A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

ラマダンも終盤、過去記事ピックアップ

本日はラマダン月の27日ということで、いよいよラマダンも終盤です。ウズベキスタンは人口の96.3% (2009年時点) がイスラム教徒ですから、中東やインドネシアで繰り返し見てきた、ラマダン独特の風景が繰り広げられるのかと思いきや、意外にもタシケントの町は、ほぼいつもと変わらぬ平常運転。

自分の経験も、せいぜい、オフィスの社食が昼飯時に閑散としているとか、昼間アラブ料理屋 (マンディー屋) に行ったら閉まっていたくらい (ラマダン中は日没後から営業)。ちなみに、今週金曜日から来週月曜日まで、ラマダン明けの4連休だということを昨日リマインドされて、思わずそうだったとひざを叩いたくらい、ラマダンが意識から遠のいていました。

ということで、これまでに書いたラマダン関連の過去記事を、懐かしさとともにいくつかピックアップしてみました。

パレスチナ、聖夜の奇跡

イスラム暦の第9月をラマダン (断食月) と言います。この月のある夜 (27日だと信じられています) にコーランが下されたとされ、この日を「ライラトルカドル (Laylat Al-Qadr/みいつの夜)」と呼んでいます。西暦614年頃、この日、預言者ムハンマドはマッカ郊外のヒラー山上の洞窟で最初の啓示を受けました。

「本当にわれはみいつ (神威) の夜にこれ (コーラン) を下した。みいつの夜が何であるかをあなたがたに理解させるものは何か。みいつの夜は千月よりも優る。天使たちと聖霊は、主の許しのもとにすべての神命をもたらして下る。暁の明けるまで、平安である」

この啓示によって、イスラムの歴史が始まったのです。

さて、2000年のラマダン27日夜、あるパレスチナ系武装グループが一堂に会し礼拝を行っていました。それを察知したイスラエル軍は、ヘリコプター2機とコマンド75名による急襲を企てました。

ところが、現場に着かんとしたまさにその時、ヘリ同士がプロペラを接触させ、2機とも墜落してしまったのです。アラブ人はこれを奇跡だと言い、感嘆すると同時に神を畏れました。どちらが正義であったのか、アッラーが決めたからです。

迫害、自爆テロ、報復攻撃。いったい誰が、そして何が正しいのかは、まさに「神のみぞ知る」のではないでしょうか。

カイロのイフタール

「Breakfast (朝食)」とは、その名が示すとおり「Break (破る) - Fast (断食)」ですが、その昔ヨーロッパでは夜の間食事を絶つ習慣があったため、朝食べるご飯をこう呼んだのだそうです。

イスラム諸国では、ラマダン (断食月) の期間、日没後に食べる食事を「イフタール (Breakfast/朝食)」と言います。ラマダン中に「明日 Breakfast を食べに行こう」と誘われたら、それは朝食ではなく、夕食のことです。

カイロのハンハリーリスークは観光客が必ず一度は行く有名なスーク (マーケット) です。ラマダン期間中は各レストランがこぞって広場にテーブルを並べ、イフタールの食事セットを売り出すのですが、それを狙って観光客から地元人まで大勢が集まります。

ハンハリーリのイフタールメニューは有名ですから、日没の1時間近く前に行かないと席が確保できません。席を取ったら、何も口にせずじっと日没を待ちます。なにしろ周りには観光客以外にもエジプト人がたくさんいます。彼らが最後の我慢をしているときに、こちらが水など飲んではさすがに失礼です。

日没の10分くらい前から、テーブルにはイフタールの食事セットが配られます。辺りにはシシカバブの香ばしい匂いが立ちこめ、空腹のあまり頭がクラクラしますが、ここはあと少しの辛抱です。日没を迎えると、ハンハリーリの真横にあるフセインモスクから「アザーン (礼拝の呼びかけ)」が聞こえてきますから、それを合図に食事が始まります。

しかしいきなりシシカバブにかぶりついてはいけません。食事と一緒に配られた、甘いデーツ (ナツメヤシ) のジュースをゆっくり飲み干し、胃の調子を整えてから食べ始めるのがエジプト流です。

ハンハリーリ周辺は普段からにぎわっているところですが、ラマダン中はひときわにぎやかさを増します。空き地という空き地を人が埋め尽くし、それぞれのイフタールを楽しんでいます。食事の後は音楽会やダンスなど、毎晩いろいろな催し物が目白押しです。イスラム教徒にとって、ラマダン (断食月) は宗教行事であると同時に、一種のお祭りのようなものだと感じました。

