1831年12月27日、イギリス海軍海洋測量艦「ビーグル号」が世界一周の航海に出航しました。この船には、若きチャールズ・ダーウィンも乗っていました。ビーグル号での5年間の航海で得た学術調査を礎として、ダーウィンは後に「種の起源 (通称:ダーウィンの進化論)」を発表します。
この「進化論」、自分が長年暮らした中東諸国ならまだしも (科学よりも宗教といった風土があるので)、意外と欧米、というかアメリカでも、未だ懐疑論があるんだなあと。過去記事をひとつ、続けてその後の状況を書き加えてみます。
「進化論」浸透せず
■ダーウィン生誕200年、米国では 「進化論」 浸透せず
[2009.2.13] 進化論の祖として知られる英科学者チャールズ・ダーウィンが誕生して200年を迎える12日、英国の生誕地などでは記念行事が行われた。進化論は現在、生物学でも重要な位置を占めるが、米国では宗教上の理由などから進化論を否定する人が多く、授業で扱うかどうかについて訴訟に発展する場合もある。
米ギャラップが実施し、近ごろ発表された世論調査結果によると、米国で 「進化論」 を信じる人は39%にとどまり、全く信じない人が25%だった。36%は進化論に対して意見を持っていなかった。
また、昨年5月に実施した調査では、人間が何万年もかけて進化してきたと考える人はわずは14%に過ぎず、過半数に近い44%の人は、「過去1万年の間に、神が一晩で人間を創り出した」 と考えていた。
チャールズ・ダーウィンは1809年2月12日生まれ。ケンブリッジ大学卒業後に英海軍の測量船 「ビーグル号」 に乗船して、約5年にわたって世界各地を訪問。エクアドル太平洋沖のガラパゴス諸島にも立ち寄り、ここで生物の多様性について考えるきっかけを得たとされている。[CNN.co.jp]
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興味深い調査結果です。サウジアラビアでも似たようなものですが、自分がサウジ人の何人かから聞いた限りでは、サウジ人は進化論を完全否定しているわけではなくて、ある学者の研究によって得られたひとつの考え方であるという風に受けとめているようです。
人間を創ったのは神であるとするのも、進化論によって猿が進化したとするのも、両方、未だ完全には証明されていない理論のうちのひとつなんだと、そういう考え方です。わりとこちらの方が科学的な見方じゃないかなと思います。証明されていない限りは「あくまで理論」という。意外と冷静なんですよね、サウジ人て。
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進化論 vs. 創造論
2021年8月16日に学術雑誌「パブリック・アンダスタンディング・オブ・サイエンス」で発表された分析結果によると、1985年から2010年までは進化論の支持派と否定派が拮抗し、支持派は2005年時点で40%にとどまっていた。しかし、2010年以降、支持派が増え、2016年には過半数を占めるようになり、2019年時点で54%になっている。
米国では、長年、自然科学者チャールズ・ダーウィン博士が提唱した進化論と、旧約聖書の「創世記」に記された「神による天地創造により宇宙や生命が誕生した」とする創造論が対立してきた。しかし近年、より多くの米国人が進化論を受け入れつつあることが明らかとなった。
米国で進化論を受け入れる人は増加傾向にあるものの、その割合は他国に比べてまだ低い。ピュー研究所が2019年10月から2020年3月にかけて世界20カ国の18歳以上の成人を対象に実施した調査によると、米国で進化論を支持する割合は64%であり、英国 (73%)、ドイツ (81%)、カナダ (77%)、日本 (88%) など、他14カ国よりも低かった。[Newsweek]
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もしサウジアラビアで、今同じアンケートを実施したら、当時と数字に変化はないかもしれません。たとえ進化論が正しいんだろうなと思っていても、世間的にそうは言い出せない雰囲気もありますからね。そういうところ賢いし、サウジ人 (無駄な議論はしない)。
ダーウィンの名言として知られている「生き残る種とは、最も強いものではない。 最も知的なものでもない。 それは、変化に最もよく適応したものである」という言葉。含蓄がありますね。気候変動など未経験の変化にさらされている現代人だからこそ、この言葉を実践していかなければならないと思います。
ちなみに、変化への適応という観点で、過去記事をふたつピックアップ。海に入って貝を掘るようになったトンガの豚 (フィッシングピッグ) と、寒さをしのぐため温泉に入るようになった伊豆シャボテン公園のカピバラです。ん?違うか?
■過去記事「トンガの生活」より
■過去記事「伊豆シャボテン動物公園」より