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タイとサウジアラビアの外交関係

今週、タイのプラユット首相がサウジアラビアを訪問します。実は両国、30年以上前のある事件をきっかけに、ずっと外交関係が冷え込んでいました。以下、過去記事の再録ですが、自分がサウジアラビアにいた時 (2008年) に書いたもので、当時のローカル紙の情報をもとにしています。今回、この事件が未だに解決していなかったことを知り驚きました。

サウジアラビアとタイの外交関係

今から18年前、タイで4人のサウジアラビア人外交官が殺害されました。同時期、サウジアラビアのあるロイヤルファミリーから、タイ人の使用人が2000万ドル相当の宝石を盗み秘かにタイに郵送するという事件もありました。このふたつの事件は裏でつながっているとされながらも、未だに解決を見ていません。

盗まれた宝石の中には、「値段がつけられない (Priceless)」と言われる50カラットのブルーダイヤモンドも含まれています。宝石を盗んだ使用人はほどなくタイで警察に逮捕されたのですが、その時押収された宝石がファイサル王子のもとに送り返された時、ブルーダイヤモンドを含め、ほとんどが模造品に変えられていたと言います。

それ以来、サウジアラビア政府はタイ人労働者の入国を禁止し、また自国人のタイ渡航も禁止しました (現在はビジネス渡航なら許可されるとのこと)。この措置によりタイが被った経済的損失は莫大なものがあります。タイ政府はサウジアラビアとの関係改善を図るべく、様々なアプローチを試みましたが、事件が解決しない限り、関係が元通りになることはありえないようです。

タイの法務大臣は今月はじめ、あらためてこの事件の真相を究明するため、最重要人物として14年間刑務所に拘留されている元警察高官のもとを訪ねました。タイ特別捜査局 (DSI) の副長官であったチャロー氏は、ファイサル王子のもとから盗まれた宝石を闇で処分した疑いを持たれていた宝石商の妻を殺害した罪で、終身刑を言い渡されていました。

昨年夏のニュースですが、政府によるタイへの渡航禁止措置が、最近は旅行代理店や旅行者にほとんど知られていないというケースがリポートされていました。サウジアラビア人には、渡航が禁止されている国がいくつかあります。イスラエル、イラク、ボスニア、そしてタイです。

これらの国の大使館や、飛行機の直行便は当然ありませんが、タイであればカタールかドバイを経由すれば容易に渡航できます (ビザも簡単に取得できる)。タイ政府観光局によれば、2006年は9000人のサウジアラビア人旅行者がタイに入国したそうです。

知らずにタイに渡航したサウジアラビア人は、帰国した時に空港の入国審査でタイ渡航記録を発見されると、そこでお咎めを受けることになります。まずはなぜタイに渡航したのかを詰問され、状況によって6ヶ月から3年の出国禁止処分と、約15万円の罰金を科されます。

しかしある航空代理店によれば、その店の客 (サウジアラビア人) のうち80%はアジア地域に旅行し、そのうち20%がタイに行ったとのことですから、政府の規制が周知されていない事が明るみに出てしまいました。パスポートにも渡航禁止国については記されていないそうです。

タイに旅行したサウジアラビア人たちは、皆口々にタイがいかに美しい国であるか、治安が良いか、物価が安いかを語ります。サウジアラビア人にとって、タイがひとつの理想の旅行先であることは間違いありません。

外交官殺害とプリンスの宝石盗難事件。事件の早期決着と、両国の関係修復が進むことを切に望みます。自分もまたタイエアーに乗りたいし。(サウジ初赴任はタイエアーで、すごく良かったです。事件後はタイエアーのサウジ乗り入れが禁止されました)

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※宝石盗難事件は「ブルーダイヤモンド事件」としてWikipediaに記載がありました ⇒コチラ

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