カイロのラマダン

ラマダン中は普段にも増して通勤ラッシュがひどくなります。みんな「この1ヶ月くらいは勤務時間を守ろう」と思うのかどうか、いつもは30分で行ける15kmくらいの道のりが、1時間以上かかるようになります。

うちのスタッフも普通は朝1時間遅く出勤して、午後は30分くらい早く帰るのが当たり前ですが、ラマダン中はみんな真面目モードに変身していました。特に職場からの帰りの道は渋滞がひどくて、2時間かかることもよくありました。

渋滞の原因は、車が同じ時間に集中することもありますが、やはり運転マナーの悪さがあげられます。ちょっと混んでくると、たちまち反対車線を逆送する人が続出するのです。もちろん向こうからも車は来ますから、そこで車どうしが鉢合わせ、お互いにクラクションを鳴らして睨み合い、なんてこともしょっちゅうでした (というか毎日です)。

みんなお腹が減ってイライラしているせいか、クラクションを鳴らす回数も激増します。車は前に進まない、周りからはクラクションの大合唱、明らかに走行妨害している無茶な運転。こんな光景を毎日毎日見続けたら、頭がおかしくなります。エジプト生活のうち、ラマダン中の交通渋滞は思い出したくないことのひとつです。

しかしラマダン中、日没の直前になると、車が町からいっせいに姿を消しました。この時間はタクシーを拾うこともできません。タクシー運転手も家族とイフタールを食べるため家路につきますから。そして夜になると、エジプト人はまたこぞって町に繰り出すのです。交通渋滞アゲイン。

ある日のこと、ハンハリーリでイフタールをすませ、音楽会をちょこっとのぞき、夜10時頃、帰路についたときのことです。タハリール広場に抜ける高架道路はあいかわらずの渋滞で、なかなかタクシーは前に進みませんでした。

窓から下を見てみると、広場には人と車があふれ、「まだまだ夜はこれから」といったやる気満々の空気に満ちあふれていました。渋滞がひどかったので車を降りてしばらく下を眺めていたら、なんだかこちらまで楽しい気持ちになってきました。

本当に、夜更かしが大好きな人たちなんですね。エジプトに限らず、中東に旅行するならラマダン中こそおすすめです。(国によっては昼間レストランが開いていなかったりしますけど)

結婚ラッシュ@サウジアラビア

サウジアラビアではラマダンに結婚式 (契約の儀式)、ラマダン明けのイードに披露宴というのがひとつの王道パターンですが、今年 (※2008年) のラマダンは、例年になく結婚式が多いそうです。ラマダンは何かと物入りでただでさえお金が足りないのに、花婿側も大変だなぁと思っていたら、実はラマダンの結婚にはあるカラクリが。

ラマダンは聖なる月であり、この時にする善行は普段以上に良いことであると言われます。スンナ (預言者ムハンマドの言行録) には、「最も祝福される結婚は、最もお金のかかっていないものである」 と記されているにもかかわらず、世間体や因習があってどうしてもインフレになりがちなサウジの結婚式。

そこで、善行を最大限ポイントアップしようという作戦 (?) から、ラマダンに執りおこなわれる結婚では、花婿が本来支払うべき多額の結納金を大幅にまけてくれる花嫁の父がたくさん出てくるわけです。中にはわずか5000リヤル (15万円/相場の数十分の一) しか結納金をもらわなかった花嫁の父もいるそうで、周囲から尊敬の眼差しを集めているのだとか。

結婚の結納金は、両家の家柄や花嫁の器量によってぐんぐんつり上がっていきますが、やはりそれなりにふさわしい金額を渡さなければ男子一生の恥と言われます。昨今のサウジアラビアでは、海外留学や仕事を選ぶ女性が増えてきて、一度結婚のタイミング (18~25才くらい) を逃してしまうとなかなかもらい手が現れません。そうこうしているうちに30代に突入したりすると、社会的地位が上がったり学位を取っていたりで、その身にふさわしい結納金の額はさらに上がり、ますます相手が限られてしまいます。

そういった女性の親にしてみたら、結納金なんてどうでもいいから一日でも早く結婚してほしいと願うばかりでしょう。そこで、ラマダンの善行としての結納金大幅減額です。こうすることで女性の結婚のチャンスが増え、花婿側のメンツも立つし花嫁の父の徳も上がるわけですから、一石三鳥とはこのことです。

