A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

砂漠の塩田、死海の塩(再録)

「敵に塩を送る」という言葉の元になった逸話から、1月11日は「塩の日」だそうです (上杉謙信が交戦中だった武田方に越後の塩を送った⇒上杉氏は戦い以外のことで勝敗が決まるのを良しとしなかった)。ということで、過去記事から「塩」に関するものを、ふたつ。

砂漠の塩田(サウジアラビア)

リヤド北西部、250kmくらいのところにある小さな町、アルカサブ。民家もまばらで、町を貫く道路を車で走っていたら誰もその「お宝」には気づかないでしょう。その日は、サウジ人の友人から「アルカサブに行こう」と言われついてきたものの、そこに何があるのかは何も聞いていませんでした。

町を少し過ぎてから道路をはずれ、土漠の中を走ること約10分。相変わらず真っ平らな土漠が広がるばかりです。しばらくして、少し土が盛り上がっているところが見えてきました。「あの裏に何かあるのかな」と思いながらその場にたどり着くと、盛り土の手前で車から降り、その先には徒歩で進みました。

盛り上がった土の上に上がると、目の前に突然、純白の光景が広がりました。しかし太陽の光を受けギラギラと反射するそれが何なのか、最初はよくわかりませんでした。辺りを見渡してみると、ようやくそれが塩田だということに気がつきました。しかし「なぜこんな砂漠の真ん中に塩田が?」という疑問が大きくて、しばらくぽかんと口を開けていました。

友人はそんな自分の顔を見て、ニコニコしながら説明してくれました。彼によれば、ここは太古の昔海の底であったため、地中深くに当時の海水が封じ込められているのだそうです。今はそれをくみ上げ、塩田を作り、商品として出荷しているとのことでした。

確かに、リヤド近郊ではよく貝の化石が拾えますから、アラビア半島が海に沈んでいた時代があったことがわかります。しかし住民はいつこのことに気がついたのでしょう。もしかしたらどこか自然に塩が吹き出している場所があったのかもしれません。

周りには、塩田からすでにかき集められた塩の山がたくさんありました。大きめの塩の結晶をひとつまみ取ってぽいと口に放り込むと、強烈なしょっぱさが口中に広がりました。しかししょっぱいだけではなく、ほのかに旨味と感じるような後味が残って、「良い塩だなぁ」と感心してしまいました。

何キロか日本に持ち帰って母親に渡しましたが、「漬け物に使うと味が良くなる」と言っていました。建物の写真は、アルカサブの町で撮ったものです。昔の豪族の家ということですが、きっと塩で大もうけしたんでしょうね。

※元記事:サウジアラビアの観光・娯楽

死海の塩(ヨルダン)

死海の水は、海水のおよそ7倍の約27%という濃度の塩分を含んでいます。数種の微生物をのぞき、生物らしい生物は見ることができません。まさに死の海です。

塩分濃度が高いので、死海の水際には結晶化した塩の塊がそこかしこにあります。この天然塩を、よく家に持ち帰りました。料理に使うとなんだか少しコクがでるような気がしたのです。塩の塊は、空気が乾燥したヨルダンでは常にカチカチでしたが、日本に持ってくると、湿気ですぐに表面がベトベトになりました。

何人かにあげると、「味がある」とか「漬け物が美味しくなる」などと、けっこう評判は良かったです。死海といえば昔から薬効があることが知られていて、バスソルトや死海の泥が入った石けんやシャンプーなども、お土産として定番でした。

死海の塩が濃いのは、水を注ぎ込む川が少ないことが原因です。流入量と蒸発量がほとんど同じなので、水面の高さも年間を通じてあまり変わりません。見た目の水量は同じでも、水分中にとけ込んだ物質はどんどん濃くなっていくわけです。

※元記事:ヨルダンの自然