今まで何千、何万食とご飯を食べてきた中で、果たして最も美味しい料理はなんだったのか、そう思いを巡らせてみるものの、これがなかなか難しい。そもそも同じ料理だって、その時の体調や空腹度、またどんな状況でいただいたかによって、味は変わってきます。
あれこれ悩みつつ、まずはこれまで滞在してきた各国で記憶に残っている味を、つらつらと思い出しつつ書いてみようかなと。でも、昔のことだと記憶が美化されているだけかもしれないので少し不安も。昔は食事の写真も撮っていないし。
過去記事「世界の料理レシピ」に各国を代表する料理があげられていますが、もちろんそれらはどれも美味しいです。ただ、今回の趣旨としては「サウジアラビアの羊のカブサ」ではなく、「サウジアラビアの○○でいつこんな状況で食べたカブサが最も美味しかった」というところまで絞り込みたいわけです。
カタール
人生初の海外赴任、というか社会人1年目がカタールでした (渡航時まだ二十歳前)。赴任当初に泊まったインド系ホテルのカレー料理の数々が、ほんの数日前まで日本で食べていたカレーライスとはまったく異なるテイストだったのが衝撃的でした。あのスパイスの香りは今も鮮明に覚えています。かといって、当時めちゃめちゃ美味しいと思ったかと言われたら、そこはなんとも。写真はホテルの部屋から望む首都ドーハの町並み。当時はまだ空き地の多い小さな町でした。
シェラトンホテルの週末ビュッフェなどでアラブ料理はよく食べましたが、その時は「カタール料理」という意識はありませんでした。中東ならどの国でも食べられる一般的なアラブ料理です。味もとくに「カタールのこれ」という強い印象はないので、ちょっと他の料理を考えてみます。
一番よく食べた外食はインドカレーでした。カタールはマンパワーの9割方を出稼ぎ労働者が占めていて、町に出てもカタール人よりインド人、イラン人、フィリピン人の方がよく見ましたし、レストラン (大衆食堂) もインドカレー屋がたくさんありました。
とはいうものの、やはりこのお店のこれ、というものがないんですよね。記憶が薄れたのもありますが。カタールは外食よりむしろ、自分で浜からとってきたアサリをワイン蒸しにしたり、魚市場で買ってきたハムール (クエ) やセミエビでお刺身を作ったりという方が、味的には絶対に美味しかったです。
と、ここまで書いておいて、実を言うと当時はまだ若かったこともあって、本当はハンバーガーの方が美味しいなと思っていたフシがあります。ハーディーズのマッシュルームバーガー (Mashroom & Swiss) は一度食べたら大好きになって、それから毎週のように食べていました。(下のスクショは現在のもの)
当時はまだイスラエルボイコットがあって、ユダヤ資本のマクドナルドやコカコーラはカタールを含むアラビア半島の国々には入っていませんでした。なので、ハンバーガーと言えばハーディーズ、そして飲み物はペプシコーラでした。
ちなみに、ドーハ空港の売店で売っていたケチャップたっぷりの安いハンバーガーも好きでした。仕事柄空港にはよく行っていて、出張者が到着するまで時間つぶしに食べていた、思い出の味です。
でもこんなハンバーガーを「カタールで一番美味しかった」なんて言ったら舌のレベルの低さに呆れられてしまうので、まあちょっとこれも違うなと。間違いなく自身の青春の味なんですけどね。
あとは、カタールで初めて30日間の断食 (ラマダン月に日の出から日没まで飲食を絶つこと) をしましたが、日没直後にまず飲んだ、甘酸っぱいタマリンドジュースは本当に美味しかったです。五臓六腑に染み渡りました。でも、普段これを単体で飲んだとしても、当然そんなに感動するわけもなく。
うーん、結局カタールからのエントリーは無しかなあ。。。
サウジアラビア
最初のリヤド赴任では何を食べても新鮮で美味しくて、いろんなレストランの料理を覚えています。パッと思いつくだけでも:
①チキンシャワルマ@ヤマールアッシャーム (下の写真)
②ブハーリーライス@自宅近くの店
