁止です。
サモアについては、アメリカの援助機関が援助をする代償としてサモア政府に申し入れ、これを受け入れたそうです。こんな交換条件を出すドナーの態度ってどうですか。いつも捕鯨であれこれ言われている日本人としては、複雑な気持ちになりました。
ジャカルタ北部のマンガブサルは中華系の人々が集まる地域です。中華料理屋では豚もお酒も使われ、なんら本国と変わりないラインナップでした。スッポンを出すお店もあって、疲労感が抜けない時は食べに行っていました。食べた翌朝はたしかにスッキリ。
■蛇 (インドネシア)
こちらもジャカルタのマンガブサル。中華料理屋でいただいた揚げたて熱々の蛇のフライは、あらゆる唐揚げの中でトップレベルの美味しさでした。ちょっと骨っぽい (細い骨が多い) ので若干食べにくかったですが。
マンガブサルの路上屋台には蛇 (コブラ) を扱うお店もあって、一度だけ串焼きをいただきました。ほぼタレの味でしたが美味しかったです。あと生き血。小さなカップに甘いお酒と生き血が何滴か。正直、味はよくわかりませんでした。
■蜥蜴 (サウジアラビア)
アラビア半島やシナイ半島の砂漠 (土漠) に生息するトゲオアガマ。現地名をダッブ (ズッブ) と言って、現地の人は昔から食用にしてきました。自分は職場のサウジ人に誘われて、一度ダッブ獲りに行ったことがあります。その時の様子はコチラ。
ちなみにこの時はサウジ人も驚くほどたくさん獲れてしまいました。一旦我が家で預かり。その日の晩はガサゴソという物音にビビり倒していました。
見た目はいかついダッブ、とくにトゲトゲの尻尾は凶悪そのものです。しかし表皮を湯剥きすると、きれいな白身が現れます。小気味よい食感のお肉は淡白でとても食べやすく、トマト風味の煮込みが素晴らしく美味しかったです (サウジ人が我が家で調理してくれました)。
■駱駝 (サウジアラビア、ヨルダン)
中東では普通に食べられています。サウジアラビアではスーパーマーケットで常に売られていて、自分は時々ハンバーグや煮込みにして食べていました。お肉は焼くとかなり水が出るので (そして固くなるので)、煮込みのほうがいいと思います。
ヨルダンではラマダン明けやハッジ (巡礼) シーズンなど特別な時に食べられていました。この期間は肉屋の店頭に首がそのまま吊るされていました (首肉が美味しいため)。ちなみに肉屋ではラクダのこぶも売られていました (BBQで焼いて食べると美味しい)。
■兎 (中東、スペイン、インドネシア)
中東ではわりと普通の食材としてスーパーマーケットで冷凍肉が売られたりしていました。自分では買わなかったですが。一度、スペインに旅行した際、地元の名物料理をいただきましたが、とても美味しかったです。
インドネシアの路上 (パサール・グロドックの横) でウサギが売られていて、最初はペットかなと思って前を通るたび温かい目で見ていたのですが、実は食用と聞いて急に悲しくなったことを覚えています。自分は食べていませんよ。
■鳩 (エジプト、サウジアラビア)
中東ではよく食べられています。とくにエジプト。カイロのカバブギーというお店のハトのグリルは、何を食べても美味しくないカイロ生活では本当に貴重な一品でした。ギザのピラミッド近くにもたくさんハトの料理屋がありましたが、焼き過ぎとかしょっぱすぎでどこもイマイチでした。カイロの写真がなかったので、リヤドのエジプト料理屋でいただいたハトのマハシ (ご飯詰め) を。
■蝙蝠 (インドネシア)
インドネシアは巨大なイスラム国家ですが、スラウェシ島北部のミナハサ地方はキリスト教が普及しており、豚肉を含めお肉 (タンパク源) なら何でも食べると言われています。
ジャカルタにもミナハサ料理のお店がいくつかあり、そこでコウモリをいただきました。唐辛子まみれの激辛でお肉の味はまるでわかりませんでしたが、羽の部分のゴムみたいな食感は覚えています。
■鹿 (日本、インドネシア)
静岡ではたまに食べる機会があります。地元が山間部のド田舎なので、村の猟師さんが駆除した鹿のお肉を時々もらっていました。塩コショウで焼き肉にしたり、薄切りにして甘辛で煮付け鹿丼にしたり。
インドネシアのカリマンタン島にある町バンジャルマシンは鹿肉が有名で、旅行した際いただいた鹿肉のサテ (サテ・キジャン) は、それまで食べた串焼き系の中で一番と言ってもいいくらいの美味しさでした。
