トルコと名がついていますが、中東全般でコーヒーと言えばいわゆる「トルココーヒー」が最もポピュラーだと思います。カフェの一番安い定番コーヒーメニューですし、自分はヨルダンでは毎日このコーヒーを職場で入れてもらっていました。
入れ方は簡単。挽いたコーヒー豆をミルクパンよりもっと小さいコーヒー専用の鍋で煮出し、カップに移したあと粉が沈むのを待って飲みます。砂糖はたっぷり。これだけなのですが、不思議と奥深い独特の味わいになり、自分も大好きでした。
一方、サウジアラビアなどアラビア湾岸諸国では、アラビックコーヒー「ガホワ」もポピュラーです。スペルをちゃんと読めばカホワ (Qahwa) ですが、サウジアラビアなどは湾岸方言でQがGの音になります。
ガホワは、コーヒーはコーヒーですが、浅く煎った豆を挽きカルダモンと一緒に煮出したもので、色は緑がかった黄色、いわゆるコーヒーの香りはあまりしません。味も苦いというよりは渋め。
これをコーヒーと言われて出されると、たいていの人は「ん?」と思うのですが、アラビア語で「ガホワ」と言われ、ベドウィンスタイルのテントで乳香を炊きながら飲んだりすると、これがまたしみじみ美味しいんです。
自分の経験では、砂糖を入れて甘くしたガホワを出されたことはありません。なので甘いものと一緒にいただくのが定番。とくにデーツ (ナツメヤシ) によく合います。ガホワの渋さとデーツの甘みが口の中で渾然一体となって、本当に美味しいなと。
ガホワは一度にあまりたくさん飲むものではなく、カップもごく小さなもの。お客さんの前で、アラビア風の金のポットを高々と持ち上げ、できるだけ細く糸のように注ぐのが現地のスタイルです。
ゲストで招かれていただく時は飲み干すたびに延々と注がれるので、「もういらない」という時は空にしたカップを左右に振って意思表示を。写真はサウジアラビアの首都リヤドのマスマク城の正面に店を構えるマクハー (喫茶店) でいただいた1杯。
最近、"Taste Atlas" でガホワ (Saudi Coffee) の記事を読み、懐かしくなって投稿しました。また飲みたいなあ、ガホワ。なお、サウジアラビアのスーパーではインスタントガホワセットが売られていて、その粉を煮出すとガホワが出来上がるというものでしたが、いくつか買いましたがどれも再現度はイマイチだった記憶が。
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■アイスコーヒー
こちらはヨルダンのネタ。大多数のアラブ人はお酒を飲まないこともあって、かわりに喫茶店 (マクハー/カフェ) が社交場として大いににぎわっています。
アンマン市内の、いつもお客で混雑している喫茶店に行ったときのこと。アラビア湾岸諸国で飲まれているアラビックコーヒーはないかとメニューを眺めていると、一番高い値段がついた「ゴールデンコーヒー」というものを見つけました。
アラビックコーヒーは黄色っぽい色をしていたので「これだ!」と思い注文しましたが、来たのはネスカフェ・ゴールドブレンドの粉末パックとお湯でした (泣)。「インスタントコーヒーの方が美味しくないくせに高いんだな」と肩を落としました。
同じ店で後日「アイスコーヒー」を頼みました (珍しくメニューにあった)。しかし、運ばれてきたのはどう見てもただのチョコパフェ。アイスクリームとコーヒー (チョコ) の組み合わせということだったのでしょうか。
また、別のお店でアイスコーヒーを頼んだら (この頃とにかくアイスコーヒーが飲みたかった)、アイスクリームを浮かべたホットコーヒーが出てきました。どちらも味的には悪くなかったですが、日本のあのいわゆるアイスコーヒーではなかったですね。
後年、東南アジアで暮らしていた時は、もう普通にどこでもアイスコーヒーが飲めるようになっていたので、それだけ世界にアイスコーヒーが普及したんだなと感慨深かったです。
そもそもアイスコーヒーって日本人が生み出したものだそうですね。だいぶ後になってこのことを知り、かなり驚いたことを覚えています。
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■ヨルダン人のホスピタリティ
ヨルダン南部、ワディ・ラムに行った帰りのこと。ハンドルを握り道を走っていると後ろから見覚えのある車が追い抜いていきました。
先ほどツアーで砂漠を走ってもらった運転手さんとそのピックアップトラックでした。彼もこちらに気付き、すかさず車を減速すると、止まれという仕草をしました。
彼は車を降りるとこちらにやって来て、 「家がこの近くなんだ、コーヒーを飲んでいかないか」 と話しかけてきました。
この時、「フィンジャーン・カホワ (コーヒーを1杯)」 ではなく 、「ファナージーン・カホワ (コーヒーを何杯も)」 と言ってくれたことは今でも胸に残っています。(※ファナージーンはフィンジャーンの複数形)
これぞヨルダン人 (ベドウィン文化を色濃く残した南部のヨルダン人) のホスピタリティ精神だなと、いたく感動したものです。