③ラムチョップ@アッサラヤ (トルコ料理)
④羊のカブサ&マンディー@サウジ人同僚の家 (出前)
⑤羊の脚のスープ@シャアビーヤレストラン
⑥アラビックコーヒーとデーツ@サウジ航空ファーストクラス
⑦素焼きの鉢入りヨーグルト@スーパー
⑧白身魚の刺し身丼@アルコザマセンター横の韓国料理屋
⑨7リヤルのターリー@マラズレストラン
⑩フレンチのコース料理@シェラトンホテル
サウジ人に連れられ土漠に獲りに行ったトカゲ (ダッブ=トゲオアガマ) で作った料理 (トカゲ肉の煮込み) も、素晴らしく美味しかったです (⇒コチラ)。その美味しさとレア度から、「最も美味しい料理」のサウジアラビア代表にふさわしいと思ったりもしますが、さすがにレアすぎるかなと。また、その後小さいダッブを数年間ペットで飼うことになってすっかり愛着が湧いてしまったため、今またダッブを食べろと言われても無理です。なのでエントリーは無し。
11年ぶりのリヤド再赴任でも、あいかわらず美味しいと思ったものはいくつもあります。もちろん潰れてしまったお店、まったく味が変わってしまったお店もありました。
■ブハーリーライス
■ヨーグルト
■ラムチョップ@アッサラヤ
■ターリー@マラズレストラン
上の4つはとくに好きでよく食べていました。でもこれらは「安くて美味しい料理」なんですよね。ヨーグルトは「感動レベル」と言っていいかもしれませんが、それにしたって「料理」というわけではないし。うーん、難しい。
カブサとマンディーはお店のチョイスが増えてどこも美味しかったですが、その分「ここが一番」とは決められない感じ。アラブ料理全般、後年に行ったヨルダンがほぼすべてにおいてサウジを上回っているのも悩ましいところ。
リヤドはお洒落な洋食屋も増えていて、イタリアンやステーキなどずいぶん美味しいものが食べられるようになりました。高めのインド料理屋もあったし、日本食屋も、庶民価格のタイ料理やフィリピン料理屋も何軒かできていて、外食はまったく困りませんでした。もちろん中華料理屋もありましたが、宗教的にお酒と豚肉が使えないこともあって、やはりどこか味はイマイチでした。
リヤドは美味しいものがたくさんありすぎて、逆に舌の感覚が麻痺していたように思います。飢餓感がないというか。贅沢なことを言っていますが、「何かこの一品」という、ピンポイントで強烈に記憶に残っているものがあるかというと、うーん。。よりいっそう殺伐とした町の雰囲気も相まって、最初の赴任時にくらべたらあまり食べ物で感動した記憶はありません、悲しいことに。
サウジアラビア最後の夜は、特別いいレストランに行くこともなく、シャワルマとアラーイスのテイクアウトで済ませました (一応お店はこだわって2軒ベストなところをまわりましたが)。もちろん十分美味しかったですが、なんだか最後までわびしかったです、二度目のサウジアラビアは。
サウジアラビアで食べたものの詳細はコチラ↓の過去記事で。まああまり驚くようなものは食べていないんですけどね。
⇒サウジアラビアのグルメ:サウジ料理
⇒サウジアラビアのグルメ:アラブ料理
⇒サウジアラビアのグルメ:洋食・和食・中華料理
エジプト
コシャリとかギブナアディーム (オールドチーズ) とかいろいろ強烈な料理はありましたが、ほとんどすべてにおいて美味しくはなかったです。エーシュという主食のパンからして、びっくりするほど美味しくなかったし。エーシュは美味しくない上に道端で売っているので、排気ガスと砂埃にまみれていました。1枚1円のパンに文句を言っても仕方ありませんが。
フールやホンモス、ババガンヌーシュなど前菜的なものならある程度美味しく食べられましたが、サウジやカタールを上回っていることはなかったです。カイロは埃っぽい (砂っぽい) ので、料理を食べると口の中でジャリジャリするのも不快でした。とくに外で調理するシャワルマは、砂混入率が高かったです。モロヘイヤスープもほぼ砂が入っていた印象。