■針鼠 (サウジアラビア)
バトハスークの一角でたくさん売られていたハリネズミ。最初はペット用と思いましたが、実は食用と聞き、次に訪れた際、思わず2匹、救出のつもりで買って帰りました。しばらく飼って砂漠に逃がしましたが、なかなか楽しい日々でした。もちろん自分は食べていません。
ジャカルタ郊外には世界最大級のハリネズミファームがありました (⇒コチラ)。ザリガニファームも兼ねていて、名物のザリガニ料理をいただきました。(※ハリネズミは食用ではありません)
■蛙 (カタール、サウジアラビア)
日本だとフレンチのお店はちょっと気後れしてなかなか行くことができませんが、意外と海外では臆することなく行けたりします。海外と言っても中東のなんちゃってフレンチですけどね。
「シェラトンホテルのフレンチレストラン」と聞くとなんだか敷居が高そうですが、カタールとサウジアラビアにいた時、それぞれわりとよく行っていました。気取ってもいないし、値段も高くなかったし。両国でカエルのソテーをいただきました。あっさり目の鶏肉といった味で美味しかったです (写真なし)。
バンコクのバクテー屋で、カエルのバクテー (肉骨茶) がメニューにあったので注文しようとしましたが、その日は在庫なしでした。残念、食べてみたかった。
■猪 (日本)
静岡の山間部や伊豆 (天城) ではイノシシをよく食べます。なので珍しいお肉ということではないのですが、自分も何年かに1回しか食べないので、一応ここにあげました。豚肉よりもさらにしっかり食感、肉の味も濃いような、とても美味しいお肉です。
■雉 (日本)
伊豆修善寺の街道沿いでイノシシと一緒にいただいたキジ (⇒コチラ)。正直、鶏肉との違いはよくわかりませんでしたが、しっかりと噛みごたえのある皮は脂がのっていて美味しかったです。
■鴨 (日本、タイ)
日本には鴨南蛮もあるので、もはや鶏肉と同じくらいポピュラーなお肉ですが、一応あげておこうかなと。とくにタイではローストダックが美味しくてよく食べていました。焼きか茹でか (⇒コチラ)、載せるのはご飯かラーメンかなど選択肢がたくさんあっていつも迷っていました。鶏肉よりも濃い目の食感で、皮の脂分はさっぱりジューシー、本当に美味しかったです。
■ゲームミート (南アフリカ)
南アフリカに旅行した際、ケープタウンからサファリツアーに参加し、お昼に訪問したロッジのビュッフェで「ゲームミート」をいただきました。いわばアフリカのジビエ、サファリツアーで見かけるような動物のお肉です。ダチョウとあと2つ、3つ (ガゼルと何か) いただきました。
■鯨・海豚 (日本)
とくにイルカは静岡では昔から食べられてきました。今もスーパーで売られているし、回転寿司でも煮付けが回っていたりします。クジラも含め、自国の食文化を外国人から頭ごなしに否定されるのは、理不尽としか感じません。
フィジーでは、日本が大洋州地域の開発に大きく貢献しているにもかかわらず、反捕鯨 (日本叩き) の記事がときどき紙面を飾りました。イメージ悪いですよね、さすがに。まあ大洋州はオーストラリアの庭みたいなものですからね、そちらの横槍です。
ただしこれには思うところも。自国の文化 (捕鯨と鯨食) を守り継承することは本当に大切なことですが、日本人の大多数は一生食べることがないであろうクジラ・イルカのせいで、日本という国の世界的な評価が下がるのは (捕鯨につけ込まれ批判されるのは)、対価としては大きすぎるようにも感じます。
トンガのババウ島でホエールスイムをした際 (⇒コチラ)、ガイドのオーストラリア人から一言目に「あなたの国ではクジラを食べるんだよね?」とけっこう真顔で言われました。こちらからはやんわりと立場を説明しておきましたけどね。
上に書いたサモアのウミガメの話ですが、これを教えてくれたサモア人は、「国の発展のためだから多少の犠牲 (文化の放棄) はやむを得ない、ウミガメ自体にも観光資源としての価値があるし、国民は納得済み」とのことでした。
* * *
以上、我ながらいろいろ食べてきたなと。まだまだ食べてみたいものはありますけどね、トナカイとかリスとか (いずれも知人から食べた話を聞いたもの)。いつか実現するといいなあ。
※関連過去記事:珍味個人史