どの国も、結婚となるといろいろ大変ですね。結納金とかみんながせーのでやめちゃえばいいのに。。

ラマダンなんです@インドネシア

とくにサウジアラビアにいた時は、ラマダン中はもう完全にそういう空気がはりつめていて、職場には唾さえ飲まないという徹底ぶりを見せている人がいたり、信号待ちの運転席でうっかり水を飲んでしまったフィリピン人が、周囲のサウジアラビア人から袋叩きにされたなんて噂が流れていました。

うってかわってここジャカルタは、少なくともビジネス街である我がオフィスの周囲では、昼間もみんな普通にご飯を食べ、週末は朝からカフェがにぎわい、またそれを怒る人がいるわけでもなく、断食する人はする、しない人はしないという、とっても大人なルールができあがっています。

そんなわけで、ちょっと油断していました。ラマダン中はあちこちで中東っぽい出し物が行われていることもあり (次の写真はイスラム神秘主義スーフィーの踊りですね)、久しぶりにアラブ料理が食べたくなって、日曜の昼、「アルジャジーラレストラン」というお店に出かけたところ。。。

エントランスには「CLOSED」のサイン。扉が空いていたので中に入ってみると、お客が何人かいました。でもこれはテイクアウトの注文客。しかも受け取りは午後3時以降とのこと。まあそれはそうですよね、このお店の料理を食べたい人なんて、基本みんなムスリムだろうし。なぜラマダン中の昼間にアラブ料理店が営業していると思ったのか。我ながら情けない。。。

しかしご飯物のメニューにカブサ、マンディー、ビリヤニ、マクルーバ、あともうふたつとか、ほぼ同じ物を並べすぎではないかな。だったらマンサフを入れてほしかったし、ブハーリーライスもあったら完璧でしたね。

ということで、この日はあきらめてマンガブサルに移動、「俺の餃子」で中華料理を食べて帰宅したのでした。

ハナマサ初体験@インドネシア

ラマダン月にジャカルタを訪問していたアチェの知人ふたりと、夕ご飯を一緒に食べました。断食中の彼らにとってはディナーではなくブレックファスト(Break Fast=断食を終えて食べる食事)です。インドネシア語だと "ブカプアサ (Buka Puasa)"。

いいお店を予約してあるからと言われ、連れて行かれたのは "HANAMASA"。そう、肉のハナマサです。インドネシアには25年ほど前に進出し、今ではジャカルタだけでも8店舗くらいあるとのこと。人気店です。

金曜の夕方ということもあり、ここアンバサダーモールのハナマサもかなり混み合っていました。20万ルピア (1800円) という値段は現地食よりだいぶ高いのですが、これでお肉が食べ放題。知人たちも「ラマダン中はお腹ペコペコだから元が取れる」と笑っていました。

ふってわいたお誘いでしたが、しゃぶしゃぶと焼き肉を同時に楽しむという、なんとも豪勢な花金となりました。ああ満腹。

バンコクでイフタール@シャハラザード

本格的なアラブ料理のお店が並ぶバンコクのアラブ人街。赴任後タイ料理ばかり食べていたのですが、ようやくアラブ料理屋に行きました。あと数日でラマダンが終わるというタイミングでインドネシア人の知人がバンコクに来ていたので、一緒にイフタールをいただくことに。

知人の今回の訪問は、タイの主催者が手配したものだそうですが、滞在先のホテルでは、ビュッフェ料理のどれがハラール (イスラム的に食べてもOKなもの) か表示がなく、この何日かは確実にハラールなものだけ、少量食べていたそうです。なのでお腹はペコペコとのこと。

選んだのは、ホテル周辺でもっともレビュー数が多かったシャハラザード (Shahrazad) レストラン。アラブ人向けのアラブ料理屋ですから、もちろんすべてハラールメニューです。料理の味はどれも悪くなかったです。味はエジプト以上ヨルダン未満て感じ。バンコクで言うと "Nadimos" の方が美味しいと思いますが、あちらはご飯物がないのが残念。

サラダとディップの盛合せ、オクラと羊肉のトマト煮込み、羊肉のせご飯 (カブサ) を2人で完食。プラスお水2本で1360B/4760円は中東の2、3倍でしょうか。仕方ないですね。ターゲットは中東の避暑客でしょうし、海外で日本食が高いのと一緒。