エジプト料理にしてはマシというものなら、ゲジラシェラトンの「カバブギー」というレストランで食べた鳩のグリル、これだけは胸を張って美味しかったと言えます。カバブギーはパン (ホブズ) も抜群に美味しかったです。焼きたてのモチモチ感とほんのりした甘さは、エーシュとくらべたらもう別世界の美味しさでした。
店名を忘れてしまったのですが、そのチェーン店のローストチキン (鶏の丸焼き) はいつも火の通り方が生ギリギリで、最高にジューシーで美味しかったです。まあまあおっかなびっくり食べていましたが。
コシャリもエジプト以外で食べるとけっこう美味しいんですけどね、不思議なことに。まあでも、もともとがそれほど美味しいわけでもないので。写真はサウジで食べたコシャリ。
エジプトはまあこんなもんですかね。3年いましたが、料理には思い入れなしです。エジプトはもっと別にいいところがいっぱいありますから、料理に美味しさは求めない方がいいと思います。エジプトで少しでも美味しいものが食べたいなら、家庭料理をいただいた方がいいかもしれません。
⇒過去記事:エジプトのグルメ
ヨルダン
レバノン、シリアと合わせ、ヨルダンはアラブ料理のまさに本場と言えます。アラビア半島でもいわゆるアラブ料理はいくらでも食べられますが、ヨルダンはひとつひとつのクオリティー (美味しさ) が違いました。北アラブは気候も穏やかで穀倉地帯があり、歴史的にギリシャやローマの影響もあったためか、何を食べてもどこか洗練されていたように思います。
例えばメッゼ (前菜) でも、サウジアラビアの一般的なレストランでは見ないものがたくさん出てきました。中でも羊の脳みそのフライはとても美味しかったです (写真手前のフライ)。
生肉 (+レバーと脂身) の盛り合わせがあったのも衝撃的でした。クッベ (香辛料を混ぜたひき肉を紡錘形に揚げたメンチカツのようなもの) を生肉のまま食べるクッベナイエも。どれも新鮮で甘みがありとても美味しかったです。
シャワルマ用のチキンの大きさもどうですか、すごいですよね、これが一日で売れてしまうわけです。ただし、シャワルマならサウジアラビアの方が個人的には好きでした。ヨルダンのものは最後にパンに焼きを入れるので、少し油っこいかなと。でも、サウジで一番好きだったヤマール・アッシャームのシャワルマは、もう別物になってしまったんですよね。悲しい。
そしてなんといってもヨルダンを代表する料理、マンサフです。アラビア半島のカブサと似たようなものですが、マンサフはジャミードというヨーグルトソースをかけて食べるのが特徴。このソースがちょっとチーズ臭、発酵臭がしてややクセありなので、日本人は好き嫌いが分かれるところですが、自分はたっぷりかけて食べた方が美味しいと思います。日本人でも安心して食べられるのがサウジのカブサ (あるいはマンディー)、さらに一歩高みにいるのがマンサフ、というのが個人的見解です。
ヨルダンは見た目には普通のミックスグリルも、味付けと焼き加減が上手でさりげなく美味しかったし、羊のすね肉のつぼ焼き (蒸し焼き) とか初めて食べたものもあったし、「最も美味しかった料理」にアラブ料理からエントリーするなら、やはりヨルダンのどれかになるかなと思います。問題は、全体的にどこで食べても美味しかったので、「とくにここのアレ」と決め打ちできるかどうか。
最後に、ラクダのコブ。脂の塊なので、BBQでカリカリに焼いて食べると美味しいです。もちろんヨルダンで初めていただきました。まあでもこれは珍味の部類ですね。
⇒過去記事:ヨルダンのグルメ
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とりあえずアラブで食べた美味しい料理をまとめてみました。次はエチオピア、大洋州、そしてインドネシアとタイへ。海外旅行中に食べたものもまとめようかな。あと日本で食べたものも。最終的にはすべての中から個人的に最も美味しい料理を決めたいわけですが、たぶん無理なので、せめてベスト5かベスト10くらいには絞りたいなと。