A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

鉄道コラム(ヨルダン、サウジアラビア、インドネシア、タイ)

明治5年 (1872年) 10月14日、新橋~横浜間に日本で最初の鉄道が開通したことを受け、毎年10月14日は「鉄道の日」とされているそうです。ということで、ブログ過去記事から鉄道に関するものをピックアップしてみました。

ゴラン高原(ヨルダン)

イルビド県の一番北にあるサハム村は、ヨルダン最北に位置する国境の村です。ヤルムーク川を国境線として、対岸にはイスラエル領ゴラン高原が広がっています。

国境と聞くとどこかものものしい感じがしますが、そこは川の浸食によって数百メートルの渓谷となっており、その素晴らしい眺めから多くの家族連れでにぎわう行楽地となっています。

ただし、常に警備の軍人が目を光らせており、基本的にはイスラエル領の写真撮影は禁止されています。

この時一緒に行った地元出身のヨルダン人が警備の軍人にしばらく話しかけていると、すぐにうち解けたのか、我々を一番眺めの良い場所まで案内してくれたばかりか、写真まで許可してくれました。

川底には線路と鉄橋があって、彼らは「オリエントエクスプレス」だと言っていましたが、もしかしたらアラビアのロレンスたちが爆破した「ヒジャーズ鉄道」かな?

ゴラン高原は、1967年の第3次中東戦争以来イスラエルが占領を続けており、今でもシリアとは領土の帰属をめぐって紛争が続いています。

当時ゴラン高原に住んでいたシリア人 (イスラム教ドルーズ派) 約10万人のうちほとんどは、シリア領内に移住せざるを得ませんでした。

高原南部、つまりヨルダン国境付近は水源があり土地も肥沃なため、逆にイスラエルからは移住者が相次ぎ、多くの村落 (キブツ) が建設されました。

ヨルダン側に警備員がいるように、ヤルムーク川の向こう側の丘、イスラエル領にも軍人が常駐して常にこちらを見張っています。

「お互い睨み合って毎日大変だね」と警備員に声をかけると、彼は複雑そうな表情をしてこんなことを話してくれました。

「実は我々が見張っているのは、イスラエル側からの攻撃ではなく、自国のパレスチナ系住民なんだ。無茶な奴らが越境してイスラエルに攻撃をしかけたら、ヨルダンはもっとひどい目にあうからね」

これを聞いて、ヨルダンの難しい立場をまたも再認識したのでした。

ダンマン鉄道(サウジアラビア)

サウジアラビアの首都リヤドと東部州のダンマンを結ぶ、その名も「ダンマン鉄道」に乗ってきました。昔は治安上の問題から在留邦人は乗るのが禁止されていたので、今回が初乗車です。

選んだ席は1等車よりもさらにゆったりと快適に座れる「リハーブクラス」。小さなカバンを片手に、約5時間かけてダンマンに向かう小旅行の始まりです。

鉄道の旅は独特の雰囲気に満ちています。列車がホームをゆっくりとすべるように発車したときの、わくわくするような、それでいてちょっと切なくなるような気持ちは、何にも代え難い趣があります。

だからこそ、発車のベルは鳴ってほしかった。もうこれでお別れだよと非情に告げる悲しげなベルの音が聞きたかった。日差しがきつくてみんなカーテンを閉じていたので、動き出す瞬間を見逃してしまったじゃないですか。

時折聞こえる 「ファァァン…」 という警笛の音は情緒たっぷりでなかなか良かったのですが、なにしろ外の景色はひたすら土漠が続くばかり。ずっと窓の外を眺めていたら、途中からすっかり飽きてしまいました。

先頭車両にあるリハーブクラスの半分は女性客で、男性は前、女性 (と家族) は後ろという風に分けられていました。本当は2両目以降の1等車と2等車も確認したかったのですが、この女性の群れを通過していくことに気後れしてしまって、結局最後まで自分の席でじっとしていました。

さすがに駅弁までは期待しなくても、何か少しでもダンマン鉄道ならではというものにお目にかかりたかったのですが、特別なものは何もなし。こうしてまったく何のドラマもなく、最後まで淡々と走りきったダンマン鉄道4号でした。

バンドン貸切列車の旅(インドネシア)

会社の仲間と車両を1両貸切って、バンドンまで3時間半、列車の旅を楽しみました。グループでの貸切り専用車両で、内部は座席の代わりにソファーを配置し、まるで応接間のようでした。

ジャカルタのガンビール駅を静かに走り出した列車は快適そのもの。カラオケセット、キッチン、トイレ、専任スタッフ(ジュースや軽食をくれる)など、旅を盛り上げる豪奢なサービスです。廊下もまるでホテル。

しばらく走ると、窓の外には田園風景が。心なしかレールの建付けも悪くなってきました。ガタンゴトンと思いの外ゆれる車両に、ノスタルジアを感じずにはいられません。

バンドン駅到着。列車の旅はいいですね。のんびりリラックスできました。

バンコクから鉄道小旅行(タイ)

タイで初めて鉄道を使った小旅行をしました。目的地はワット・コンカーラーム (⇒コチラ)。バンコク中心部から西に約90km、そこはもう隣県ラチャブリーです。

往路は多少ショートカットのつもりでMRTバンスー駅まで行き、隣 (別路線) のバンスージャンクション駅から乗りました。

f:id:ishigaki10:20210503222539j:plain乗車率ほぼ100%でしたがなんとか座れたし座席も悪くなく、窓全開で生ぬるい風に吹かれるのは気持ちよかったです。

クロンタコット駅降車にしたのは、目的地のお寺までまだ少し近かったから (クロンタコット→お寺:2.2km、ひとつ先のポタラム駅→お寺2.8km)。たぶん歩くしかないだろうなと思っていたら、案の定バスもタクシーも走っていませんでした。

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クロンタコット駅周辺にはあまりにも何もなかったので、お寺を見終わった後はポタラム駅まで歩きました。ポタラムは小さいけれど町なので、食堂もカフェもあります。食事や休憩なら駅を中心に半径200mくらいで事足ります。

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この日は土曜日、帰りの電車は乗車率3割ほどでした。たぶん日曜日はもっと混んでいるのかな。ガタンゴトンと揺られながら窓の外に目をやって、だんだんと日が暮れていく様をぼんやり眺めていたら、なんとも言えぬ郷愁にかられました。鉄道旅っていいものですね。

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